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最近では「検索エンジン、AIの発達で各人が欲する情報に容易にたどり着けるようになった！」などと言われますが、実際にはテキストの複雑さが低い、つまり平易な文章ばかりが表示されるし、プロンプトによらず結局最小公倍数的な情報が提供されるようになってるしでニッチで深い情報にたどり着くための道のりはむしろ長くなってしまっているのが現状（R）。

もちろんAIはなんでも知っているけれど、それと同時に大多数の人がニッチで深い情報には興味を示さないことも知っています。だからAIはあえてニッチ情報を提供せず、結局情報の濁流の中で「より信頼でき、本当に価値ある情報」にたどり着くのは一層困難になっているというわけ。そこで本ニュースレターは検索エンジン、AIからは辿り着けない「ニッチ」な科学的知見をニッチなあなたに毎週お届けします。ゴミがあふれるネット上においてキラリと光る質の高いコンテンツを目指しています。

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ってことで今回は毎月恒例の「男女にまつわる最新研究」のまとめでーす！今回も個人的に「面白いなー」「使えそうだなー」と思った論文を10報ほどピックアップしてみました。早速ダダーッとみていきましょう！

目次

1. 「目標をあきらめる力」が二人の満足度をブチ上げる
2. ワクチン接種で体臭が魅力的になる説
3. マッチングアプリではマスクをしているプロフィールの方がモテる？
4. "just talking"って何なのよ？
5. 男性脳、女性脳ってホントにあるの？
6. パートナー双方のパワーバランスが大事！ってほんとなんすか？
7. 結局惹かれるのは外面なのか、
8. 外見の魅力が裁判の勝敗を左右する
9. 恋愛映画を科学的に分析してみた
10. NTRで喜ぶ心理

「目標をあきらめる力」が二人の満足度をブチ上げる

「目標に粘り強く取り組む」より「うまくあきらめて軌道修正する」方が大事じゃね？ってのはここ最近よくお伝えしている通り。いわゆる「精神的柔軟性（mental flexibility）」の高い人の方が収入も高いし、仕事の生産性も高いし、幸福度も高い、みたいなことを示すデータが増えてきているんですよね。

で、最近読んだFrontiers in Psychology誌の研究では、そんな「目標をあきらめる力」が高い人はパートナーとの満足度も高いぞ！みたいな話になっていて勉強になりました。

こちらはカナダのウィルフリッド・ローリエ大学の研究で、モントリオール地域の113組の同棲カップルを1年間追跡調査したというもの。研究チームは、参加したカップルの各パートナーに以下の項目についてアンケートに答えてもらってます。

• 関係満足度
• 睡眠効率
• 問題解決能力
• 目標調整能力（「目標に向かう努力を減らすのは簡単だ」とか「他の新しい目標に取り組み始める」といった記述への同意度を測定）

で、その結果は明らかで、年齢、教育レベル、世帯収入の違いを統計的にコントロールした結果、

• 問題解決能力が高いほど、関係満足度が高い傾向にあった
• パートナーの睡眠不足の程度は、関係満足度の低下と関連していた
• パートナーの睡眠不足が関係満足度に及ぼすマイナスの影響は、目標離脱能力が低い人ほど強かった
• 目標再関与能力が高いほど、パートナーの睡眠不足の悪影響が大きかった

だったそう。

ここでいう、「目標離脱」と「目標再関与」ってのは「問題調整能力の一部の概念で、

• 目標離脱：達成不可能な目標を手放す準備態勢
• 目標再関与：達成不可能な目標に代わる、より簡単な目標を探す傾向

のことを指してます。つまり、目標にそこまでこだわらずにいったん手放することができる人ほど、パートナーが睡眠上に問題を抱えていてもそれが二人の関係性にとってダメージになる確率が低かった、と。

一方で、目標再関与能力が高いと、新たな目標がパートナーのストレス要因になってしまう可能性があるから注意が必要かもねーみたいに考察されてました。「目標調整能力」とひとくくりにするのもあんまよくないのかもしれないなーって気もしますね。

