本ニュースレターにご興味をもっていただきありがとうございます!このニュースレターでは、中国清華大学大学院に留学中でありサイエンスライターなどをこなす筆者が、科学的知見をベースにあなたの人生の道しるべを提案します。
最近では「検索エンジン、AIの発達で各人が欲する情報に容易にたどり着けるようになった!」などと言われますが、実際にはテキストの複雑さが低い、つまり平易な文章ばかりが表示されるし、プロンプトによらず結局最小公倍数的な情報が提供されるようになってるしでニッチで深い情報にたどり着くための道のりはむしろ長くなってしまっているのが現状だったりします。
もちろんAIはなんでも知っているけれど、それと同時に大多数の人がニッチで深い情報には興味を示さないことも知っています。だからAIはあえてニッチ情報を提供せず、結局情報の濁流の中で「より信頼でき、本当に価値ある情報」にたどり着くのは一層困難になっているというわけ。そこで本ニュースレターは検索エンジン、AIからは辿り着けない「ニッチ」な科学的知見をニッチなあなたに毎週お届けします。もちろん万人に受ける内容だとは思っていませんが、あなたの人生を彩るヒントとしてご活用いただければ幸いです。少しでもご興味があればぜひ購読してください(無料です)。
ってことで今回は「結局何が風邪に効くの?」のエビデンスをまとめておきます。「〇〇を食べると風邪に効く!」みたいな話はよく聞きますけど、実際にはほとんど実証されていないものも多いですからねー。
今回は15個ほど「風邪に効く(と噂されている)もの」を取り上げましたけど、さらに気になるものがあればコメントなどでお知らせください。さらにリサーチをかけて共有させていただきますのでー。
ちなみに、米国では風邪による経済的生産性の損失、医療費、医薬品、サプリメントへの支出を合わせると、年間400億ドル以上のコストがかかっていると推定されてたりして、風邪って社会的なインパクトもかなりでかいんですねー。
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本ニュースレターでも過去に幾度か紹介してますが、亜鉛サプリは風邪対策としてかなり優秀。
実際にメタ分析のデータを見てみるとこんな感じです。
って感じで、摂取量、摂取頻度、製材によって多少のばらつきはあるものの、子供大人問わず亜鉛サプリやトローチが風邪の予防、回復に効果的と言いってよいでしょう。ただし、亜鉛の経口摂取では、吐き気や味覚異常などの副作用リスクがちょいとあるのでその点は注意です。
一方、亜鉛の点鼻薬については、有意な効果は見られなかった!ってメタアナリシスがある一方、嗅覚障害などの重大な副作用の可能性があるため、現時点ではおすすめできません。おとなしく口から摂取するのがよいんじゃないでしょうかー。
ビタミンDもよく「風邪に効く!」と言われる成分の代表例でしょう。ビタミンDは骨の健康に重要な栄養素として知られていますが、免疫機能にも重要な役割を担ってるんですよね。
一応風邪との関連についてはメタアナリシスも発表されていて、特にビタミンDが不足している人の場合は、ビタミンDサプリが上気道感染症の予防に役立つエビデンスがある!ってなことが示されてます。
ただし、個々の研究では結果にばらつきがあって、例えば、
といった感じで「一貫した有益性はない」と結論付けてるレビューもあったりします。これはおそらくベースラインのビタミンD濃度、投与量、期間が関係していると考えられまして、万人に効くって言える段階ではないでしょうな。予防のために摂取するなら、NHSのガイドラインに従って1日10 µgくらいがよろしいのではないかと。
ビタミンCといえば、かのライナス・ポーリング博士が大々的に風邪予防効果を主張して以来、イメージが強いですな。ところが、大規模な研究ではビタミンCの効果について疑問符が付いているのが現状。
2013年にコクラン共同計画が発表したメタ分析では、ビタミンCサプリによる風邪予防効果は限定的との結論してたりとかするんですよね。
さらに2018年のレビューでも、やはりビタミンCに風邪予防効果はないことが確認されてて、もうちょいRCTが必要かなーって段階ではあるものの、そこまで積極的にお勧めはしてないですね。
エキナセアはハーブの一種で、古くからネイティブアメリカンが風邪や感染症の治療に用いてきたことで有名。免疫力を高める効果が期待されており、現在でもサプリメントとして人気がありますな。しかし、エキナセアの風邪予防効果については、科学的なエビデンスが乏しいのが現状。
