今回のテーマは「プレイフルネス」。こちらは「(単なる気晴らしや子供っぽさとは一線を画し、)日常の状況を面白く、知的に刺激的、あるいは個人的に興味深いものとして捉え直す能力」として定義されるもので、「遊び心」とも近い概念っすね。
「遊び心」というと、どうも「不真面目」とか「子供っぽい」みたいな、ちょっとネガティブな文脈で使われがち。しかし、ここ数年の心理学の世界では、このプレイフルネスこそが、ストレスフルな現代を生き抜くための最強の武器なんじゃないか?って見方がめちゃくちゃ熱かったりします。実際、私自身もここ数年、意識的に伸ばそうとアレコレ試してる心理特性だったりしますね。
とはいえ、「遊び心なんて生まれつきの性格でしょ? 今さら変えられないよ」って声が聞こえてきそうですが、最近の研究をみていると、プレイフルネスは(筋トレのように)後から鍛えられる!ってことが、RCTで実証されてたりするので、あきらめる必要は全くないよなーと思ってたりします。
じゃあ、その「プレイフルネス」を鍛えると、具体的にどんないいことがあるのか? 膨大な報告の中からいくつかリストアップしてみると、
って感じ。要するに、プレイフルネスを鍛えることでメンタル、仕事、人間関係、健康と、人生のあらゆる側面でポジティブな影響が期待できるってことっすね。
ってことで、以下では私が実践している方法を中心に、このプレイフルネスを具体的にどうやって高めていくのか?というトレーニング方法を3つほど共有できればと思います。
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最初に紹介するのは、ポジティブ心理学の定番エクササイズ「3つの良いこと」の応用版で、めちゃくちゃシンプルかつ効果的な「3つのプレイフルなこと(Three Playful Things)」というトレーニングです。
これはマルティン・ルター大学ハレ・ヴィッテンベルク校が2020年に発表した研究で検証された方法でして、RCTで効果が確認されております。533人の参加者を対象にしたオンライン研究で、この介入をたった1週間続けるだけで、参加者のプレイフルネスが高まり、幸福感が増して、さらには抑うつ症状まで軽くなったんだそうです。
具体的な方法は以下の通り。
ステップ1:寝る前の10分を確保し、日記帳を用意する
まずは、寝る前に10分だけ、誰にも邪魔されない時間と場所を確保してください。スマホの電源はオフにするか、通知が来ないように設定。そして、専用のノートとペンを用意します。デジタルでもいいんですが、個人的には手で書くほうが、脳に刻まれる感じがしておすすめですね。
ステップ2:「今日の遊び心」を3つ探す
準備ができたら、今日一日を振り返って、「プレイフルだったな」と感じた瞬間を3つ、思い出してみてください。
ここで大事なのは、ハードルをめちゃくちゃ下げること。最初は「そんな遊び心あふれる一日なんて送ってねーよ!」って思うのが普通でしょう(私もそうです)。しかし、プレイフルネスってのは、壮大な冒険や爆笑エピソードのことだけを指すわけではないのがポイント。日常のささいな瞬間に潜んでるもんなんですよね。
例えば、こんなんでも全然OKです。
こんな感じで、 「面白い」「楽しい」「ちょっと変」と感じた瞬間なら、なんでもアリなので、とにかく3つ思い出してみてください。
ステップ3:何が起きて、どう感じたかを書き出す
3つのプレイフルなことを見つけたら、それをノートに書き出します。このとき、以下の3つの要素を入れるのがポイントです。
例えば、私の最近の日記から引用すると、こんな感じです。
今日のプレイフルなこと
出来事: オンライン会議で、上司の画面に飼い猫が乱入してきて、めっちゃ変なポーズで固まってた。
誰と: チームメンバー全員と。
感情: 緊張感が一気にほぐれて、おかしくて笑いが止まらなかった。一体感が出た感じ。
出来事: 帰宅途中、公園のブランコに誰もいなかったので、スーツ姿のまま3分だけ全力で漕いでみた
誰と: 自分一人で
感情: ちょっと恥ずかしかったけど、子供に戻ったみたいで最高にスッキリした。解放感!
