本ニュースレターにご興味をもっていただきありがとうございます!このニュースレターでは、中国清華大学大学院に留学中でありサイエンスライターなどをこなす筆者が、科学的知見をベースにあなたの人生の道しるべを提案します。
最近では「検索エンジン、AIの発達で各人が欲する情報に容易にたどり着けるようになった!」などと言われますが、実際にはテキストの複雑さが低い、つまり平易な文章ばかりが表示されるし、プロンプトによらず結局最小公倍数的な情報が提供されるようになってるしでニッチで深い情報にたどり着くための道のりはむしろ長くなってしまっているのが現状(R)。
もちろんAIはなんでも知っているけれど、それと同時に大多数の人がニッチで深い情報には興味を示さないことも知っています。だからAIはあえてニッチ情報を提供せず、結局情報の濁流の中で「より信頼でき、本当に価値ある情報」にたどり着くのは一層困難になっているというわけ。そこで本ニュースレターは検索エンジン、AIからは辿り着けない「ニッチ」な科学的知見をニッチなあなたに毎週お届けします。ゴミがあふれるネット上においてキラキラと光る質の高いコンテンツを目指しています。
よろしければあなたの人生を彩るヒントとしてご活用いただければ幸いです。少しでもご興味があればぜひ購読してください(無料です)。
てなわけで、今回は毎月恒例の「男女にまつわる最新研究」のまとめでーす!今回も10個ほどダダーッとみていきましょう!
少子化をはじめ、近年家族の形態が大きく変化しているのはご存じの通り。しかし、最近米国科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載されてた研究によると、「家族に対する基本的な価値観はあんま昔と変わってないんじゃない?」みたいな話になっておりました。
こちらはボッコーニ大学の研究で、中国、日本、韓国、シンガポール、米国、イタリア、スペイン、ノルウェーの8カ国で、20,141人を対象に調査を実施。様々な家族のシナリオを提示し、人々が理想とする家族像を探ったんだそうな。
調査の結果、ほとんどの国で同棲よりも結婚が好まれ、少なくとも1人の子どもがいることが理想的だと認識されていたらしい。ただし、子供は2人以上いても、1人の場合と比較してそんなに大きな違いは見られなかったとか。
また、離婚に対しては、どの国でも以前ネガティブな見方が示されていて、依然として安定した永続的なパートナーシップへの希求が一般的みたいっすね。
家族の理想像を形作る上で、経済的な安定も重要な要素であることが浮き彫りになってます。つまり実験では、「平均より収入が低い」家族は理想としてふさわしくないと認識される傾向が確認されてます。加えて、家事と経済的責任をパートナー間で平等に分担することに対して強い支持が確認されておりまして、伝統的な性別役割分担からの移行が示唆されているのも面白いところ。
家族内での良好なコミュニケーションと、親戚との親密な関係も、理想的な家族像の一部として重視されてます。また、子どもの教育レベルへの期待や、将来の経済的成功に向けた積極的な態度も、望ましい家族の特徴とされてたり。
興味深いことに、本研究で対象になった国の間で「理想の家族像」に顕著な違いは認められなかったみたい。もちろん完全に同じというわけではなくて、同棲はヨーロッパ諸国に比べてアジア諸国でよりネガティブにとらえられがちといった違いはあるものの、夫婦の関係の安定性、一人以上の子供、経済的な安定、家族内外からの社会的サポートってあたりは(少なくとも先進国において)国境を超える共通のテーマのようですな。
近年いわゆる「熟年離婚」と呼ばれる50歳以上での離婚の増加は多くの国に共通しているところ(英語圏では「グレー離婚」とか呼ばれますね)。そんなところで最近Journal of Marriage and Family誌に掲載された縦断的データの分析では、熟年離婚がメンタルに与える影響は?子どもの有無による違いはあるの?といったところが分析されておりました。日本でも完全に他人ごと、と言える人は少ないでしょう。
これは米国のHealth and Retirement Studyのデータを用いた熟年離婚を経験した930人の分析で、結果的に、以下のことが明らかになってます。
だったそう。たしかに離婚によってメンタルにダメージは来るんだけどそれは配偶者との別れというよりも子供との別れの影響がデカいんだろうねーって感じですね。
結果を踏まえて研究チームは、「離婚後も子どもと連絡を取ることが、グレー離婚がメンタルヘルスに与える悪影響を軽減する可能性があるだろう」って指摘してたりしますね。
まあこの研究では離婚に至った経緯、離婚前の親子関係の質が考慮されていないといった限界もありますけど、とりあえず熟年離婚の際には「今後子供と関われる機会をどのように設けるか?」ってのはその後のメンタルを維持する上で非常に重要そうだよーってことで。これはいかにこどもが大きくなっていたとしても気を付けておくべきでしょうね。