おそらくこの傾向は別に睡眠の問題に限られたものではなくて、恋愛関係（ひいては人間関係全般）上で発生する多くの問題に適応できるんじゃないかなーという気がしますな。つまり、「目標に固執しすぎず手放せる」能力は問題を解決しつついい関係性を維持するのに重要な役割を果たすのではないかと。まーそれがなかなか難しかったりもするんですけどねぇ。

ワクチン接種で体臭が魅力的になる説

「ワクチン接種でモテ体臭になるぞ！」みたいな面白研究が出ておりました。社会的な種である人間が、病気のある他者を識別するための手がかりに気づく手法を色々開発してきたぞーってところは以前にも何度か紹介したことがありましたけど、それはワクチン接種によっても変わるんじゃね？って話。まー抗体とか免疫細胞でモテ体臭に！みたいな話は昔からあったんでありそうな話ではありますよね。

こちらはチェコで行われた研究で、チームはまず健康な非喫煙者の男性21人を対象に、A型肝炎・B型肝炎・髄膜炎菌のワクチンを接種する前と後で、体臭サンプル・顔写真・音声を記録。で、その後88人の女性にそれらの魅力を評価してもらったんだそうな。

で、その結果は予想通りで、

• ワクチン接種後、体臭の魅力度が上がり、ニオイの「きつさ」が減った
• 逆に、顔の魅力度と健康度の評価はワクチン接種後に下がった（肌の色も関係なし）
• 声の魅力には、ワクチン接種前後で有意な変化なし

だったらしい。要するに、特定のワクチンを打つと、「体臭が魅力的になる！」んじゃないか、と。まーそこまで大きい効果ではなさそうですが。

ワクチン接種で変わる魅力は？/ Immunoactivation Affects Perceived Body Odor and Facial but Not Vocal Attractiveness

面白いのは、体臭の魅力と顔・声の魅力には、ワクチン接種前後ともに有意な相関がなかったってところ。つまり、ニオイでモテる人が、顔や声でもモテるとは限らないってわけですな。

で、研究チームは、この結果を受けて、

• ヒトは健康評価で複数の感覚的手がかりを使ってる
• 体臭・顔・声は、それぞれ個人の健康状態について明確な情報を伝達する役割を担っている

って結論づけてます。まぁ、「進化の過程で病気を避ける能力が発達してきた」ってのは間違いなんでしょうねぇ。男女逆のケースとかも気になりますな。

マッチングアプリではマスクをしているプロフィールの方がモテる？

「病気を寄せ付けたくない！」系の話で言えば「マスク」を思い浮かべる人も多いでしょう。ってことで、COVID-19パンデミック時（2022年春に実施）のマッチングアプリ界隈において、マスクの着用がどのような影響を与えたのか？を調べた研究が出てたのでこちらもチェックしてみましょう。

これは南ミシシッピ大学の研究チームが、異性愛者を対象に行った2つの実験から構成されてます。それぞれ簡単にチェックしてみましょう。

研究1では、145人の参加者（女性119人、男性26人、平均年齢約20歳）に、マスク着用の有無とワクチン接種状況が異なる模擬デートプロファイルを評価してもらってます。

その結果、マスクを着用しているプロファイルが好まれ、魅力や好感度などで高評価を得たらしい。ただ、ちょい意外なことに、ワクチン接種の有無は評価に有意な影響を与えなかったそうな。意識上ではワクチンの効果はあんまり気にならないのかもっすね。しかも、この傾向は参加者の政治的傾向によってあまり変化しなかったってのは面白いところっすね。

次に、研究チームは、社会的排除の状況下でこの選好が変化するかを調べるために、2つ目の研究を行ってます。135人の独身の異性愛者に、社会との隔離、社会とのかかわり、または中立的な話題について書いてもらい、それぞれの条件での感情をシミュレートしてから、同じプロファイルを評価してもらったんだそう。

すると、コントロール群ではマスク着用プロファイルがわずかに好まれ、「社会とのかかわり」群ではその好みが低く、「社会との隔離」群ではマスクなしプロファイルが好まれる傾向があったらしい。つまり、社会との隔離を感じているようなシチュエーションでは、健康上の予防よりももっと人の輪に入りたい！と感じるような特徴の異性に惹かれる可能性の方が高いのではないか、と。

