カフェインの摂取量と摂取タイミングが睡眠に与える影響についての2024年の研究が参考になったので共有する。コーヒーを定期的に飲む方には気になる話ではなかろうか。
これはオーストラリアのカソリック大学の研究チームが発表した論文で、成人男性23名を対象に、カフェインの用量とタイミングが夜間の睡眠にどのような影響を及ぼすかを詳細に調査している。
研究デザインは、プラセボ対照二重盲検ランダム化クロスオーバー試験という、信頼性の高い手法が採用されている。被験者は全員、1日のカフェイン摂取量が300mg未満の中程度のカフェインを飲む人たちだ。実験では、カフェイン100mgまたは400mgを就寝12時間前、8時間前、4時間前のいずれかのタイミングで摂取し、その後の睡眠の質を測定した。測定項目は以下の通り。
かなり丁寧なデザインとなっていて、説得力もありそうだ。
さて、主な結果は以下の通り。
要するに、「一杯のコーヒー程度なら就寝4時間前まではOK。しかし、高用量のカフェインは朝一番でも要注意」といったところだ。
特に気になった点は、下のグラフが示すように、400mgのカフェイン摂取が睡眠に及ぼす影響は時間依存的であることだ。就寝12時間前の摂取でも、総睡眠時間や深睡眠の割合に影響が見られる(赤線で示された400mgの条件を見てほしい)。
400mgのカフェイン摂取が睡眠に及ぼす影響は時間依存的
私も以前、カフェインの一日摂取量の上限について記事を書いていたが(一日400mgまでが目安)、今回の研究はそれに「タイミング」という新たな視点を加えるものだ。朝一番のコーヒーでも、高用量であれば夜の睡眠に影響する可能性があるという知見は、日々の生活に直接関わる重要な示唆と言えよう。直感的にも理解しやすい話だし、実際にこの手のアドバイスをしている人もいるが、丁寧なデザインでこの結果ならある程度信用してもよさそうではないかと感じた。
改めてコーヒーとの付き合い方について指針をまとめておく。
「もうクリスマスが来た!」「つい数日前に去年の誕生日パーティーをしたばかりだと思ったのに」と、時間の流れの速さを感じたことがあるだろう。私もイベントごとのたびに感じる。
この点、リバプール・ジョン・ムーア大学の研究グループが興味深い研究結果を発表し、その「謎」にヒントを提供してくれていた。
この研究では、イギリスとイラクで、それぞれクリスマスとラマダンに関する時間感覚の調査を実施した。イギリスでは789名、イラクでは621名の参加者を対象に、「年々クリスマス(またはラマダン)が早く来るように感じるか」を質問。その結果、イギリスでは76%、イラクでは70%の人が「そう感じる」と回答している。要するに、この感覚は文化や宗教を超えて普遍的なものだということだ。
では、なぜこのような感覚が生まれるのだろうか? 研究では、以下のような関連性が明らかになった
一方で、意外な発見もあったりする。「年をとるほど時間が早く過ぎる」という一般的な認識に反して、年齢と時間の速さの感覚には明確な関連性が見られなかったのだ。イラクでは、むしろ若い世代の方が時間の経過を速く感じる傾向があったほどである。
この研究結果を踏まえると、年末年始やお盆といった年中行事が「早く来る」と感じるのは、以下のような要因が関係していると考えられる
研究チームは、「時間の歪みは、単なる主観的な感覚ではなく、記憶力や時間への意識、感情といった心理的要因と密接に関連している」と結論付けている。こうやって見ていると、私たちの「今年も早かったな」という感覚も、(少なくとも部分的には)操作できる可能性がある。私はあまり気にならないが、「あっという間だった」という感覚にストレスを感じるようであれば、より長期の予定を意識する、時間を忘れてぼーっとする時間を設ける、といった対策も有効かも?しれない。お試しあれ。
もう一つコーヒーネタ。
以前、コーヒーの健康効果をまとめた通り、コーヒーには「総死亡率の低下」「がんリスクの低下」「神経系疾患リスクの低下」といった様々なメリットがあることがわかっている。私が(別にそこまで好きではないけど)定期的にコーヒーを飲んでいる理由もその効果にあったりする。今回、「がんリスク低下」効果について新たに信頼性の高いデータが出ていたのでシェア。
特に、今回の大規模研究では、コーヒーが「頭頸部がん」のリスクを下げる可能性を示していた。またまたうれしい内容だ。
オーストラリアのカソリック大学を中心とした研究チームが、14の症例対照研究のデータを統合して分析。合計9,548人の頭頸部がん患者と15,783人の対照群を対象に、コーヒーとお茶の摂取量とがんリスクの関係を調べた。
その結果、コーヒー・お茶の摂取と頭頸部がんリスクとどんな関係があったかといえば、
要するに「コーヒーを適度に飲む習慣があると、頭頸部のがんリスクが大きく下がる可能性が高い」という話だ。
コーヒーやお茶に含まれるポリフェノールやその他の生理活性物質には、抗酸化作用や抗がん作用があることはご存じの通り。今回の研究結果は、これらの成分が頭頸部の細胞を守る働きをしている可能性も示唆しているというわけだ。
面白いのは、カフェインレスコーヒーでも予防効果が見られた点だ。これは「カフェイン以外の成分も重要な役割を果たしている」ことがすぐわかる。つまり、カフェインが気になる人でも、デカフェで同様の効果を期待できるかもしれない。苦手な人には朗報だろう。
というわけで、普段コーヒーを飲まない人も、この機会に1日1-2杯から始めてみるのはどうだろうか(タイミングは上述の通りだ)。コーヒーが苦手な場合はお茶でも、特に下咽頭がんのリスク低下に関して同様の効果が期待できる。ただし、1日1杯以上のお茶摂取は喉頭がんのリスクを増加させるという報告もあるので妄信はできないが。