熟年離婚とその後の親子関係についてもう一つ興味深いデータが発表されていたので、こちらもチェックしておきましょう。こちらはマックス・プランク人口学研究所のザファー・ビュクケチェチ先生たちの研究で、結果はThe Journals of Gerontology: Series Bに掲載されてます。
研究はドイツ家族パネル(Pairfam)のデータを用いていて、18歳以上の9,092人を対象に行われた12回の調査情報を分析しています。で、研究チームは以下の3点に焦点を当てて調査を実施しています。
これらの要素が両親の離婚によってどのような影響を受けるかを分析した結果、その影響は親と子の性別によって異なることが明らかになったんだそうな。
当然ながら離婚しても親としては「自分の子供」であることに変わりはないわけですが、お母さんとは感情的なつながりがブーストする一方でお父さんとの関係では離婚は逆に働くってことで、パパとしては少し悲しいですな。ただし、このような傾向を事前におさえておければ、有効な対策を考えることも可能でしょう。
相互理解や共感がいい関係づくりに欠かせないのは当然のことですが、双方向的である以上、時に偏りが生じてしまうのも仕方ないところ。そんな中でJournal of Experimental Social Psychology誌に掲載された研究では、以下の2種類の主観的知識が比較されておりました。
研究チームは、2,036人の参加者を対象とした7つの異なる研究において、家族、恋愛、友人など様々な関係性におけるこれらのダイナミクスを調査したんだそう。つまり、自分が相手のことをわかっているのと、相手がどのくらい自分をわかってくれていると感じるかのどっちが、良好な関係において重要な役割を果たすの?ってわけですね。
研究の結果、参加者は、相手のことをよくわかっていると感じる関係よりも、相手にわかってもらえていると感じる関係の方が満足度が高いと報告してます。しかもこの傾向は、兄弟姉妹、両親、恋人、友人との関係において一貫して見られたみたい。
研究チームは、「わかってもらえている」と感じることが重要である根本的な理由として、自分の目標や願望をサポートされていると感じることが媒介要因になっているんじゃない?と指摘していたりします。つまり、「わかってもらえている」という認識が、サポートされてるという感覚を生み出し、それが関係満足度を高めるってわけですな。
ただ、興味深いことに、親は他の関係とは異なり、子どもからわかってもらえていると感じることよりも、自分が子どもをどれだけわかっているかの方を重視していたとか。やっぱり親はサポートを受けることよりも、サポートを提供する役割に重きを置いているんだなーと感じますねぇ。感謝感謝。
さらにマッチングアプリを用いた試験では、一般的に人は「相手を知りたい!」よりも「自分を知ってほしい!」ってプロフィールを書きがちだけど、実験の結果、「相手を知りたい!」という欲求を表現したプロフィールの方がより魅力的だと感じられる傾向も明らかになってます。マッチングアプリ攻略については過去にnoteを書いたことがありましたが、そこに一つ新たな戦略として追加しておきたいですね。
ってことで、殊恋愛の文脈では、初期段階でも長い付き合いになってからでも、「相手を理解しよう」って態度の方が大事!ってのは気を付けておきましょうー。
BMC Women's Health誌に掲載された研究では、「一夫多妻制が女性の性機能と心理的幸福にどんな影響を及ぼすのか?」を調べてくれておりました。一夫一妻制と一夫多妻制の心身への影響の違いを包括的に調査したわけですね。
研究チームは、モガディシュのソマリアトルコ研修研究病院の婦人科クリニックを訪れた607人の女性を対象に横断研究を実施。参加者の28.3%が一夫多妻制の結婚をしていたみたい。
で、一夫多妻と一夫一妻の女性を比較した結果、一夫多妻制の女性は、一夫一妻制の女性と比較して、女性性機能指数(FSFI)のスコアが低く、性欲、興奮、オーガズム、満足度が低かったみたい。一夫多妻制結婚特有の役割や期待の変化が、女性の性的健康に悪影響を及ぼすんじゃないの?とか考察されてますね。
さらにメンタル面では、一夫多妻制の女性は、BSI-18の得点が高く、不安や抑うつのレベルの上昇など、心理的苦痛のレベルが高かったみたい。特に、一夫多妻制の最初の妻が最も高いレベルの不安と抑うつを示したってのは特徴的ですね。実際、界隈では経験的にこの現象は「最初の妻症候群(first wife syndrome)」なる呼ばれ方をしているらしい。
研究チームは、社会人口統計学的要因についても調査していて、その結果、女性の教育水準が低く、夫の所得水準が高いほど、一夫多妻制結婚を採用している可能性が高いことを明らかにしています。まあ以前の研究では一夫一妻制の妻は識字率が低いってデータもあって、イメージ通りって感じもしますけど実際そうなんだなぁって感じましたね。
