そろそろクリスマス！ってことで、「どんなプレゼントを贈るのがいいですか？！」ってのはよく聞かれるところ。そのたびに、過去にNoteで書いた記事を読んでみてねーってお伝えしておりました。

ただ、この数年間でプレゼントに関する研究は思ってる以上に進展してます。というのも、パンデミックを経て人々の「つながり」への欲求が高まり、それに伴ってギフトの社会的・心理的影響への学術的関心も急速に高まってるんですよね。実際、2022年以降、ギフトに関する論文は約40%増加していたりとか。

さらに、AIやデジタルギフトの台頭によって、「最適なプレゼントとは何か？」という問いへの答えも、より複雑になってきてます。例えば、デジタルギフトカードと物理的なギフトカードでは、受け手の感情的反応が大きく異なるのでは？ってのは代表的なところでしょう。

そこで今回は、過去にお伝えしていた情報をアップデートしつつ、最新の研究から見えてきた新たな「プレゼントの法則」もご紹介できればと。

本記事を読んで、

• なぜ高価なプレゼントが逆効果になるのか？
• デジタル時代特有のギフト選びの落とし穴とは？
• 世代によって異なるプレゼントの受け取り方の違いは？
• プレゼントと幸福度の関係性における最新の発見とは？

といった点について、最新の科学的知見に基づいたヒントをゲットしていたいただければ幸いでございます。

目次

1. 値段と個数から考える最適なギフトの選び方
2. 物か体験か？
3. ラッピングの科学 - なぜ「手抜き」が効果的なのか？
4. 「タイミング」の重要性─クリスマスで満足しないで！
5. 共有がもたらす絆 【コンパニオナイズ】
6. 関係性のステージで変わるプレゼントの効果
7. プレゼントの競争効果
8. 「節約」アピールはNG
9. プレゼントの評価基準 - 贈り手と受け手の認識ギャップ
10. プレゼント贈るの忘れちった。。。

値段と個数から考える最適なギフトの選び方

プレゼントの価値は「高ければ高いほどよい」「たくさんあげた方がよい」と考えがちですが、研究によるとそれが必ずしも正しくないことが明らかになっています。

第一に、複数のプレゼントを組み合わせることについて。クイーンズ大学のMutluoglu氏らが2024年に発表した研究では、高額なプレゼントと一緒に安価なギフトを組み合わせると、むしろ全体の価値が下がってしまうことが確認されたんですな。例えば、10万円の高級バッグと500円のギフトカードをセットにすると、バッグ単体で贈った時よりも全体の印象が安っぽく感じられてしまうってわけですね。

この「プレゼンターのパラドックス」と呼ばれる現象は、プレゼント以外の文脈でも確認されています。例えば、ごみのポイ捨てに対する罰則を設計する実験では、罰金750ドルと2時間の社会奉仕活動を組み合わせた方が重い罰則だと設計者は考えたんだけど、実際に受け手は罰金750ドル単体の方をより重く感じてたぞー、みたいな感じっすね。要するに、「量」に関しては多ければ多いほど印象がリニアに良く/悪くなっていくわけではないってことですな。

第二に、プレゼントの価格について。オーストラリア・マーケティング・ジャーナルに2022年に掲載されたPark氏らの研究によると、プレゼントの金額と受け手の感謝の気持ちの間には逆U字の関係があることがわかったそう。つまり、受け手の期待値に近い価格帯のプレゼントが最も喜ばれ、安すぎても高すぎても感謝の気持ちは低下するのだ、と。

この理由として、プレゼントが安すぎる場合は贈り手の配慮が足りないと感じられ、高すぎる場合は負債感（お返しをしなければという義務感）が生まれてしまうんだ、と想定されてますね。しかも、この傾向は北米よりもアジアで顕著であることも明らかになってまして、我々はより一層気をつけなあかんですな。

実際、Journal of Personality and Social Psychologyに掲載されたShen氏らの研究でも、アジア人は北米人に比べて、知人からの小さな贈り物でさえも「お返しができない」という理由で受け取りを躊躇する傾向が強いことが示されてたりしますね。