普通に考えればマスクをつけてる人の方が健康的でよさそうっての感じるけど（実際、2021年の研究ではマスクをつけている人の方が魅力的に見えた）、あまりに社会とのかかわりがなくなると人恋しさがマスクによる健康イメージを上回るってわけですねー。「別にマスクなんていらんやん！」派の人が意外と活発に恋愛してるのが目立ってたりしましたけど、「人と関われない寂しさ」みたいなところが背景にあったのかもしれないですねー。

"just talking"って何なのよ？

最近特定の男女関係を表すのによく使われるのに”Just talking”ってありますな。まーなんとなくニュアンスはわかる気もするけど実際どんな意図で使ってるのか？ははっきりわからない、、って感じる方も多いでしょう（酢kなくとも私がそう）。

そんなところで最近ビンガムトン大学の研究チームが、この言葉の意味や意図を探るために、403人の大学生を対象に調査を行っていて勉強になりました。

ここでは詳細は省いてさっそくその結果を見てみると、「Just talikng」は、

• 肉体的な関係を含むこともある人との付き合い方の一形態
• より正式な交際の前段階として表現されることも多い
• 今後より親密な関係に発展する可能性のある相手を知るプロセス
• オンライン上での会話に使われることが多い

などを示していることがわかったんだそう。ただし、この言葉の曖昧さはやっぱり大きかったみたいで、感情的・肉体的な親密さのレベルについては、人によって認識がかなり異なっていたんだそうな。

で、重要なポイントは、「Just talking」が、正式なコミットメントのプレッシャーなしに、親密なつながりを促進する役割を果たしているってところ。要するに、結果的にはより親密になる可能性があるけれど、別に「将来この人が彼氏/彼女になるかも。。」みたいな気負いをせずに行っている交流形態である点は、共通認識であるケースが多いのだ、と。何となくイメージはわかりますね。

さらに、研究者チームは37人の学生を集めてフォーカス・グループも実施していて、

• 「Just talking」は、SNS上の交流から始まり、より個人的なコミュニケーションへと進展する可能性がある
• 「フックアップ」とは区別され、より深く個人的なつながりを発展させる可能性があるものと考えられている
• 共通の興味や価値観を発見するためのプロセスであり、コミットする前に相性を判断するために重要

みたいに認識されているみたい。いわゆる「ナンパ」みたいなちょっとネガティブな意味合いは想起させないんだけど、可能性としてより深い関係になる人と交流してる、みたいな雰囲気で「Just talking」って言葉が使われてるってわけですな。

あまりうまく伝えられたか自信がありませんが、個人的には結構すっきり感のある論文でございました。

男性脳、女性脳ってホントにあるの？

「男と女の脳の違い」みたいな話はよくありますが、新たに最新技術を用いて「男女の脳を見極められるか検証したぞ！」みたいな研究が出ておりました。

こちらはみんな大好きPNASに掲載された研究で、時空間ディープニューラルネットワーク（stDNN）なるAIモデルを使って、fMRIのデータから男女の脳を見分けられるか調べたらしい。ちょっとマニアなことを言えば、生のfMRIデータから直接学習することで、従来のように脳の結合の特徴に依存しないアプローチを取っているのがユニークなポイントっすね。

その結果、このAIモデルはかなり高い精度（90.21～91.17%）で男女の脳を区別できたそう。特にXAI技術とコンセンサス分析を使ったところ、

• デフォルト・モード・ネットワーク
• 線条体
• 大脳辺縁系

などの特定の脳領域が、男女間で一貫して異なることが確認できたそう。ご存じの通りこれらは創造性とか感情とかに関わってくる部分なんでいわゆる特徴としての「女性脳」「男性脳」みたいなところとつながってくるところがありそうっすね。しかもこれらの知見は、複数のデータセットと独立したコホートでも検証されたそうで、それなりの一般化可能性はありそうっすね。

さらに、正準相関分析を使って、認知機能の性特異的な神経生物学的予測因子も特定されてます。要するに、特定の脳領域は、女性と男性で認知プロファイルの予測に差を生み出すみたいよー、と。