例えば2014年に発表されたシステマティックレビューでは、エキナセアのサプリが風邪予防に役立つかどうかを調べるため、2件のRCTの結果が検討されてて、その結果、エキナセアを摂取した群とプラセボ群の間で、風邪の発症率に統計的な差はなかったそう。
また、風邪の回復に対するエキナセアの効果を調べたシステマティックレビューでは、14件のRCT(合計2,090人)の結果を分析したところ、一部の研究ではエキナセアによる症状の改善が示されたものの、全体として結果に一貫性はなかったらしい。
まあ重大な副作用が報告されているわけではなくて安全性は高いハーブですけど、風邪予防・回復の効果はクエスチョンマークってところですね。
ハチミツは「vs風邪」の文脈においてなかなか有望。
例えば2018年に発表されたコクランレビューでは、蜂蜜が子供の咳の症状を和らげるのに役立つぞ!って内容になってたりします。レビューでは6つのRCTの結果が分析されていて、結果は、
だったらしい。2021年の別の研究でも、蜂蜜が上気道感染症の症状改善に他の一般的な治療法より効果的だった!って結果が出ていたりしますね。
これはハチミツの抗酸化作用と抗菌作用のほか、粘膜に薄い膜を作ってくれる効果が主な原因と考えられてまして、この効果を最大限に引き出すために「大さじ1杯の蜂蜜をカップ1杯のお湯か紅茶に入れてかき混ぜて飲む」のがおすすめ。ただし乳児はボツリヌス症に感染する危険性があるため、生後12ヶ月未満のお子さんにはくれぐれも飲ませないようご注意くださいませ。
プロバイオティクスも亜鉛と同じくらいのエビデンスが示されてきてます。
2014年に発表されたシステマティックレビューでは、10件のRCTの結果が分析されてて、結果、プロバイオティクスの摂取で、
といった効果が見られたそう。具体的にはレビューの中で質の高い2つのRCTを見てみると、
といった結果が得られていますね。ただし、菌の種類、組み合わせ、量(コロニー形成単位)とかがばらばらで、特にどれが効いているのかはまだはっきりしていないところ。なんで今後の研究にも注目する必要はあるものの、ヨーグルトや乳酸菌サプリを上手に活用できれば風邪の発症リスクを下げる効果は十分期待できそう。
高麗人参といえば、疲労回復や滋養強壮に効果があるとされる伝統的なハーブ。風邪の予防にも役立つのでは?って主張もありますけど、実際には現時点で一貫したエビデンスはなし。
2011年に発表されたメタアナリシスでは、5つのRCTの結果が分析されていて、北米産の高麗人参エキス(COLD-FXブランド)を使用した4つの試験と、アジア産の高麗人参エキス(Ginsana G115ブランド)を使用した1つの試験が含まれてます。
その結果、高麗人参を摂取した群とプラセボ群の間で、風邪の発症率に有意な差はなし(相対リスク0.70、95%信頼区間0.48〜1.02)。また、試験間での結果の不一致も目立ってますね(異質性I2=68%)。
また、3〜12歳の小児を対象とした質が高めのRCTでも、高麗人参の風邪予防効果は認められていなかったりして、「科学的根拠は乏しい」というのが現状っすね。
ニンニクも抗菌作用や免疫力アップなどが有名でしょう。
ニンニクサプリメントの風邪予防効果を調べたRCTでは、146人の参加者をアリシンを含むニンニクカプセルまたはプラセボ(1日1回)のいずれかに無作為に割り付け、12週間摂取。結果、ニンニク介入群では風邪の発症が24回であったのに対し、プラセボ群では65回だったらしい(P < 0.001)。
ただしこの試験は自己報告に依存してたりしてデータの質はいまいちだし、ほかの試験も少ないんで、現時点での効果は「効くかもしれないけど正直わからん」って感じ。もうちょい大規模なデータが待たれるとこですな。
一般的な薬の効果も確認しておきましょう。まずは最も手軽に手に入るイブプロフェンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)から。
2015年に発表されたコクランレビューでは、9件のRCTの結果が分析されてます(合計1,069人の成人)。
その結果、NSAIDsを使用しても、
一方で、NSAIDsには以下のような効果が示唆されました。
つまり、NSAIDsは風邪に伴う「痛み」にはおおむね効果が期待できるものの、それ以外の症状の改善には役立たないってとこで「万能薬」と勘違いしちゃあかんよーと。
また、NSAIDsを使用した群では、胃腸障害などの副作用が増える傾向も見られていて(リスク比2.94、95%信頼区間0.51〜17.03)、統計的に有意ではないものの、注意が必要なポイントと言えるでしょうね。