これらの知見を踏まえると、プレゼントを選ぶ際には、

1. 複数のプレゼントを組み合わせるのではなく、1つの適切な価格帯のプレゼントを選ぶ
2. 相手の期待値を考慮し、高すぎも安すぎも避ける

といったポイントを意識することが肝要。2点目については、過去に相手がどのようなプレゼントを贈ったか、ってのを尋ねてみるのがおすすめです。例えばあなたが今彼女に渡すプレゼントで迷っているのだとしたら、その彼女が元カレにどんなもの（どのくらいの価格帯のもの）をあげたのか探ってみるのが良いでしょう。直接聞かなくても、彼女の友達とかに尋ねてみるのもあり。

物か体験か？

一般的に私たちが「もの」をプレゼントとして贈る傾向にあるのは周知のとおり。実際、トロント大学のChan教授らの研究によると、直近のギフトについて78%の人が物質的なプレゼントを選んでいたことが分かっていたりしますね。しかし、これは必ずしも最善の選択ではないかもよーってのは、プレゼント選びの際には意識しておいた方がよさげです。

なぜなら、「体験」を贈る方が、関係性をより強化できるんじゃない？ってデータが最近増えてきているんですよね。例えば、Journal of Consumer Researchに掲載された研究では、体験型ギフト(コンサートのチケットやスパの予約など)が、物質的なギフト(服や家電など)と比べて、より強い関係性の向上をもたらすことが示されてたりしますね。

この効果が生まれる理由として、以下の3つが挙げられてます。

1. 感情的インパクト：
   体験型ギフトは、物質的なギフトよりも強い感情を喚起することが分かっている。特に、ギフトを「消費」している最中の感情的な反応が、体験型ギフトの方が圧倒的に強い。例えば、財布を使用する時よりも、コメディショーを観賞している時の方が、はるかに強い感情が喚起されるのはイメージしやすい話。
2. 記憶への定着：
   The Journal of Positive Psychologyに掲載されたLiらの研究によると、体験型の支出は双方の関係性の幸福度と強く結びついていたが、必需品などの物質的な支出にはそのような効果は見られなかった。これは体験が長期的な記憶として残りやすいためと考えられる
3. 負債感の軽減：
   2024年にMutluogluらが発表した研究では、高額な物質的ギフトは受け手に「負債感」を感じさせやすく、それが関係性にネガティブな影響を与える可能性があることが示された。一方で、体験型ギフトはそのような負債感が比較的小さいことが分かっている。

こうやって説明されると確かに体験型のプレゼントの方がいいかもなーって気がしてくるんじゃないでしょうか。

とはいえ、旅行やディナーなどの体験型ギフトを贈るのには抵抗感を感じる人がいることも事実。その場合は、以下のような工夫で「体験的要素」を物質的なギフトに組み込むのがおすすめされてたりします。

• 思い出に紐づいたギフト：一緒に行ったコンサートのアーティストグッズなど
• 感情を喚起するメッセージを添えたギフト：ジュエリーに刻印を入れるなど
• 継続的な体験を提供するギフト：毎日めくるカレンダーやサブスクリプションなど

結局、プレゼントの価値は「モノとしての価値」よりも、「感情的な体験としての価値」の方が重要。その意味で、たとえ物質的なギフトを選ぶ場合でも、いかに感情的な体験や思い出に結びつけられるかを考えることが、良好な関係性を築くためのカギとなるはずであります。

ラッピングの科学 - なぜ「手抜き」が効果的なのか？

「プレゼントはきれいにラッピングした方がいい」というのは、多くの人が持つ常識でしょう。しかし、ネバダ大学のRixomらの研究では、この常識を覆す興味深い発見をしています。丁寧なラッピングは、むしろプレゼントへの満足度を下げる可能性があるというんですな。

