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【恋愛の科学】最新研究からのインサイト10選|2024年3月版
「答えはない」と言われる「恋愛」でもその傾向は全くの「ランダム」に非ず。マッチングアプリの台頭、恋愛に反応する脳、結婚離婚とメンタル、乙女ゲー、結婚と収入、、、時代とともに変遷する「恋愛」を科学の視点から紐解いてみた。
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おくさん
2024/03/26

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本ニュースレターにご興味をもっていただきありがとうございます!このニュースレターでは、中国清華大学大学院に留学中でありサイエンスライターなどをこなす筆者が、科学的知見をベースにあなたの人生の道しるべを提案します。


最近では「検索エンジン、AIの発達で各人が欲する情報に容易にたどり着けるようになった!」などと言われますが、実際にはテキストの複雑さが低い、つまり平易な文章ばかりが表示されるし、プロンプトによらず結局最小公倍数的な情報が提供されるようになってるしでニッチで深い情報にたどり着くための道のりはむしろ長くなってしまっているのが現状だったりします。

もちろんAIはなんでも知っているけれど、それと同時に大多数の人がニッチで深い情報には興味を示さないことも知っています。だからAIはあえてニッチ情報を提供せず、結局情報の濁流の中で「より信頼でき、本当に価値ある情報」にたどり着くのは一層困難になっているというわけ。そこで本ニュースレターは検索エンジン、AIからは辿り着けない「ニッチ」をニッチなあなたに毎週お届けします。もちろん万人に受ける内容だとは思っていませんが、あなたの人生を彩る参考としてご活用いただければ幸いです。少しでもご興味があればぜひ購読してください(無料です)。


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ということで、今回は「恋愛」について。いつものようなテーマエントリではなく、「恋愛」分野の最新研究をダダーっと紹介していきます。

本文を読んでいただけばお気づきになるかとは思いますが、今回はAI(Claude3)と協同で執筆しました。普段からAIを用いた論文のリサーチ、まとめ等は行っていますが、プロンプトの改善も重ねて最近かなりいい感じでアウトプット(論文紹介)もできるようになってきましたので。

AIを使えばそれぞれの論文について長々と説明することもそこまで苦ではなくなりますけど、それでは論文を直接読んだ方が良いのでは?って話にもなっちゃいますんで、なるべく要点を抽出して短くまとめました。今回は個人的に「これは面白いなー」「使えそうだなー」と感じた露文を10本ほどまとめましたので、当分野のフロントラインをチェックしつつ、あなたの生活にも何かヒントになる情報を見つけていただければ幸いです。当然すべてファクトチェックは行っております。

目次

  1. オンラインで出会いを探す人
  2. Tinderは本当に"ナンパアプリ"なのか?
  3. マッチングアプリ×AI
  4. 恋愛と報酬システム
  5. 性格は夫婦関係の満足度
  6. 離婚、死別のショックから立ち直る速度
  7. 乙女ゲーにハマる人
  8. 学生の恋愛が友人関係に与える影響
  9. スマホ依存の新常識?「ファビング」をする人としない人の違い
  10. 結婚は男性の収入にどう影響する?


1. オンラインで出会いを探す人

オンラインデートに関する新しい研究が、カナダのトレント大学から出ておりました。ここでは結論から申し上げますと、

  • オンラインのデートサービスを利用する人は、一般的にオフラインのデートを選ぶ人よりもネガティブに評価されがち
  • しかし、オンライン・デートを利用したことがある人は、利用経験のない人に比べてオンライン・デートを利用する人をよりポジティブに捉える

という内容になります。利用経験によってユーザーへの印象が真逆に変わる可能性があるってわけですね。

これは214人の参加者を対象にした調査で、どんな調査だったかをざっくり説明すると、参加者にはさまざまなデート方法における「平均的なユーザー」を想像してもらい、その人物に対する印象を評価するアンケートに答えてもらったとのこと。「さまざまなデート方法」ってのは、オンライン・デート関連で3種類(アプリ、ウェブ、SNS)、オフライン・デートで5種類(バー、仕事、宗教、友人の紹介、偶然の出会い)の計8パターンあったそう。それぞれの出会いのタイプについて、ポジティブな要素(好ましい、魅力的、スマート、好感が持てる、ロマンチック、クール)からネガティブな要素(奇妙、疑わしい、恥ずべき、絶望的)まで11種類の属性で評価してもらい、同時に、個人的に利用したことのあるデート方法についても教えてもらったらしい。