さらに考察パートでは、臨床的に言ってもうつ病や不安障害、摂食障害は女性に多いし、自閉症やADHD、統合失調症は男性に多いし、みたいなところがこの辺と関係してるんじゃなかろうか、って考察されててなるほどなーって感じましたね。

パートナー双方のパワーバランスが大事！ってほんとなんすか？

パートナー間のパワーバランスが対等であることが幸せな関係の鍵！みたいな主張がありますな。が、バンベルク大学の最近の研究では、実はそうではないんじゃない？みたいな結果になってて面白かったです。

研究では、879組の異性カップルに以下の項目について報告してもらってます。

• フェルト・パワー（相手にどのくらい影響を与えられているかという主観的感覚）
• 交際期間、関係の質など

で、研究者たちは、パートナーの経験の相互依存性を考慮するために、ダイアド応答曲面分析ってな統計手法を用いてこれらの関連性を分析したんだとか。

その結果、

• フェルト・パワーが関係の質に直接的でポジティブな影響を与えている
• パワーバランスよりも、各パートナーがどれだけ影響を与えられていると感じているかが重要だった
• この効果は、信頼、賞賛、性的満足感、関係の持続性など、さまざまな次元で確認された

だったそう。要するに、パートナーと同等のパワーを持っているかどうかよりも、自分がどれだけ二人の関係性にパワー（影響）を与えられていると感じられるかが、関係満足度に大きな影響を与えるんだぞーと。

研究チーム曰く、

人は関係の中で決定を下し、影響力を持つことを望むようだ。

ただしパワーを行使できる領域は様々である（例えば、お金の使い方、友人との時間の過ごし方、休暇の場所）し、人によっては、特定の領域で、他の領域よりも大きな影響力を持ちたいと望むかもしれない。

とのことで、自分がこれは譲れん！みたいな領域では自分が決定権を持ってるんだ、と感じられていることが、常に5：5のバランスをキープできているかより断然重要みたい。

さらに、この研究では性差の可能性も探っておりますが、この関連は性差に依存しないことがわかってます。パワーを与えていると感じることのプラスの効果は、男女にとって同様に有益であるみたいですね。まーもちろん、「これはドイツの異性カップルに限定的で一般化はできない！」などの意見もありましょうが、一つの視点として考えてみる価値は十分あるのではないかと。

結局惹かれるのは外面なのか、

「恋愛相手を選ぶときに何を基準にするのか？」について新しい研究が出ておりました。この手の論文は本ニュースレターやほかの媒体でも多々紹介してますけど、こんな初歩的（？）な疑問にも明確な決着がついてないってのは恋愛心理学の面白いところでもありますよねぇ。

で、ここでは、サンパウロ大学心理学研究所の研究チームが、778人のブラジル人を対象に、理想のパートナーに求める特質を調査してます。参加者は、Facebook、Whatsapp、Instagramなどのソーシャルメディアを通じて募集された18歳から64歳までのブラジル人778人で、異性愛者、両性愛者、同性愛者といった幅広い性的指向を網羅してます。

みんなには、

• 知性
• 優しさ
• 肉体的魅力
• 健康
• 社会経済的地位

の5つの特徴に基づいて、理想のパートナーをデザインするって課題に取り組んでもらったらしい（具体的には、多、中、少の三段階のポイントを割り当てて、そのポイントをうまく割り振ってパートナーをデザインする）。で、その結果、明らかになったのは...