なぜこのような逆説的な現象が起きるのか？研究によると、その理由は「期待値のマネジメント」にあるんだそう。現在までに分かっているポイントをまとめてみましょう。

1. 期待のギャップ：

• きれいなラッピングは高い期待値を生む
• その結果、開封時の実際の満足度が相対的に低くなる
• 一方、やや雑なラッピングは期待値を抑え、開封時のポジティブな驚きを生む

2．状況依存効果：
2024年の研究では、ラッピングの効果が、贈り手と受け手の関係性によって大きく変わることを示している

• 親しい間柄（家族・友人）：
• • 適度に雑なラッピングの方が効果的
  • カジュアルさが親密さを表現する
• 距離のある関係：
• • 丁寧なラッピングが重要
  • パッケージのデザインが関係性への配慮を示す指標となる

3．デジタル時代のラッピング：
さらに、デジタルギフトの台頭により、ラッピングの概念も変化している。CSCWの研究によると、

• デジタルギフトは物理的なラッピングがないため、「贈り物感」が薄れやすい
• その代わり、デジタルな「演出」が重要になってきている（例：アニメーション効果、パーソナライズされたメッセージなど）

以上を踏まえると、実践的なアドバイスとしては以下のような要素を意思しておくのが良いでしょう。

• 関係性に応じた調整を：
• • 親しい間柄：完璧を求めすぎない
  • フォーマルな関係：丁寧なラッピングを心がける
• 期待値のコントロール：
• • 過度に豪華なラッピングは避ける
  • 中身で驚かせることを意識する
• デジタルギフトの場合：
• • メッセージや演出で「贈り物感」を出す工夫を
  • タイミングや表現方法にこだわる

このように、最新の研究では「ラッピング＝丁寧なほどよい」という単純な図式ではなく、関係性や状況に応じた柔軟な対応の重要性を示唆しているわけっすね。完璧なラッピングを目指すのではなく、贈り手と受け手の関係性に合わせた、適切な「期待値のマネジメント」を心がけることが、プレゼントの効果を最大化するカギとなるんじゃないかと。

「タイミング」の重要性─クリスマスで満足しないで！

「記念日やイベント時のプレゼント」と「何気ない日のプレゼント」、どちらが関係性を深めるのに効果的でしょう？最近の研究では、意外にも後者の方が効果的なのでは？ってことを示唆していたりします。

1. 予期せぬギフトの効果：

European Journal of Marketingに掲載されたHwang & Chuの研究によると、予期せぬプレゼントは以下の理由で効果的と、結論付けています。

• 期待値のゼロリセット効果：
• • 特別な日：プレゼントの「質」で評価される
  • 普通の日：プレゼントの「存在自体」が価値となる
• 感情的なインパクト：
• • 予想外の嬉しい出来事として記憶に残りやすい
  • 相手への思いやりの表現として受け取られやすい

2．ネットワーク効果：

さらにBranco-Illodoらの研究(2023)は、ギフトの効果が「関係性のネットワーク」によって異なることを示してます。

• 親しい仲の場合：
• • 日常的な関係の中での自然な贈り物が効果的
  • 定期的なギフト交換よりも、spontaneousな贈り物の方が印象に残る
• そこまで親しくない中の場合：
• • フォーマルな機会でのギフトが適切
  • 儀式的な要素が重要

3．感情のバランス：

やっぱりプレゼントにおいて大事なのはどんな感情を抱くか、というポイントなのは間違いなし。Psychology & Marketingに掲載されたRuthらの研究によると、

• 感情の総量よりも、ポジティブ/ネガティブ感情のバランスが重要
• 予期せぬギフトは、より純粋なポジティブ感情を引き出しやすい

4．性別による違い：

Jonasonらの研究は、ギフトを贈る動機の性差を明らかにしていて、特に異性にプレゼントを贈る際には、相手がどんな動機を大事にしているのかを把握しておくべき。

• 男性：関係性の発展や維持を意識
• 女性：純粋な思いやりの表現として

以上を踏まえて、実践的なアドバイスとしてまとめておきましょう。

• 機会の創出：
• • カレンダーの予定に縛られない
  • 相手の小さな成功や頑張りを見逃さない
• サプライズ性：
• • 完璧な準備より、タイミングを重視
  • 小さな気遣いの積み重ねを大切に
• コンテキストの活用：
• • その時々の状況に合わせた選択
  • 相手の置かれている文脈を理解

