目次

1. 暗闇が変える女性の男性への警戒心
2. 運動でIQ4ポイントアップ
3. カップルの関係を良好に保つ6つの戦略

暗闇が変える女性の男性への警戒心

周囲が暗くなると、人は本能的により警戒モードになる。特に女性は暗闇の中で脆弱性を強く意識するとされる。しかし、この環境要因が女性の男性に対する印象や接近意欲にどのような影響を与えるのだろうか。暗闇のみならず、脅威を感じるようなシチュエーションに応用して考えることができるそうな研究が面白かった。

研究チームは、米国南東部の大学のソロリティ（女子学生の社交クラブ）に所属する124名の女性（平均年齢19歳）を対象として、デジタル編集で作成した2種類の男性画像（筋力の強い男性/弱い男性）を、明るい環境と暗い環境それぞれで提示し、9つの状況での交流意欲（道を尋ねる抵抗感、相手がほほ笑んだ時の感情等）を5段階で評価してもらった

分析の結果、

1. 暗い環境では：

• 筋力の強い男性への接近意欲が低下した
• 筋力の弱い男性はむしろ近づきやすいと評価

1. 明るい環境では：

• 筋力の強い男性と弱い男性で大きな評価の差は見られなかった
• 筋力の強さは必ずしもマイナス要因とはならなかった

暗闇という環境要因が、男性の身体的な強さを脅威として認識させる可能性がある、ということだ。

この結果について、研究チームは進化心理学的な観点から以下のように分析している

• 人類の進化の過程で、暗闇は常に潜在的な危険と結びついてきた
• 女性は特に、暗い環境での脆弱性を強く意識する傾向がある
• 男性の身体的な強さは、状況によって保護の象徴にも脅威の象徴にもなりうる
• 暗闇という不確実性の高い環境では、より安全な選択を優先する傾向がある

研究チームは「この結果は、女性が環境要因に応じて社会的な相互作用のリスクを柔軟に評価し、適応していることを示唆している」と結論付けている。

この研究は、他人に対する印象が環境要因によって大きく影響を受けることを示すいい例と言えるのではないか。キャンパスの安全対策など、実社会への応用も期待される研究だろう。個人としては、自身の筋肉を客観的にとらえて、女性に脅威ととらえられはしないか、考えてみたほうがいいかもしれない。すでに見知った関係であればむしろ保護してくれる対象として、評価があるのかもしれないが、マッチョな殿方は少なくとも暗闇でナンパするのは得策とは言えないだろう。

運動でIQ4ポイントアップ

運動が知能の発達にも重要な役割を果たすことは最近当たり前になってきているように思う。特に子供時代の運動はその後の人生においてかなり有利に働くようである（IQに関しては、過去に様々な研究をまとめているのでご参考までに。）

この度、米国小児科学会誌に掲載された大規模なメタアナリシスでは、定期的な運動プログラムは、子供（ティーンまで）のIQを平均4ポイント向上させると結論付けていた。

アルメリア大学のハビエル・S・モラレス博士らの研究チームは、合計3,203人の子どもを対象とした14の無作為化比較試験のデータを統合・分析。その結果、以下のような結果が得られた。

• 運動介入により、IQが平均4ポイント向上
• この効果は1年間の追加教育で得られる向上幅に匹敵
• 効果は年齢や介入期間に関係なく一貫して見られた
• 特に流動性知能（論理的思考力や問題解決能力）で顕著な改善

定期的な運動は、子どもの身体だけでなく知能の発達にも大きく貢献するということだ。当初はIQが低い子どもでも同様の効果がみられているというのも大事なポイントだろう。介入期間の長短が影響しないこと、様々な集団で同様の効果が確認されているのもうれしいところだ。

この研究の社会的意義について、モラレス博士は次のように述べている

この発見は、運動が子どもの知的能力だけでなく、幸福度、社会経済的成功、将来の健康にまで影響を与える可能性を示唆しています。学校教育の中核要素として運動を位置づける必要性を強く示唆する結果です。

人生におけるIQの人生を踏まえれば、まったくもっておっしゃる通りだろう（IQが120とかを超えてくるとむしろ厄介にはなったりするが、そこまで伸びることは少ない）。