調査の結果、全体としてはオフラインよりもオンラインの方がネガティブに見られる傾向にあったそう。具体的には「オンライン・データーは奇妙で疑わしく、恥ずべき存在」といった評価をされる傾向が確認されたみたい。一方で、オンライン・デートを利用した経験者はそうでない人よりも、オンライン・データーに対してそこまでネガティブな印象を抱かず、むしろ「好ましい」「魅力的」などといったポジティブな評価をする傾向も確認されたとか。

まあこの結果は直感的にも納得しやすい点かもしれませんが、「オンライン・データー」へのネガティブなイメージは、過去の調査でも指摘されてきていたところで、利用者を「デートする能力がない人」「道徳性に問題がある人」と見なすスティグマがあるってのはまだまだ残ってるみたいですな。しかし、こうした認識は経験者と非経験者で大きく異なるってんで、今後は利用した経験がある人の割合がさらに変化することでこの偏見は徐々に解消されていく可能性は高そうですね。


2. Tinderは本当に"ナンパアプリ"なのか?

お次もマッチングアプリ関連のデータ。こちらはオーストラリアのマードック大学から出ていた、Tinderにフォーカスした研究で、主な結果から申し上げますと、

  • Tinderユーザーはノンユーザーに比べ、カジュアルなセックスにオープンな一方でコミットした交際も行っている

という内容になります。つまり、Tinderは単なる"ナンパアプリ"ではなく、様々な恋愛目的に役立つことが示唆されたってわけですね。まあTinderは「サービス開始から10年で6000万人のユーザーを抱え、毎週150万人ものデートをアシストしている」ってデータを見れば、単なる「ナンパアプリ」ではないんだろうなーってのは想像に難くないですが、それが実際にデータで示されたってとこですね。

こちらは18-29歳の未婚女性249人を対象にした研究で、参加者にTinderの利用状況、一般的な恋愛経験、性や恋愛に対する考え方を尋ね、さまざまな質問票に回答してもらったそう。その結果、Tinderユーザーはノンユーザーと比較して、

  • セフレとの交際経験が多い
  • コミットした恋愛関係の経験も多い
  • 性的な基準があまり厳しくない
  • カジュアルセックスに対して寛容な態度を示しがち
  • "ソウルメイト"の存在を信じない傾向があった(「運命」で導かれる自分だけの特別なパートナーがいる、みたいな記述に同意しない確率が高かった)

などの特徴が見られたとのこと。研究者曰く「Tinderを利用する女性は、カジュアルセックスにも関与しているが、同時にコミットした交際も行っている。ステレオタイプ的な"ナンパアプリ"という認識とは違って、実際はさまざまな恋愛目的に使われているようだ」とのこと。Tinderはカジュアルな関係性だけでなく、真剣な交際に発展する確率も十分あるよーってことですな。

ただし、この研究にはいくつか限界もあって、サンプルが若年層の異性愛者女性に偏っており一般化が難しいこと、因果関係が不明瞭で「Tinderの利用が性的解放につながるのか、それとも性的には解放的な人がTinderを使うのか」という点が曖昧、Tinderユーザーがカジュアルセックスを求めているのかそれとも単に文化的圧力に合わせているだけかはっきりしない、といった点には注意が必要でしょう。今後も議論が必要な点は多々あるものの、単に"ナンパアプリ"と決めつけるのは的確ではない、むしろ、新しい恋愛の在り方が芽生えつつあるって感じで捉えた方が適切っぽいですよーってことで。


3. マッチングアプリ×AI

マッチングアプリといえば、ユーザーによるAI利用も一般的になってきているって話を耳にしたことがある人もいるでしょう。マッチングさせるシステム自体ではなく、ユーザーがプロフィールを作成したりチャットをしたりするのにAIを使ってるってやつっすね。

この点について出会い系サイトMatchがKinsey Instituteの研究者と共同で大規模調査を行っておりました。これは全米の18歳から77歳までの独身者5,000人以上を対象に、AIの利用状況などを尋ねたところ、

  • 独身者全体の6%、オンラインデートをする人の14%がAIを活用していた
  • 利用者の32%が「AIのおかげでより良いマッチングができ、パートナー候補とより早く出会えた」と回答。具体的には、プロフィール作成に活用した人が43%、最初のメッセージ作成に役立てた人が37%に上った
  • 50%近くが「AIで自分のイメージを変える人とは距離を置きたい」、39%が「会話のすべてでAIを使う人には反対」と回答