ってことで、最近では日本でも「複数の奥さんが欲しい!」みたいなことを真面目に宣う方がいらっしゃいますが(別にまったく否定するつもりはありませんが)、より一層奥様がたには気を使っていただければと思います。
Journal of Experimental Social Psychology誌に掲載された最近の研究では、「身体的な女性らしさ」を傷つけられると不安が著しく増大し、自尊心も低下するぞ!みたいな話になっておりました。ジェンダー・ステレオタイプといえば、「女性といえば口数は少なく、男の後ろを歩き、、、」みたいな内面的な面が強調されることが多かったけど、女性的な「見た目」によるステレオタイプがどんな影響を及ぼすのか?ははっきりわかっていない分野だったみたい。
これはイェール大学の研究で、女性の身体的外見におけるジェンダー・ステレオタイプ性の認知が心理的に及ぼす影響を調べ、男性が経験する影響と比較してます。
具体的には、合計920人のシスジェンダー女性を対象に、3つの実験を実施。参加者は、自分の外見、特に顔の女性らしさについて、ポジティブまたはネガティブなフィードバックを受けるように無作為に割り当てられてます(「女性らしい/らしくない顔」)。
その結果、シスジェンダーの女性は自分の外見が平均より女性的でないというフィードバックを受けたとき、女性らしさを肯定するフィードバックを受けたときと比較して、状態不安のレベルが高いと報告する一貫したパターンが確認されたらしい。しかもこのネガティブなフィードバックは、身体的魅力の自己評価には有意な影響を与えなかったことから、この不安は、「自分って女性っぽくないのかしら?」という疑いから生じるものではない、と説明されてます。
続いて研究チームは、822人の女性と752人の男性を対象に、身体的外見と性格の両領域を含むジェンダー・ステレオタイプ性を脅かされたときの反応を比較してます。
結果、女性は、身体的な女性らしさが肯定された場合と比較して、身体的な女性らしさが脅かされた場合に、状態不安の増加と自尊心の低下を報告。この効果は身体的外見の領域に特有であり、心理的な女性らしさを批判されたときには確認されなかったみたい。対照的に、男性は外見と性格の両方の領域で男性らしさを否定されることで不安の高まりを示したんだそう。
探索的分析によれば、アイデンティティの揺らぎを感じることが、身体的な女性らしさの脅威に直面した女性における不安の増大と自尊心の低下を説明するメカニズムとして機能する可能性が示唆されてます。つまり、内的な自己評価とフィードバックとの不一致に直面することで「自分が思ってる自分って本物なんだろうか、、」みたいな不安に陥ってしまうというわけですな。
近年では「男らしい顔」「女っぽい顔」「中性的な顔」みたいな表現はポジティブな意味合いで使われることも少なくない気がしますが、言われた側としては予想以上に大きいダメージを負う可能性がありますんで、気を付けたほうがいいでしょうねー。
「何を食べるかで顔の魅力が変わるんじゃない?」みたいなおもしろ研究がPLOS ONEに掲載されてました。具体的にはグリセミック負荷の高い朝食を摂った人は、グリセミック負荷の低い食事を摂った人に比べて魅力が低いと評価されることが示されたんだそうな。
こちらはモンペリエ進化科学研究所のクレール・ベルティカット博士らの研究で、精製炭水化物の摂取が顔の魅力に影響を及ぼす可能性に着目してます。参加者は、20歳から30歳の男女各104名で、早朝空腹時に精製炭水化物の多い朝食と少ない朝食のいずれかを摂取するよう無作為に割り当て。その後、参加者の写真を撮影し、別の評価者グループが顔写真を評価してます。また、参加者は詳細な食事アンケートに回答し、慢性的な食習慣も評価されてます。さらに、身体活動、喫煙状況、女性の場合はホルモン避妊薬の使用状況などのデータも収集されております。
その結果どんなことが分かったかといえば、
だったそう。精製炭水化物の摂取は即時的にも慢性的にも顔の魅力に影響するってわけですな。ただ、男女や時間帯による違いも確認されていて、
って結果が得られたらしい。少なくとも男性の場合には、必ずしも精製炭水化物を少なくすべし!ってわけでもないのでは?とも感じますな。まあでも体内時計とかが絡んでくるとなると、食事、性ホルモン、睡眠、気分等々時間生物学的な色んな要素が影響してきそうなんで食事だけではっきりとは言えないでしょうね。
まあ私は既に朝食抜きの生活に慣れてしまっていて、その習慣を変えるまでのインセンティブには感じてませんけど、デートの当日!とかであれば意識してみてみようかしら。。
「パートナーがいたほうが幸せなのか?」ってのは実は未だはっきりわかっていなかったりします。たしかに昔の研究では「パートナーがいる方が断然幸せ!」って結果が報告されてたんだけど、最近の研究では、パートナーがいない人も同じくらい幸せ/より幸せってデータもあったりするんですよね。