確かに周りを観察してみると、モテるヒトとか、友達の多い人って、小さいきっかけを見つけてプレゼント送ってたり、そもそも何でもない日にいきなりプレゼント送ってたりするなーって気はしますが、その辺もデータで裏付けられてきてるってわけですな。要するに、プレゼントの価値は、モノとしての価値だけでなく、「いつ」「どのような文脈で」贈られたかによって大きく変わるのだ、と。

ってことで、相手との関係性を深めたいのであれば、記念日やイベントごとの日だけでなく、日常の中で相手を思いやるちょっとした贈り物を意識してみるとよさげ。それは必ずしも高価なものである必要はなく、むしろ「予想外の嬉しさ」をもたらす小さな気遣いの方が、より大きな効果を生む可能性があるってことは覚えておいていただくとよろしいのではないかと。

共有がもたらす絆 【コンパニオナイズ】

プレゼントは相手にあげるだけでなく、自分も同じものを使ってみるといいぞーってのもやや意外なポイントかもしれません。

これは専門的には「コンパニオナイズ」と呼ばれてまして、ウィスコンシン大学のPolman & Maglioの研究によると、プレゼントの贈り手が受け手と同じアイテムを自分のためにも購入する行為によって、

• 贈り物への好感度が向上
• 贈り手への親近感が増加
• 関係性の強化につながる

ってなことが分かったんだそう。面白いっすねぇ。なぜ効果があるのか？って点については、以下の3つのメカニズムが明らかになってきています。

a) 共有による心理的距離の縮小：

• 同じものを持つことで生まれる心理的な結びつき
• 「mere similarity effect」（単なる類似性効果）の一種

b) 自己開示効果：
Simon Fraser大学のAknin(2019)の研究によると：

• 贈り手の趣味や好みの共有につながる
• 相互理解の深化をもたらす

c) リレーショナル・シグナリング：
Ward & Broniarczykの研究は、この効果が特に親しい間柄で強く現れることを示していて、コンパニオナイズにより、

• 関係性の表現としての意味を持つ
• 相手への理解の深さを示すシグナルとなる

ってなわけで、「相手が何を欲しいかわからん！！」って迷った場合には、迷走した挙句わけわからんプレゼントをあげてしまうよりも自分が好きなものを送る、ってのは意外といい戦略かもしれませんな。

研究者がおすすめする実践のポイントもまとめておきましょう。

a) タイミングが重要：

• 同時購入が最も効果的
• 事後報告よりも事前共有が望ましい（プレゼントを贈るときまでに自分が使っていて気に入っていることを伝える）

b) コミュニケーションの工夫：

• 単なる推薦や評判の共有では不十分（これいいらしいよ、では△）
• 個人的な体験や感想を添えることが重要

c) 選び方のコツ：

• 自分自身が本当に欲しいと思えるものを選ぶ
• 相手の好みを無理に推測しない
• 自然な共有が可能なアイテムを選ぶ（付き合ってもないのにいかにもカップルみたいなのは×）

とはいえ、この戦略は基本的にはある程度の関係性が構築されている相手にのみ使用するのが無難でしょう。実際、関係性の薄い段階でこの戦略を使うと、「ナルシスト」「怠慢」「利己的」と評価されてしまう確率が高い、って報告もあったりするんで。

まあ結局、この効果が有効なのは、「同じものを持つ」という事実だけでなく、その過程での自己開示やコミュニケーションを通じて、より深い関係性の構築につながるから、ってのは理解しておくべきでしょう。この視点があれば、プレゼントを選ぶ際に、「相手が喜ぶもの」を探すだけでなく、「一緒に楽しめるもの」「共有できる体験」という視点も取り入れることができる結果、より効果的な贈り物となる可能性が高まるはずなんで。