って感じ。AIを使った(オンライン)デートはまだ初期段階にあるものの、次第にその利用は一般的になってるみたいですね。ただし、過度なAIに頼りすぎると高い確率では嫌われる傾向にあるようなんでそこんとこは注意ですね。要するに、オンラインデートアプリにおけるAIの利用は理想のパートナーとの出会いを加速するチャンスにもなりうるものの、逃すリスクにもつながるため、結局バランスが大事、と。とにもかくにも「恋する心を育むのは私たち人間の仕事」ってのは忘れないでおきたいものです。

また、本筋ではありませんがこの調査では独身者の悩みも浮き彫りになっていて、2年連続で「お金」がストレスのトップに挙がり、73%がパートナーに「経済的安定」を求めていることが判明。特に18歳から26歳のZ世代は、経済面だけでなく精神面のストレスも抱えていたらしい。59%がストレスで性欲に変化が生じたとか、57%がカウンセリングに興味を示したり実際に参加したりしているといった統計も得られてますね。

そういえば、これは全くの余談ですが、最近の研究では、「会話の内容や性格特性を全く考慮せず、心拍数や呼吸、発汗などを測定するウェアラブルセンサーのデータから、会話をどれだけ楽しんでいるかをかなり高い精度(最大75%)で予測できたぞ!」みたいな内容になっていて、テクノロジーは「人間関係のニュアンス」を理解する上でもかなり重要な役割を担いそうだなーとか感じますねぇ。


4. 恋愛と報酬システム

恋愛と脳の報酬系の関係についての面白い知見が報告されておりました。こちらはオーストラリア国立大学の研究チームが、新しい尺度を開発・活用して分析した研究で、Behavioral Sciences誌に掲載されてます。

従来から「恋愛状態は多幸感につながる!」ってのはよく言われてきてましたが、実はそれを下支えしているのが、脳の報酬系や動機づけシステムである可能性があるぞーというわけですな。

ザックリ研究の内容をまとめてしまえば、

  • 恋愛パートナーへの反応の仕方が、恋愛体験の「強さ」と深く関係している
  • 報酬を求める脳内システム(行動活性化システム)が、恋愛感情の形成に重要な役割を果たしている

ということが明らかになったみたい。なんのこっちゃわからないんでちょっと詳しく内容をチェックしてみましょう。

研究チームはまず1,500人以上の参加者のデータから、恋愛時の「行動活性化システム」の働きを測る新しい尺度を開発。さらに別の800人のデータを使って、この新しい尺度のスコアと恋愛体験の強さが相関することを実証したそう。「行動活性化システム」ってのは、「報酬や目標に向かって動機づけをする内部システム」って定義されてて、「ほしい!」「やりたい!」って気持ちが実際に行動を引き起こす体系のことですね。で、この研究ではより「恋愛」の文脈に特化した行動活性化システムのスコアを測定する質問票を作成し、「パートナーとの関係を維持するためにわざわざ外出する」みたいな質問リストに回答してもらってます。で、このスコアが高い人ほど、強い恋愛感情を経験する確率が高かったんだそうな(分散の9%(!)を説明できてる)。しかもこの結果は性別、恋愛関係の長さ、パートナーに対する強迫観念のレベル等を調整しても維持されたみたい。

恋愛時には様々な神経変化が起きることはわかっていましたが、報酬系そのものが恋愛感情の形成を左右するって点は新しい発見だったそう。研究チーム曰く、

「報酬系は本来、目標への動機づけと関係していました。しかし今回、このシステムが恋愛関係においても重要な役割を果たしていることが分かりました。愛する人に対する反応の仕方が、恋愛体験の質を規定している可能性があるのです」

とのこと。

「情熱的な恋愛なんて科学で説明できない!」みたいなことはよく言われますが、最近の研究を見てると着実に「ピースがそろってきてる」って印象を抱きますね。もちろん他の報酬系や抑制系との関連も調べる必要はありますけど、「過剰な恋愛感情を抑制する」または「もっと恋愛にのめりこむ」ためのヒントを提供するためにもこういう研究は必要だよなーと感じましたねぇ。


5. 性格は夫婦関係の満足度

「夫婦関係の質そのものはメンタルヘルスを直接的に予測するものではない!」というちょっと意外な研究が出ておりました。

この研究はパデュー大学のチームが実施した縦断研究で、新婚夫婦199組を対象に、性格特性、夫婦満足度、精神的健康状態を複数時点で測定。その結果、いくつかの驚くべき発見があったそう。