• 性的指向や性別に関係なく、知性と優しさが最も重要視された
• 異性愛者の男性はパートナーの身体的魅力を高く評価した
• 男性に惹かれる人（異性愛女性、同性愛男性、両性愛者）は社会経済的地位をより重視した
• 優しさへの選好は両性愛者の間で特に顕著だった

だったらしい。本研究のハイライトとしては、外見的魅力やお金、健康よりも、頭脳や優しい性格が恋人に最も望まれる特徴だったぞ！ってとこですね。

研究チーム曰く、

異性愛者の男性はパートナーの肉体的魅力を重視するが、基本的に、より多くのパートナー候補を惹きつけたいなら、知性と優しさに磨きをかけるのが一番だろう

とのことで、モテたいなら外見より知性と性格磨こうぜ！と。さらに、研究では、

• 与えられたポイントが多いほど、知性と優しさへの選好がより顕著になる
• 身体的魅力と社会経済的地位の重要性は、一定の閾値を超えると減少する
• 社会性スコアが高い人ほど身体的魅力を重視
• 不安定な愛着スタイルの人ほど社会経済的地位を重視
• 自分と似たレベルの優しさと知性を持つパートナーを好む傾向がある

といったことも明らかになってます。たしかに経済面とかで多少厳しい状況にあるときは外見とかステータスとかも一定程度重視されるんだけども、結局余裕が出てきたら知性とか優しさが大事になるんじゃないのーってとこですね。以前の研究結果とも一致してて結構普遍的な傾向なのかもしれないなーとか感じましたね。

外見の魅力が裁判の勝敗を左右する

”Beauty is Good”について新しい研究が出ていたのでシェア。

こちらはイリノイ大学スプリングフィールド校の研究で、弁護士の外見的魅力度と裁判の勝敗の関係を調査してます。研究では、2017年から2019年に米国控訴裁判所で口頭弁論を行った弁護士のデータセットを使用。弁護士の魅力度を評価するために、4つの指標を用いてます。

1. 弁護士のプロフィール写真に対する調査回答者の評価
2. 機械学習アルゴリズムによる客観的な魅力スコア
3. 法廷での口頭弁論中の動画クリップから評価した魅力
4. 相手側弁護士と米国政府弁護士の魅力スコアの差

で、3,000件以上のアンケートと1,000件以上の訴訟を分析した結果、

• 魅力的だと認識された弁護士は、個々の裁判官から有利な判断を獲得しやすい
• 美形の弁護士は、完全勝訴する確率が一貫して高い
• この結果は、弁護士の経験、イデオロギー、財力など他の要因を考慮しても変わらなかった

だったらしい。要するに、裁判官もふつーの人と同じように、無意識のうちに魅力的な人を優遇してしまう傾向があるってことですな。

さらに、魅力的な人の優位性と人種・性別の関係も調べていて、

• 魅力度スコアの高い女性弁護士は、特に男性裁判官の前で有利になる傾向がある
• それ以外は、人種や性別が魅力的な優位性に大きな影響を与えるという証拠はほとんどない

ことがわかったんだとか。個人的には特に人種で違いが出なかったのがちょい意外でしたね。まー司法の公平性の問題は昔から批判されてますけど、そろそろ「イケメン・美女かどうか？」っても公平性を判断する軸の一つとしてもいいんじゃなかなーってくらいに知見も増えてきてますな。もし裁判沙汰になったら美男美女の弁護士に頼もうかしら。。（小声）

恋愛映画を科学的に分析してみた

「ティーン向け恋愛映画を徹底的に分析したみたぞ！」という研究が面白かったです。これはフロリダ大学の研究で、1961年から2019年までの間に興行収入の高かった41作品の恋愛内容を分析したというもの。

その結果、明らかになったのは...

• 男性登場人物は、女性登場人物よりも「恋愛の理想」を表現する（"愛はすべてに打ち勝つ "や "ソウルメイト "など）傾向が強い（男性1.78 vs 女性0.68）
• 恋愛の理想に対する挑戦（現実的・批判的な見方）的な表現には、男女で大きな差はない
• セフレや長期的な交際の描写や交際の回数にも、男女で有意な差はない
• しかし、女性登場人物がセックスの末に別れを経験する映画が多く、女性の自律的な性行動に対する道徳的・警戒的なスタンスを示唆
• 一方、男性登場人物の恋愛の結末は、セフレとの交際に大きな影響を受けない