ただし、このメタアナリシスにはいくつかの限界もある。

• 分析対象となった運動プログラムの内容が多様
• 最適な運動強度や頻度が特定できていない
• 長期的な効果の検証が不十分

なので、種類、頻度、強度等は最適解が見つかるまでもう少しの時間は必要なのだろう。それでも、1年間の追加教育に匹敵する効果というのは無視できない数字だ。とりあえずは勉強のために箱詰めにするよりも好きにスポーツなり体を動かす機会を与えてあげるのが重要だろう。

カップルの関係を良好に保つ6つの戦略

カップル関係の満足度を高めるにはどうすればいいのか？イスラエルの研究チームが483名を対象に実施した最新の調査で、パートナーとの関係を良好に保つための6つの「投資戦略」が明らかになった。興味深いことに、お金をかけた物質的なアプローチよりも、感情的なケアやコミュニケーションの方が、関係性の満足度を高める効果が大きいという結果が出ていた。

この研究では、まず110名の協力者に「パートナーとの関係を良くするためにできること」を自由に挙げてもらい、そこから46の具体的な行動をリストアップ。これらを分析して「関係性への投資戦略」を6つのカテゴリーに分類した。その上で、19歳から77歳までの483名（平均年齢37.65歳）を対象に、それぞれの戦略の実践度と関係性の満足度との関連を調べている。

研究チームが特定した6つの投資戦略は以下の通りだ

• 感情的なケアとジェスチャー：愛情のこもったニックネームで呼ぶ、感謝の言葉を伝えるなど
• 物質的なジェスチャー：プレゼントを買う、相手の好きな料理を作るなど
• 適度な距離感の保持：一人の時間を認める、友人との付き合いを尊重するなど
• 外見と性生活への投資：自分の容姿を磨く、性生活を工夫するなど
• 共同活動：一緒に旅行に行く、趣味を共有するなど
• 第三者へのケアとサポート：相手の家族や友人を助ける、良好な関係を築くなど

分析の結果、これら6つの戦略のうち、関係性の満足度と強く結びついていたのは「感情的なケアとジェスチャー」「物質的なジェスチャー」「共同活動」「第三者へのケアとサポート」の4つだった。特に感情的なケアは、他のどの戦略よりも満足度との関連が強かったという（β = .44, p < .001）。

「感情的なケアとジェスチャー」「物質的なジェスチャー」「共同活動」「第三者へのケアとサポート」が大事

要するに、「愛情表現をしっかりする」「物質的なサポートを提供する」「一緒に活動する時間を作る」「相手の大切な人々との関係も大事にする」という4つが、カップルの幸せにとって重要で、特に愛情や感謝をきちんと伝えることが大事なようだ。

興味深いのは、男性は女性よりも「物質的なジェスチャー」を多用する傾向があった点だ（男性M = 3.81 vs 女性M = 3.37、p < .001）。男性は「プレゼントを買う」「おごる」といった形で関係性に投資しがちということだが、実はそれよりも感情的なケアの方が効果的かもしれない。

この研究結果を踏まえると、カップル関係を良好に保つためのヒントがいくつか見えてくる。例えば「感謝の言葉を日常的に伝える」「相手の良いところを言語化する」「愛情のこもったニックネームで呼ぶ」など、日常的な感情表現を意識的に増やしていくことが重要だろう。

また、「二人だけの関係」に閉じこもらないことも大切、というのも覚えておくとよいだろう。相手の家族や友人との付き合いを大切にし、むしろ積極的にサポートすることで、関係性の満足度は高まる。これは「関係性の社会的基盤を広げる」効果があるからかもしれない。家族や友人という「観客」がいることで、関係性がより安定するという面もあるだろう。

ただし、この研究にも限界はある。参加者の8割が女性で、社会経済的地位が比較的高く、またイスラエルのユダヤ人が中心という点で、サンプルの偏りが大きい。文化や社会的背景が異なれば、効果的な投資戦略も変わってくる可能性は十分にある。

それでも、「お金をかけることよりも、思いやりの表現や共有体験を増やすことの方が効果的」という知見は、多くのカップルにとって参考になるのではないだろうか。研究者らも「ほとんどの投資戦略は無料か低コストで、簡単に実践できる」と指摘している。要は心づかいの問題なのだ。日々の小さな投資の積み重ねが、長期的な関係性の質を左右するということを、この研究は教えてくれている。