関係性のステージで変わるプレゼントの効果

当然ながら、プレゼントの効果は、贈り手と受け手の関係性のステージによって大きく異なることは、最近の研究でも示されてきてますね。大きく3段階に分けて確認してみましょう。

1. 初期段階（初対面・顔見知り程度）：

Journal of Consumer Marketingに掲載されたPusaksrikit & Chinchanachokchai(2022)の研究によると：

• リスク：
• • 過度なプレゼントは打算的と評価される危険性
  • むしろマイナスの効果をもたらす可能性
• 効果的なアプローチ：
• • 慎重な境界設定
  • 低リスクな贈り物を選択
  • 相手の立場や文化的背景への配慮

2．中期段階（それなりに長く付き合っている仕事上の知り合い程度）：

ACR North American Advancesに掲載されたGoodman & Limの研究では、以下のようなポイントが示唆されている。

• 物質的なギフトの有効性：
• • 実用的な価値が評価される
  • 関係性の深化に貢献
• 意思決定者への配慮：
• • 決定権を持つ人への直接的なアプローチが効果的
  • 組織的な文脈を考慮することの重要性

3．深い関係性の段階：

Journal of Marketing Researchに掲載されたWard & Broniarczykの研究によると、ここまで信頼できる関係を構築できている段階では、

• 親密さを示すシグナリング：
• • 相手の好みからの意図的な逸脱も効果的
  • 感情的な価値が重視される
• 経験的ギフトの重要性：
• • 物質的なものより体験の共有が効果的
  • 長期的な関係性の強化につながる

って感じ。初期段階ではある程度慎重に、関係性が深まるにつれて「個人的な理解の表現」を重要視しておくのが無難っすね。とはいえある程度の差別化もしかないと完全に忘却の彼方に飛んで行ってしまうケースもあるのでバランスが難しいんですがね。。。

プレゼントの競争効果

クリスマスパーティーや誕生日パーティーみたいに、複数人がプレゼントを贈る場面で何を送るか？は結構難しい問題でしょう。自分だけあまり安いものを送ったら幻滅されるんじゃないかな。。。とかは分かりやすい例でしょう。

この点については、贈り手と受け手の認識には大きな差があることが、北京大学の研究チームによる2019年の実験で明らかになってます。この研究では、2人の贈り手と1人の受け手による実験を行ったんだそうな。

その結果、どんなことが分かったかといえば、

1. 贈り手のジレンマ: プレゼントの競争状況では、贈り手は平均で40%以上高額なプレゼントを選ぶ傾向があった。つまり他の贈り手との比較を意識して、必要以上に価格を上げてしまいがちということ。
2. 受け手の評価: しかし興味深いことに、受け手は各プレゼントを独立して評価し、プレゼント同士を比較することはほとんどなかった
3. なぜ起こる？: 研究チームは、この現象が2つの要因で起きていると指摘
4. • リソースの制約：限られた時間や注意力の中で、高額なプレゼントにより注目が集まる
   • 心理的な選好の変化：受け手が無意識のうちに、より価値の高いプレゼントを贈った人への好意を強めるのではないか、というステレオタイプ

一対一でプレゼントを渡すよりも高額なものを渡せば喜んでもらえる！って思うけども、実際にはそんなことないんよーってわけですね。贈り手と受け手の立場を入れ替えると同一人物でもその認識を忘れてしまうんだから面白いもんです。

さらに、カーネギーメロン大学のGalakらの2015年の研究では、贈り手が「自分の独自性を示したい」という動機から、必ずしも受け手にとって最適ではないプレゼントを選ぶ傾向も指摘されています。要するに、印象に残したい！って思いから別に相手が全くほしくないものを送ってしまう傾向があったんだ、と。高いし別にほしくないしってなったら悲しい話ですね。。