まず、最初の結果は直感に合致するもので、夫婦の性格特性が夫婦関係の満足度に大きな影響を及ぼすことが分かってます。楽観的で社交的な「ポジティブ気質」は高い夫婦満足度と関連し、反対に気分屋、情緒不安定な「ネガティブな気質」は低い満足度と関連していたそう。ただし興味深いことに、一般的に問題視されがちな「抑制不能(高い衝動性、自制心の欠如と関連する特性)」は、新婚夫婦においては高い満足度につながる可能性が示されたとのこと。高い開放性を発揮し多くの行動を起こし、結果的に関係のダイナミクスに及ぼす変化がプラスに働くのかも?とか考えられてますが、先行研究ではマイナスに働くって報告も多いので、この点の解釈は注意が必要でしょうな。

しかし、メンタルの問題に関して、夫婦の満足度そのものは、うつ病や不安、薬物乱用などのメンタルヘルス問題を直接的に予測するものではないことが判明したそう。つまり、必ずしも夫婦関係に不満がある、満足度が低くても、将来的にメンタルヘルスが悪化する可能性が高いというわけではなかったぞー、と。研究チームも「夫婦関係の満足度が、性格特性とメンタルヘルス問題の媒介変数になるだろうと考えていました。しかし実際には、そのような証拠は得られませんでした」とコメントしてますね。

代わりに、性格特性そのものが、メンタルヘルスの症状を左右する大きな要因となっていることが分かったみたい。例えば前向きで社交的な性格はメンタルヘルス障害の症状が少ないことと関係していた、一方衝動的の高さは将来のメンタルヘルスの悪化を予測したみたいな感じっすね。

まあこの研究は新婚夫婦が対象で全体的に夫婦の満足度が高く、もっと結婚してから時間がたってる夫婦だったら違いそうだなーって気もしますが、夫婦と言えども結局個人に及ぼす影響は「個人」の割合も相当デカいよなーと改めて実感しましたね。


6. 離婚、死別のショックから立ち直る速度

「女性は男性よりも、離婚などの人間関係の破綻から立ち直るのが難しいって本当?」という疑問に答える研究結果が出ておりました。これはフィンランドの大規模データの分析で、全体的に離婚や死別などの出来事の前後で抗うつ薬の使用量が増えるものの、特に女性でその傾向が顕著だったってことが示されてますす。

この研究は、1996年から2018年の20年以上に及ぶ膨大なデータを活用したもので、50歳から70歳までの22万人以上を対象に、離婚などの人生の出来事と抗うつ薬の使用パターンを追跡。その結果、離婚や死別などの別れの前後数年間で、男女ともに抗うつ薬の使用量が増加。しかし、その増加幅は女性の方がはるかに大きく、「精神的な適応」がより困難であることが示唆されたらしい。

さらに興味深いのは、再婚などの「再パートナーシップ」の影響。再婚直後は男女ともに抗うつ薬の使用が減り、一時的に精神状態が改善するものの、その効果は長続きせず、特に女性では、再婚後の改善が一過性で、すぐに元の状態に戻ってしまう傾向が見られたらしい。

研究者曰く、「再婚のメリットは男性の方が大きいのかもしれない。高齢男性は精神的サポートを求める傾向が強い」「女性は再婚後の複雑な人間関係の調整に苦労するのかもしれない」とのこと。要するに、パートナーとの別れや新たな関係性によるメンタル的な負担は男女によって異なり、「再婚すればいいやん!」といったアドバイスが有効かどうかも男女によって異なるかもしれないってわけですね。

個人的には「社会からの見方」の影響もでかそうだなーという感想を抱きましたね。人生100年時代を迎え「熟年離婚」「再婚」も一般化していく中で、これら他に対する偏見は根深く、「他人から否定的にみられるのではないか。。。」って不安は特に女性にとっては大きな障害になりますからね。そう考えるとそもそも「熟年離婚」って言葉の使用自体も見直したほうがいいんじゃないのかなぁなんて思ったりもします。


7. 乙女ゲーにハマる人

乙女ゲーってありますな。女性向けの恋愛シミュレーションゲームの一種で、プレイヤーは女性主人公となり、魅力的な男性キャラクターたちとの出会いを楽しむゲームのことで、ビジュアルノベル形式のストーリーが展開され、選択肢次第で相手との関係が変化するのが特徴として挙げられますな。

