だである調のほうがよいってお声をいただいたので、今回からそうしてみます。
ご意見ご感想あればお願いします！

目次

1. 美人・イケメンは本当に「いい人」なのか？
2. 友達に愚痴をぶちまけたら仲良くなれた
3. 1日3-5杯飲むと寿命が延びる飲み物

美人・イケメンは本当に「いい人」なのか？

私たちは人と出会って1秒以内に、その人が「いい人か否か」を判断するという。同様に、その人の魅力や信頼性、知性についても、ほんの一瞬で判断を下してしまうものだ（第一印象の重要性についてはこちらに詳しくまとめている）。

最近の研究では、「見た目の印象」と「実際の思いやり行動」の間の関係性が深堀されていた。Journal of Economic Behavior and Organizationに掲載された最新の論文を見てみよう。

この研究では、249名の被験者（平均年齢42歳、男性53%）を対象に、興味深い実験が行われた。実験は2段階で構成されており、以下のような結果が明らかになっている。

• 魅力的な人は思いやりがある？: 被験者は、魅力的な人物の方が、そうでない人よりも思いやりのある行動を取ると予測した。具体的には、魅力的な人物は平均46トークンを他者に分配すると予測したのに対し、魅力的でない人物については36トークンと予測した。
• 思いやりのある人は魅力的に見える？: 思いやりのある行動を取った人物は実際に魅力的だと評価された。100点満点の魅力度評価で、利己的な人物が平均45点だったのに対し、思いやりのある人物は48点と、（若干ながら）高く評価されたのだ。
• 相互作用がある: 「魅力的な人は思いやりがある」と信じている人ほど、思いやりのある行動を取る人を魅力的だと感じる傾向が強かった

この結果から見えてくる重要なポイントは、「見た目の魅力」と「思いやり行動」の間には、双方向の関係があるということだ。魅力的な人は思いやりがあると期待され、思いやりのある行動を取る人は魅力的に見えるという、一種の循環が生まれているのである。

では、この研究結果を日常生活にどう活かせばよいのか。以下のような示唆が考えられる。

1. 第一印象にとらわれない: 魅力的な外見を持つ人に対して、無意識のうちに「いい人だろう」という期待を持ちがちだ。しかし、これは必ずしも現実を反映していない可能性がある。
2. 行動で印象を変える: 自分の外見に自信がない場合でも、思いやりのある行動を心がけることで、他者からの印象を向上させることができる。

ただし、この研究にも限界はある。オンライン上のアバターを使用した実験であり、現実の人間関係とは異なる可能性がある点には注意が必要だ。また、思いやり行動の指標として使用されたのは、ゲーム内のトークン分配という限定的な設定であった点にも留意すべきだろう。

とはいえ、「見た目」と「思いやり」の関係について、面白く新しい視点を提供してくれる研究であることは間違いない。私たちの多くが抱いている「イケメン・美人＝いい人」という無意識の思い込みについて、改めて考え直すきっかけとなるのではないだろうか。

友達に愚痴をぶちまけたら仲良くなれた

「愚痴を言うのはよくない」「愚痴を聞くのも疲れる」。そんな声をよく耳にする。しかし、Evolution and Human Behaviorに掲載された研究によれば、愚痴には意外な社会的効果があるという。

UCLA心理学部のJaimie Krems准教授らの研究チームは、1,723名を対象とした6つの実験を通じて、「愚痴」が人間関係にもたらす影響を詳細に検証した。

その結果、以下のような事実が明らかになった。

• 愚痴による印象の変化: 愚痴を聞いた人は、愚痴を言った人により親近感を抱き、愚痴の対象となった人への好感度は下がる傾向にあった。
• ただし、攻撃的な愚痴は逆効果: 露骨に相手を批判したり、侮辱的な言葉を使ったりした場合、この効果は消失。むしろ愚痴を言った人への好感度が下がってしまった
• 競争心からの愚痴も効果なし: 恋愛など、個人的な競争関係が背景にある場合、愚痴を言っても聞き手の好感度は上がらなかった。

この研究が特に興味深いのは、「なぜ人は愚痴を言うのか」という根本的な問いに、新しい視点を提供している点だ。1950年代から、フロイトが提唱したような「カタルシス効果」（感情の浄化）は否定されており、むしろ愚痴を言うことで怒りが増幅する場合すらあることが知られていた。