出来事: 夕飯のカレーに、ニンジンを星形に切って入れてみた。
誰と: 一人で
感情: 誰も気づかない自己満足だけど、なんだか一手間かけた自分を褒めたくなった。ささやかな達成感。
ステップ4:軽く味わって、眠りにつく
書き終わったら、それを読み返して、そのときのポジティブな感情をもう一度、軽く味わってみてください。深く分析する必要はまったくなし。「あー、こんな面白いことあったな」とニヤニヤしながら、良い気分で眠りにつくだけでOKです。
このトレーニングのミソは、注意を向ける先を変えることにあります。私たちの脳は、デフォルトだとネガティブなことや心配事に注意が向きやすいようにできています。しかし、この日記を続けると、「プレイフルな瞬間」を意識的に探すクセがつくんですよね。いわば、脳内に「遊び心アンテナ」を立てるような思考ができるようになるわけっすね。
アンテナの感度が上がってくると、今まで見過ごしていた日常の面白い側面が、どんどん目につくようになります。その結果、自然と物事をポジティブに捉え直したり、創造的な解決策を思いついたりする頻度が上がっていくはずであります。
実際の研究でも、この介入は特に「他者志向のプレイフルネス(他人とふざけ合うのが好き)」や「気まぐれなプレイフルネス(変わったことや普通じゃないことを好む)」を高める効果が見られたそうです。要するに、日常のささいな「面白いこと」に気づく力と、それを誰かと共有したり、一人で楽しんだりする力が伸びるってことっすね。
そんなに手間じゃない割に効果は結構大きいのでぜひトライしてみてください。
続いては、「新しいやり方で遊び心を使う」という方法。実証研究では、この方法を実践することによってプレイフルネスの4つの側面(他者志向、気楽、知的、気まぐれ)のすべてを引き上げる効果が確認されていて、特に「人生を深刻に捉えず、楽観的に物事を見る」傾向を示す「気楽なプレイフルネス(Lighthearted playfulness)」が大きく向上することが報告されています。
このトレーニングの核心は、一言でいえば「コンフォートゾーンを抜け出す」こと。いつもなら真面目な顔でやり過ごす場面、例えば「職場の会議」や「役所の手続き」のような、いわば“アウェイ”な状況で、あえて意識的に、ほんの少しだけ遊び心を注入してみる。そして、その体験を振り返る、って感じですね。
「そんなことしたら白い目で見られるだけでしょ…」と不安になる気持ちはよくわかりますが、目的はウケを狙ったり、場の空気をぶち壊したりすることにあらず。あくまで、自分の中にある「この場面ではこう振る舞うべき」という凝り固まったルールを、自分で少しだけハックしてあげるのが目的ってことを抑えておくことがかんようっすね。
具体的なやり方はこんな感じです。
ステップ1:あなたの「プレイフルネス・アウェイ」を特定する
まず、自分がどんな場面で「真面目モード」のスイッチが入っているかを考えてみてください。「ここでは、ふざけちゃいけない」「ちゃんとしなきゃ」と思っている場所や状況のことです。
いくつか書き出してみて、その中から「ここなら、ちょっとくらい試せそうかな」と思える、比較的リスクの低い場面を一つ選んでください。
ステップ2:「小さな遊び」を計画する
次に、その「アウェイ」な場面で実行する「小さな遊び」を具体的に計画します。ポイントは、大胆不敵じゃなく、小心翼々でOKということ。誰にも気づかれないレベルの、自分だけの密かなゲームで十分です。
大事なのは、いつもの自分なら絶対にやらない、ほんの少しの「ズレ」を作ることです。
ステップ3:実践と記録
計画した「小さな遊び」を、実際に試してみます。成功しても失敗しても、ウケてもスベっても、まったく問題ありません。重要なのは、やってみたという事実そのものです。
そして、その日の夜に、ステップ1の「3つのプレイフルなこと」日記と同じように、この体験を書き留めます。
例えば、こんな感じです。
今日の「新しい遊び心」チャレンジ
場面: 部長への進捗報告メール
やったこと: いつもは「何卒よろしくお願い申し上げます。」で締めるところを、「金曜まであと少し、頑張りましょう!」という一文を添えてみた
反応: 部長から「👍」だけの返信が来た。特に怒られてはいない…はず。
感情: 送信ボタンを押す瞬間は心臓がバクバクしたけど、返信を見てホッとした。ほんの少しだけ、部長との距離が縮まったような気がして、ちょっと嬉しい。
一応、なぜこれが効くのか?という点も考えてみましょう。このトレーニングは、私たちの脳に「この状況=この振る舞い」という一本道を、「こっちの道もあるじゃん」と脇道を示してあげる作業に似ています。いつも同じ反応しかしていないと、その神経回路はどんどん太く、強固になっていく。しかし、あえて違う行動をとることで、脳に新しい回路が生まれ、思考や行動の柔軟性が高まるんですな。
要するに、普段マジメぶってる場所でこそ、あえてちょっとだけ遊んでみることで、プレイフルネスの「適用範囲」がグンと広がるということ。
正直、「新しいやり方で遊び心を使う」チャレンジは、多少なりとも勇気が必要(いまだに私も緊張する)です。しかし、その分、効果が大きいのも確かなので、まずは週に一回、自分だけの「アウェイゲーム」に挑戦してみてはいかがでしょうかー。