で、最近中国の乙女ゲーを対象とした面白い研究が出ておりました。

今回の研究では、中国の30歳未満の未婚女性615人を対象に、ゲームキャラとの関わり方を調査。すると、

  • ゲームキャラとの一方的な愛(パラソーシャルな関係)が強いほど、恋愛感情を抱きやすかった
  • 同時に、社交不安が強く、現実社会での交流が乏しい人ほど、そうしたキャラとの関係が深まる傾向もあった
  • 一方、現実での人間関係が活発な人は、ゲームキャラとも一般的な関係性は構築しやすいものの、恋愛関係には発展しにくかった
  • また、キャラとの関係性が深いほど、ゲームを続けるモチベーションが高まり、ゲーム内課金にも手を出しやすくなっていた
  • 特に恋愛関係になるほどの深い関係性に発展すると、課金額が増える傾向があった

みたいな傾向を確認できたらしい。研究チーム曰く、「キャラとの恋愛的な絆は、女性ゲーマーのモチベーションを高め、ゲーム収益にもプラスに働く可能性がある」と指摘。

現実世界での人間関係に不安を抱える人が、ゲームの中に心の拠り所を見出すって構図は分かりやすいっすね。もちろん因果関係がはっきりしないとかほかの文化圏、年代ではどうなの?とかの限界はありますけど現実を補完するものとして上手にバランスの取れた付き合い方をする手段となればうれしいですよねぇ。


8. 学生の恋愛が友人関係に与える影響

「中高生の恋愛ってどうなんですかー?」的なことを聞かれることがたまにあります。この点に関連して、恋愛と友情の関係について調べた研究が出ておりました。こちらはスコットランドの10代を対象にしたデータの分析で、恋愛パートナーのいる若者は新しい友達を作りにくいものの、既存の友情が壊れるわけでもないことが分かったらしい。友人関係が恋愛関係にどう影響するのかって研究はよくありますが、その逆は珍しいっすね。

この研究は、1995年から1997年にかけて行われた調査データを使用したもの。14歳から16歳の133人の友人関係と恋愛状況を時系列で追跡し、恋愛が友人関係にどう影響するかを探ってます。

その結果、まず明らかになったのは、恋愛パートナーのいる若者は同じく恋愛パートナーのいる友達と親しくなる傾向があり、逆にパートナーのいないそう若者はパートナーのいない友達と親しくなる傾向が強いこと。つまり、恋愛ステータスを共有する者同士での交流が活発になりやすかったそうで、この傾向は性別や趣味など他の要因を考慮しても維持されたとか。

さらに、恋愛パートナーのいる若者はパートナーのいない若者に比べ、新しい友達を作る可能性がかなり低いことも判明。これは、カップルで過ごす時間が増え、新しい出会いの機会が減るからだと考えられてますね。しかし意外なことに、恋愛パートナーがいるからといって、既存の友人関係が壊れやすいわけではなかったようで、新しい友情は生まれにくくなるものの、すでにある友情は維持されるケースが多いみたい。

研究チーム曰く、「恋愛に夢中になると、友達づきあいに悪影響が出ると思われがちだ。でも実際には、カップルは新しい交友関係を避けつつも、古くからの友人は大切にしているようである」とのこと。

また、一般的に友情が生まれやすく続きやすい特徴も明らかになってて、

  • 相手からも友達だと思われている
  • 共通の友人がいる
  • 同性
  • 趣味が合う

といった点が挙げられてます。これは前回のエントリ「断絶した世界でつながりを再発見する13の手法」とも一致しますね。もちろんこの結果が本ニュースレターの読者さんに多い20代以上の方にはどの程度当てはまるかは謎。年代や環境が変われば優先順位や付き合い方も変わることは当然ですが、恋愛も友情も豊かな人間関係ひいては幸福な人生にとって不可欠なファクターであることに変わりはないんで、結局のところ「バランスが大事」っていう当然の結論に落ち着いてしまうわけですが。

少なくとも今後は中高生のお子さんがいる方には「別にパートナーを作るのはいいけど新しい友達を意識的に作ることを忘れないように伝えてみては?」ってアドバイスをしてみることにします。


9. スマホ依存の新常識?「ファビング」をする人としない人の違い

「ファビング」については以前にも一つのエントリでまとめたことがありました。軽く復習しとくと、「ファビング」ってのは「Phone」と「Snubbing」を組み合わせた造語で、人と話しているときにスマホに夢中になり、相手を無視してしまう行為のことで、関係の満足度や孤立感の増大につながる可能性が指摘されているってやつです。で、最近のレバノンの研究チームは、そんなファビングをしがちな人ってどんな人なの?って点について新たな研究を行ってくれておりました。