では、なぜ私たちは愚痴を言い続けるのか。研究チームは、愚痴には「社会的な機能」があると考えた。実際、以下のような実験結果がそれを裏付けている

1. 資源配分実験: 実験参加者は、愚痴を言った人により多くの利益（くじ引きのチケット）を配分する傾向を示した。
2. 感情的要素の重要性: 単なる情報共有や、物事への不満（例：車の故障）ではなく、人間関係における感情的な愚痴が、より強い効果を示した。
3. 被害者性の影響: 愚痴を言う人は「被害者」として同情を集めやすいが、それだけでは効果を説明できない。感情的な脆弱性を示すことが重要だった。

この研究結果から、日常生活に生かせる以下のような示唆が得られる。

1. 愚痴の使い方を意識する: 感情的な吐露は関係性を深める可能性があるが、攻撃的な批判は逆効果となる
2. 動機を見直す: 競争心や妬みから来る愚痴は、期待する効果が得られない可能性が高い

この研究は「愚痴」という日常的な行為に、今まで意識していなかった視点を提供してくれた。特に興味深いのは、愚痴が単なる感情の発散ではなく、より深い社会的機能を持っている可能性を示唆している点だ。

研究チームは「パンデミックで私たちが学んだように、孤独は辛いものであり、友情を築くのは難しい。この研究は、人々がいかにして友情を深めようとしているかについての理解を深めるものだ」と述べている。愚痴は、適切に用いれば人間関係を深める一つの手段となり得るのかもしれない。が、エスカレートしないよう意識することを忘れてはならない。

1日3-5杯飲むと寿命が延びる飲み物

世界で1日20億杯も消費されているというコーヒー。その効果については、これまで数多くの研究で議論が重ねられてきた。私自身もコーヒーの健康効果については過去にまとめている。そんな中、Ageing Research Reviews誌に掲載されたレビュー研究では、膨大な引用文献をもとに、最新のコーヒーの健康効果（特に寿命、老化）をまとめてくれている。

コインブラ大学の研究チームは、先行研究を分析し、大きく以下のような結論を見出している

• 寿命への影響: 適度なコーヒー摂取は、健康寿命を約1.8年延長する可能性がある。
• 作用メカニズム: コーヒーに含まれるクロロゲン酸（抗酸化物質）が細胞の化学的劣化を抑制し、カフェインがストレスシグナルの活性化を抑える効果がある。
• 慢性疾患の予防: 適度な摂取は、複数の慢性疾患の発症リスクを低下させる

この研究が特に注目に値するのは、単なる寿命延長ではなく、「健康寿命」の延長に焦点を当てている点だ。研究チームは「世界の高齢化において重要なのは、単に長く生きることではなく、健康的に長く生きることだ」と指摘しており、この健康寿命の延長にコーヒーがポジティブな効果をもたらすということだ。

参考文献より

さらにコーヒーの健康効果を最大限に引き出すためポイントもチェックしてみよう。

1. 適切な摂取量: 研究で beneficial とされているのは、1日3-5杯（1杯約240ml）程度。
2. 飲み方の注意点:
3. • 砂糖の過剰な添加は効果を減少させる
   • なるべく無糖か、自然な甘味料（サトウキビ、ハチミツなど）を使用
   • デカフェの場合は製法にも注意が必要
3. 個人差への配慮:
4. • カフェインに敏感な人はコーヒー摂取が逆効果になる可能性がある
   • 胸焼けや喉の痛みなどの症状がある場合は控えめに
   • 不眠や不安、動悸の症状がある人は避けるべき
4. 豆の品質:
5. • 農薬を使用していない豆がベター
   • 栽培・加工過程で不純物の混入に注意
   • 提供時の容器にも注意（スチロール製は避ける）

栄養士のMonique Richard氏は「コーヒーを魔法の特効薬と考えないことが重要」と指摘する。健康と長寿には、人との交流や挑戦、運動など、様々な要因が関係している。コーヒーはその中の一要素に過ぎない。誰がどのような飲み方で最も恩恵を受けられるのかについても、さらなる研究が必要だ、と。もっともな意見だ。

それでもコーヒーはもっとも多くの研究で健康効果を認められている飲料の一つであり、健康的に歳を重ねていく上で心強い味方になってくれるはずだ。