3つ目として、「即興劇(インプロ)思考」という方法も個人的に結構気に入って使っていたりします。
この方法の効果は、ニューメキシコ大学が、精神科の研修医を対象に行った研究で示されていたりします。参加者は6週間の即興劇トレーニングを実施したところ、バーンアウトのレベルが下がり、自己批判が減って、予測不能な事態への耐性が高まったっていう結果が出たんですな。失敗が許されない、常に完璧を求められるような環境にいる人たちであっても、この「即興力」がメンタルを守る盾になる、と。
この研究の面白いところは、参加者が「失敗してもいいし、分からなくてもいいんだ」と感じられた、と報告している点。これは、我々が失いがちなプレイフルネスの核だったりするんでしょうな。
というわけで、この即興劇の原則を、(若干私のアレンジも入ってますが、)3つのドリルに落とし込んでみるとこんな感じになります。
ドリル1:「イエス、アンド…」思考法
即興劇には、「イエス、アンド(Yes, and...)」という黄金律があります。これは、相手がどんな突拍子もないセリフを言っても、まずは「イエス」とそれを受け入れ、その上で「アンド(そして)」と自分のアイデアを付け加える、というルール。
例えば、相手が「見て、空にブタが飛んでる!」と言ったら、「いや、そんなわけないだろ」と否定する代わりに、「イエス! 本当だ、飛んでる! アンド、あのブタ、よく見たらサングラスかけてない?」みたいに、相手の世界観に乗っかって、さらに物語を発展させるわけです。
実際にやってみると、いかに私たちが日常生活において「ノー、バット(No, but...)」思考に支配されてるかが分かります。乗っかる対象が発現でなかったとしても、
このような抵抗と否定の姿勢が、ストレスを生み、思考を停止させる元凶だったりします。そこで、この口ぐせを「イエス、アンド」に強制的に変える練習が有効、ってわけですね。
これは別に無理やりポジティブになれって話じゃないのは勘違いのないようにしていただければと。現実への無駄な抵抗をやめ、状況を「対処すべき問題」から「自分が創造性を発揮できる舞台」へと捉え直すための、認知の筋トレ、みたいなイメージっすね。
ドリル2:「栄光ある失敗」の計画
即興劇では、失敗は「ギフト」と呼ばれます。これは、セリフを忘れたり、変なことを言っちゃったりすると、それが逆に面白い展開を生むキッカケになるからなんだとか。逆に言えば、失敗を恐れる心こそが、私たちの創造性と遊び心を殺している、と。
そこで、あえて「小さな失敗」を自分に許し、失敗への恐怖心を克服するトレーニングが有効だったりします。
このドリルの目的は、完璧主義の呪いを解くこと。研究で研修医たちの自己批判が減ったように、小さな失敗を自分でコントロールできるようになると、「失敗=自己価値の終わり」という思い込みが少しずつ剥がれていきます。
ドリル3:60秒モノローグ
即興劇では、与えられたお題に対して即興で語る「モノローグ」の練習をします。これは、頭に浮かんだことを検閲せずに言葉にする、瞬発力と創造性を鍛えるトレーニングです。
これは、自分の思考をジャッジせずに垂れ流す練習。これを続けると、会議での発言や、とっさの雑談で言葉に詰まることが減り、自分の内なる創造性への信頼感が高まります。
以上、これらのトレーニングは、単なる遊びに見えるかもしれませんが、そのすべてが「予測不能な現実を受け入れ、創造的に対応する」という、プレイフルネスの核心を鍛えるためにデザインされています。
考えてみれば、人生なんてのは、筋書きのない壮大な即興劇のようなもの。ならば私たちは、もっと肩の力を抜いて、ハプニングを楽しみ、セリフを間違える自分を笑い飛ばす、そんな「プレイヤー」になるべきなんじゃないか?私自身も、まだまだ修行中の身ではありますが、そんな感じで思っております。
以上、今回はプレイフルネスを鍛えるための具体的なトレーニングを3つほど紹介してきました。
正直、どれもこれも、日々の忙しさの中では「くだらない」とか「面倒くさい」と感じてしまうかもしれません。
しかし、今回紹介した一連のトレーニングの根底にあるのは、別に「面白い人間になろうぜ!」みたいな高尚な話じゃないんですよね。むしろ、どうしようもなく真面目で、融通が利かなくて、失敗を恐れがちな我々の脳みそを、ほんの少しだけハックして、もっと楽に、しなやかに生きるための「生存戦略」みたいなものだと、私は考えています。
完璧な人間なんてどこにもいないし、人生は思い通りにいかないことの連続です。だからこそ、その不完全さや予測不能さを、眉間にシワを寄せて耐えるんじゃなくて、ニヤリと笑って乗りこなす。そんな「遊び」の感覚が、これからの時代、めちゃくちゃ大事になってくるんじゃないかなー、なんてことを思ったりしております。
まずは一番とっつきやすそうなものから、試してみてください。あなたの毎日が、昨日よりほんの少しだけ、面白くなることを願っております!
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