これは18歳から29歳の461人を対象に行われた研究で、ファビング行動と、ビッグファイブ性格特性、退屈しやすさ、孤独感等の関連を分析してます。

その結果何が分かったかといえば、

  • 男女差はほとんどないものの、既婚者よりも独身者の方がファビングをしやすい傾向があった
  • 退屈に弱かったり孤独を感じたりする人ほど、ファビングに走りがちだった
  • 性格面では、ファビングと外向性、協調性、誠実性、開放性との間に弱い負の相関が見られた。つまり、ファビングしがちな人は、内向的で非協調的、怠惰で保守的な傾向があった
  • さらに、外向的な人のファビング傾向は、孤独感や退屈さのレベルによって変化した。孤独でも退屈でもない場合は、外向的な人ほどファビングしにくいに対し、孤独や退屈を感じている場合は逆の傾向が見られた

だったそう。普段は社交的な人でも、高いレベルの孤独や退屈を感じているときは、人と接するよりもスマホに手を伸ばしてしまう確率が高くなるってわけで、単なる一義的な性格だけでファビング行動は予測できず、その場の環境や気分、心理状態によって違いが発生するってのは面白いですね。

まー、研究デザイン上、この研究から因果関係を明らかにすることはできず、ファビング行動自体が孤独や退屈を形成してるって可能性もありますし、まあ基本的にファビングにメリットはないんで、目の前に人がいるならスマホに意識を向けるのは控えるのが吉。といっても言うは易し。デメリットがわかっていたとしてもついスマホが気になってしまうという人もおられるでしょう。そこで本研究から得られるヒントの一つとして、セカンドネイチャー的に「協調性、誠実性、開放性が高い人の『ふり』をしてみる」って行動をとってみると「スマホを見たい!」って気持ちを抑制するために使えるかもしれないっすね(つまり性格「特性」を根本から変えるのではない、そのような特性を持っている人が「どのように行動するか?」を考えて真似てみる)。


10. 結婚は男性の収入にどう影響する?

結婚が男性の収入に及ぼす影響について、新たな国際比較研究の結果が報告されてました。

昔から、既婚男性は独身男性よりも収入が高い(いわゆる「結婚プレミアム」)、一方で既婚女性は独身女性より収入が低い(いわゆる「結婚ペナルティ」)ってのは指摘されてきてたわけですが、最近ではどうなの?国によっても違うんじゃないの?ってのを調べてくれたわけですね。

今回の研究では、アメリカ、イギリス、ドイツの3カ国の18歳から59歳の男性を対象に、結婚前後の収入と税負担を追跡。その結果、国によって結婚前後の収入の増減には違いがあることが分かったらしい。最終的なサンプルは、アメリカ3,244人、ドイツ4,581人、イギリス7,140人となってます。

以下結果です。

  • ドイツとイギリスでは結婚後に収入が増える一方、アメリカでは減少していた
  • 具体的には、ドイツ人男性は結婚で収入が約4%増、イギリス人男性は約3%増、アメリカ人男性は約8%減少
  • この傾向は低学歴女性と結婚したドイツ人男性で顕著だったが、高学歴女性と結婚したアメリカ人男性での収入減も顕著だった。一方イギリスでは、パートナーの教育レベルが男性の収入に有意な影響を及ぼさなかった
  • さらに興味深いのは、アメリカ男性の収入減が子育て世帯に集中していたこと。子どもがいなければ、アメリカ人男性でも結婚による収入減は確認されなかった
  • また、ドイツとイギリスでは、1976年以前に生まれた男性ほど、結婚後の収入増加幅が大きい傾向も見られた

研究者曰く、「政策的背景が、結婚による経済的結果の違いをもたらしている可能性がある」とのこと。特にドイツでは、男性にとって結婚が有利に働く制度がプラスに働くことで、純収入が大きく増える一方、イギリスではやや不利、アメリカではペナルティーになりがちだと分析してたりします。

まあそうは言っても根本的なメカニズムは解明されてないし、統計的に有意といってもそこまで差はでかくないし、世帯全体で見たら別の傾向がみられるかもしれないし、とにかくこの結果を解釈するにしても多角的な視点が必要なのは間違いなし。とはいえ、ジェンダー平等とか、結婚率の低下とか少子高齢化といった問題を抱える日本にとってもこういうデータ、研究は重要でしょうねぇ。日本の状況はどうなってんのだろう。。

*Claude3-assited Journal Reading.