てなわけで実践的なアドバイスとしてまとめてみると、

• プレゼントを選ぶ際は、他の人のプレゼントとの比較を意識しすぎない
• 代わりに、受け手の立場に立って考えてみる
• プレゼントの価値は金額だけでなく、その人との関係性や思いやりによって決まることを忘れない

ってあたりでしょうか。パーティー等でプレゼントを渡す用事のある方は意識しておいていただくとよろしいのではないかと。

「節約」アピールはNG

プレゼントを贈る際に「これ使うとお金の節約になるよ！」って伝えるのはNG。これも意外な落とし穴だったりするんで、注意しといたほうがいいでしょう。

例えば、オハイオ州立大学とハーバードビジネススクールの共同研究（N=1,816）では、「節約」を強調したプレゼントが受け手に与える影響を詳しく分析してます。その結果、

• 時間の節約を強調したプレゼント → 好意的に受け取られる
• お金の節約を強調したプレゼント → ネガティブな感情を引き起こす

ってことがわかったらしい。同じプレゼントを贈るにしてもどの点を強調するかによって受け取り方が正反対になるってのは面白いっすね。ちなみにこの実験では、実際に経済的な困難を抱えている人ほど、お金の節約を意図したプレゼントに対してより強いネガティブな反応を示していたそうなんで、特に気を付けるべきシチュエーションも分かりやすいっすね。

では、なぜ経済的配慮が裏目に出るのか？ってポイントについては、北京大学の研究チームの2019年の実験が参考になりまして、大きく2つに分解できるでしょう。

1. ステータスの認識: 受け手は、経済的な配慮を「自分のステータスを低く見られている」というメッセージとして受け取る
2. 社会的距離: プレゼントの金銭的価値を強調することで、人間関係の親密さが損なわれる

まあどっちもありそうよなーって感じっすね。

ってことで、実践的には「何をあげるか」と同時に「どんな言葉を添えるか」まで気を付けようぜってことで、いくつか具体的な例も挙げておきましょう。

❌ 避けるべき表現：

• 「これで節約できるよ！」
• 「お金の管理に役立つと思って…」

⭕ 推奨される表現：

• 「あなたの生活がより便利になればと思って」
• 「あなたの時間を大切にしてほしくて」

ついでに、2023年の研究では、プレゼントにお金の節約的な意味合いを持たせる場合、以下の点に注意しようぜってのが示唆されてたのでこちらもシェアしておきます。

• 受け手の自尊心を考慮する
• 実用性を強調する場合は、時間的価値に焦点を当てる
• 金銭的価値について言及する場合は、それを関係性の文脈で表現する

このように、経済的配慮を含むプレゼントは、その伝え方次第で、関係性を深めることも、逆に損なうこともある、両刃の剣なんだぞーってことで。

「これあげたら驚くかな」で選ぶリスク

最新のメタ分析（Psychology & Marketing誌、2024年）により、プレゼントを選ぶ際の贈り手と受け手の認識の違いが、これまで考えられていた以上にデカいぞ！ってことが報告されていたりしまして、改めて「どうやってプレゼントを選ぶか？」の選択基準は考え直しといたほうがいいいなーと感じております。

ざっくり言えば、贈り手と受け手では、以下のような対照的な評価基準を持っていることがわかったんだそう。

贈り手側の価値基準：

• 開封時の驚きや感動
• 目新しさや珍しさ
• 即時的な反応（笑顔など）

受け手側の価値基準：

• 長期的な有用性
• 実用的な価値
• 日常生活での活用度

要するに、プレゼントを贈る際、贈る側はこれをあげたらどんだけびっくりしてくれるかな？を基準に選ぶんだけど、実際にもらう人は驚きはあまり大事じゃなくてどれだけ「使えそうか？」を基準にプレゼントの価値を決めがちである、ってわけですね。似たような現象は上述しましたけど、同じ人でも贈り手の立場の時と受け手の立場の時で判断軸が異なってしまうというんだから面白いっすね。

では、なんでこんなギャップが生じちゃうのかしら？って点については、カーネギーメロン大学のYangとUrminskyの研究が参考になります。ざっくりまとめると主に以下の2点が原因じゃないか、と。