お次は解熱鎮痛薬として使われるアセトアミノフェン(パラセタモール)。
2件のRCTを含むメタアナリシスによると、
という結果が示されていますね。
また、副作用については、アセトアミノフェン群で発汗などの症状がやや多く見られたものの、いずれも軽度〜中等度の事象だったそうです。
2015年に発表されたコクランレビューによると、
一方、抗ヒスタミン薬と充血除去薬や鎮痛薬などとの併用については、もう少し良い結果が得られていて、27件のRCTをまとめたメタアナリシスでは、
といった結果が示されてます。ただ、解析に含まれた研究の質にはばらつきがあり、結果の解釈には注意すべきでしょう。
あと、発症時期による違いにも注意で、1日目、2日目は症状の重症度が改善した一方、3日目以降は改善効果は見られず、眠気などの副作用リスクのみ増加した、なんて話もあったりとかするんで、あくまで初期にスポット的に使用するのが吉。
お湯で濡らしたタオルを顔に当てて蒸気を吸入するのがよい!みたいなやつですね。粘液の排出を促したり、ウイルスを破壊したりする効果があるのだ!ってのが彼らの主張らしい。
しかし、2017年に発表されたコクランレビューでは、レビューに含まれた6つの研究(387人)を分析した結果、
って結論になってて、別に止めはしないけど風邪治療の決め手にはならんだろうなーってところ。
風邪の予防には、部屋を暖かくしておくことが大切だと言われますな。この点については2020年に発表された分子生物学の観点からの研究が面白いです。
ここでは米国ノースイースタン大学の研究チームは、ボランティアの鼻腔から採取したサンプルを、37℃と、屋外の寒い環境を想定した32℃で培養。
すると、37℃の条件下では、鼻の細胞から分泌される「細胞外小胞」が、ウイルスの侵入を直接阻止する「おとり」として機能することが判明。一方、32℃の低温環境下では、この細胞外小胞の分泌量が減少し、ウイルス防御の「網の目」が粗くなっていたらしい。
実際、インフルエンザやコロナウイルスを用いた実験でも、低温ではウイルスの感染が広がりやすくなる様子が確認されたんだとか。
まあこれは基礎研究の段階ではあるものの、温度とバリア機能の関連が次第に解明されてきてる感じですね。
日頃から適度な運動を続けることは、免疫力を高めて風邪を予防するのに役立つ!みたいなことはよく言われますな。
2006年に発表されたRCTでは、過体重または肥満の閉経後女性115人を対象に、運動の効果を調査してます。参加者は、週5日45分間の中強度運動を行う群と、通常の生活を送る対照群に無作為に割り振られてます。
その結果、運動群では1人あたりの年間風邪罹患率が0.55回と、対照群の0.96回に比べて有意に低かったそう(p=0.02)。
まあ運動の種類や強度、頻度など、具体的にどのような運動が効果的なのかははっきりしてないものの、同様の効果は複数の研究で確認されているし、(適度な)運動で風邪予防ってのは間違いないでしょうな(ただしやりすぎはむしろ風邪の発症率アップにつながるので注意)。
日本でも風邪予防として定番の「うがい」もまたデータ不足が否めないところ。
2005年に発表されたRCTでは、387人の成人を対象に、水でうがいをする群、希釈したポビドンヨードでうがいをする群、うがいをしない対照群の3群に無作為に割り付けてます。
その結果、
って感じ。ただし水うがいで風邪を予防するには、1日3回、20mLの水で15秒間うがいを3回繰り返す必要があったそうで、「普通」のうがいでは「うがいをしてる」の条件を満たせていないケースも多そうですな。ただし現状では結論を出すには十分なデータは得られてないんでさらなるRCTが必要でしょうねー。
日々健康、心理分野などの最新学術論文を発信をしているので、ぜひフォローお願いいたします。
ハーバードが勧めるストレス解消法7選
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おくさん🇯🇵🇨🇳 @Astella6174
1.ちゃんと寝る
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3.人とのつながりを大事にする
4.時間管理のスキルを磨く
5.ストレスを放置しない
6.自分を養ってあげる
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どれも当然のようだけど,皆できてないからストレス溜まってる pic.twitter.com/xdQdp3LXzF— おくさん🇯🇵🇨🇳 (@Astella6174) July 12, 2021