そんなところでPersonality and Social Psychology Bulletin誌に掲載された新しい研究では、「性格」の側面からパートナーの有無と幸福度の関係性を探ってくれていて面白かったです。
参加者は、20歳から59歳までの男女で、パートナーがいない人または現在のパートナーとの交際期間が6か月以上の人992人が含まれてます。で、みんなにはBig Five Inventory-2(BFI-2)、生活満足度尺度、性的満足度尺度、人間関係状況満足度尺度などに回答してもらったんだそうな。
で、結果的に何が分かったかといえば、
だったそう。たしかにパートナーがいない人はパートナーがいる人に比べて平均的な幸福度が低いんだけども、それって神経症傾向のレベルの高さが一つの原因なんじゃない?「パートナーがいない=幸福度が低い」ってわけでもないんじゃない?ってわけですな。
まあとは言っても、外向性、誠実性、神経症傾向を考慮しても交際ステータスが幸福度に及ぼす影響は維持されてるんで、性格だけですべてを説明できるわけではない点には注意。とはいえってもやっぱり「パートナーができればもっと幸せになれる!」って考えは安直すぎるよなぁって感じましたね。それよりも神経症傾向の改善などが先だろう、、、と。
男女平等!は色んな分野で叫ばれているところで、それはアカデミアの分野も同じ。コーネル大学とボストン大学の研究者チームが主導した新しい研究では、科学、技術、工学、数学(STEM)分野の学術界におけるジェンダー・バイアスの現状が包括的に調べられていて、現状を把握するのにかなり有益でございました。結果は、学術誌『Psychological Science in the Public Interest』に掲載されてます。
これは、2000年から2020年までの何百もの研究データを用いたメタアナリシスで、STEMアカデミアにおける男女平等が大きく進展していることを明らかにしています。具体的には、
って感じで、昔と比べて現状はかなり変わってきていることがわかりますな。むしろ「女性は差別されている!」という誤った現状認識は結果的にさらに新たな差別を生む可能性があるなーとすら感じる結果ですね。
ただし、残念ながら、「教育評価」の文脈においてはいまだジェンダー・バイアスが残存する証拠が発見されてます。つまり、女性学者は学生から低い教育評価を受ける傾向が確認されたらしい。また、給与分析では、同等の科学者の男女給与格差が3.6%ほどであることが明らかにされてます。これは以前主張されていたよりもかなり小さいものの(昔は20%くらいあったらしい)、給与の完全な平等を達成するにはまだ改善の余地があるって感じですな。
科学と同じように、男女格差も日々修正を続けていってほしいと願うと同時に、自身の理解もアップデートし時代遅れにならないようにしないとなぁと思いました。
Journal of Sex Research誌に掲載された最近の研究では、交際相手以外に惹かれることによる、既存の交際関係への影響が調べられてました。よくある彼女とデート中に別の女性に目を奪われて「あんたなにほかの女見てんのよ!」ってやつですね。これが今後の交際関係にどのような影響を及ぼすのか、と。
この研究は、米国またはカナダに住む22~35歳の成人542人を対象に行われたもので、参加者は、研究開始時と4ヵ月後のフォローアップの2回の調査に回答。調査には、人口統計、関係の特徴、浮気、ほかの異性に対する魅力の特徴、主観的なつながりの機会、関係の満足度、交際関係へのコミットメント、性的満足度、関係の解消に関するモチベーションなどが測定されてます。
結果は以下の通りです。
つまり、パートナー以外の他者に惹かれることはかなり一般的であるものの、それが関係の質に与える影響は様々で、一概には言えないよなーというなんとも現実的な結果っすね。強烈な魅力は満足度やコミットメントの低下、ひいては関係の解消や浮気といったネガティブな結果につながる可能性があるものの「あの人可愛い!イケメン!」くらいのことなら大した影響はないんじゃないのか、と。
それに「あんたなにほかの女見てんのよ!」といいながらその子もイケメンを見つけて「あの人かっこいいなぁ」って思ってる確率は相当高いみたいですねー。
日々健康、心理分野などの最新学術論文を発信をしているので、ぜひフォローお願いいたします。
ヘリコプターペアレント
![]()
おくさん🇯🇵🇨🇳 @Astella6174
親が過度に干渉してくると感じている学生は、有能感の低下を感じる傾向があり、その結果、学業成績の低下や大学での人間関係の形成がうまくいかなり、心理的ウェルビーイングも低下する可能性が高いよーという研究。https://t.co/Psuk2V2oLu pic.twitter.com/nJg7fNQnZ5— おくさん🇯🇵🇨🇳 (@Astella6174) April 26, 2024