1. 時間的視点の違い：

• 贈り手：プレゼントを渡す瞬間に焦点
• 受け手：プレゼントを使用する将来に焦点

2．構築レベル理論による説明：
Journal of Consumer Researchの研究で指摘されている通り、具体と中小視点の違いが影響している可能性がある。

• 贈り手は抽象的な理想（desirability）を重視
• 受け手は具体的な実現可能性（feasibility）を重視

どちらの説明も言われてみればなるほどねーって感じがしてきますな。立場が変わるだけでここまで判断軸が変わっちゃうってことで、ちゃんとプレゼント選びの時にはちゃんと基準は意識しときたいっすね。

ちなみに、上記のメタ分析では、以下の興味深い発見も報告されてます。

• プレゼントの価値は、開封時の反応よりも、使用期間中の満足度との相関が高い
• 実用的なプレゼントは、関係性の強化により効果的
• 驚きの要素は、適度な程度であれば価値を高めるが（効果量としても中程度位）、行き過ぎると逆効果になることがほとんど

てなわけで、これらの知見を踏まえて実践的なアドバイスにまとめておくと、

✅ TODO：

• プレゼントの長期的な使用シーンを想像する
• 相手の日常生活での実用性を考える
• 適度な驚きと高い実用性のバランスを取る

❌ NOT TODO：

• 開封時の反応だけにフォーカスする
• 実用性を無視して目新しさだけを追求する
• 自分の価値観を相手に押し付ける

って感じでしょうか。プレゼント選びでは、開封時の感動・驚きだけでなく、その後の長期的な価値も考慮しようぜってことで。

プレゼント贈るの忘れちった。。。

人生、失敗はつきもの。プレゼントを渡し忘れてしまうなんてことも時にはあるでしょう。

しかし、オハイオ州立大学の最新研究（Journal of Consumer Psychology, 2024）では、遅れてしまっても気づいてからそのあとプレゼント贈ればそこまで深刻な問題にはならないぞ！みたいな話になってて安心します。

送り忘れた側からすると気づいた瞬間からめちゃくちゃ焦りますが、プレゼントの「遅れ」についても贈り手と受け手の認識には、大きな違いがあるらしいんですな。

実際、この研究では、誕生日プレゼントが2週間遅れるシナリオを用いた実験を実施。贈り手は関係性への悪影響を過度に心配する一方、受け手はそれほど気にしていないことが判明したらしい。

さらに、研究ではいろいろ面白いことがわかっていて、

• 贈り手は遅れを「相手への関心の低さ」のシグナルと捉える
• 受け手はそのような否定的な解釈をしない傾向がある
• 手作りや個人的な要素を加えることで、遅れの印象を和らげられる

だったそうで、まあそこまで大した問題にはならないのかもなーとか思いましたね（もちろん真摯な謝罪とかは必要でしょうが）。

さらにこの研究ではどのくらい遅れても大丈夫なんだろうか？ってことで研究チームは以下の遅れのパターンを検証：

• 2日遅れ
• 2週間遅れ
• 2ヶ月遅れ

その結果、遅れが長くなるほど関係性への悪影響は大きくなるものの、どの場合も受け手は贈り手が心配するほどネガティブには感じていなかったらしい。2か月遅れても、思ってるほどではないってのは面白いっすね。

最後に、この研究で最も重要な発見は、「プレゼントを贈らないこと」は「遅れて贈ること」よりも関係性にはるかに深刻な悪影響を与えるという点。遅れちゃってもいいから、気づいた瞬間速攻準備して謝罪とともにプレゼント渡しましょうねーって話ですな。「遅れを過度に気にして贈るのを諦めないこと」ってのは結構大事なのかもですねー。贈らないって方が関係性にとって最大のリスクなのである、ってのは覚えておいていただくとよろしいのではないかとー。

以上、気になるポイントがあればコメント、DM等までお問い合わせいただければと。ではまたー。