みたいな感じで、「性的なダブルスタンダード」を描写しているケースが多くて、特に若い女性視聴者に悪影響を及ぼす可能性があるんじゃないか、と。

研究チーム曰く、

映画の中の男性は、現実よりもロマンチックな理想を信じている点で非現実的だが、女性の方が恋愛でネガティブな結末を経験しやすいという点では現実的だ

とのこと。女性は作中の女性の現実的な描写をベースに共感を抱き、現実でも同様の男性の行動を期待するんだけど、そこは非現実だからギャップを感じてしまうんじゃないかってところっすね。

さらに、研究チームは、ティーン向け恋愛映画におけるカジュアルな恋愛とコミットした恋愛の描写が、時代を経ても一貫していることも確認してまして、曰く、

今日の登場人物たちは、50年前と同じように、同じような量のロマンチックな理想や挑戦を表現し、付き合ったり長期的な関係を築いている

とのことで、全体的にみて人間関係やセクシャリティの現実の変化が反映されていないっぽいぞー、と。それでも売れてるんだから「定番」の描写が結局人気が出るってとこなんでしょうかねぇ。

ただ、この研究には注意点もあって、

• 興行収入の高い映画（主にメインストリーム）に焦点を当てているため、ティーンの経験や恋愛の多様性を完全には表していない可能性がある
• 分析された映画の多くは、白人・異性愛者の主人公が中心で、社会の多様性を反映していない

といった点は注意。私は実はあまり映画は見ないのですが、日本の映画ではどんな感じなのかなーとか気になったので、なんか印象等でもあれば教えてほしいですね。

NTRで喜ぶ心理

最後にちょっとタブーネタで、非一夫一妻制に分野で最近読んだ論文が面白かったのでこちらもシェアしておきます。この手の話がお好きでない方は（メールアドレスの登録だけして）ブラウザバッグしてくださいませ。

ここでのメインのフォーカスは「コンパージョン（compersion）」って感情。まあ聞き覚えはない人が多いでしょうが、これはパートナーが他の異性と関係を持つことを認めているコミュニティにおいて、パートナーが他の異性と恋愛・性的関係をもったときに感じる「喜び」の感情のこと。誤解を恐れずに言えば「NTRで抱くポジティブな感情」みたいな感じですね。

一夫一婦制が一般的な社会では、パートナーの「浮気」に対する反応は嫉妬が主流ですけど、ポリアモリーのコミュニティではコンパージョンはよくあるよねーって感じでとらえられてて、コンパージョンを感じないとむしろ「劣ってる」みたいに評価されることも多いんだそう。

で、カリフォルニア州立大学サクラメント校研究チームは、この心理が発生するメカニズムの一端を解明すべく、調査を実施。ポリアモリーや他の形の（合意の上の）非一夫一婦制を実践している255人を対象に、コンパージョンの予測因子を調べたらしい。

研究では、COMPERSe（コンパージョンの3つのサブタイプを評価する質問項目）を用いてデータを収集していて、具体的には、

1. パートナーのメタモア（パートナーの他の親密なパートナー）に対するポジティブな感情
2. パートナーが新しい親密なつながりを形成することへの興奮
3. パートナーとメタモアを一緒にいることを考えることで感じる性的興奮

といった点について、「どのくらい同意するか？」を尋ねまくったらしい。

で、性格や感情調整スキルなども調べて比較したところ、

• 自分のパートナーとメタモアとの関係に対するコンパージョンの最も強い予測因子は、「メタモアをどのように感じているか？」だった。つまり、メタモアのことが好きで親近感があり、メタモアとパートナーの関係をよく知っている人ほどコンパージョンが高かった
• パートナーの新たな恋愛・性的関係の形成に対するネガティブな反応の最も強い予測因子は、嫉妬と愛着不安だった。つまり、パートナーとの関係に安心感を持てない人ほどコンパージョンが低く、逆にコンパージョンを感じやすい人は嫉妬のレベルが低かった
• 自尊心や性格特性などの個人内要因は、コンパージョンの経験と強く関連していなかった

だったそう。つまり、パートナーの別の恋人との関係性や、それについてのコミュニケーションが、コンパージョンをブーストする上で重要みたい。

研究チーム曰く、

ポリアモリーの文献の多くは、感情管理のための個人「内」の特性に焦点を当てているけど、個人内要因はコンパージョンと強く関連していなかった

とのこと。「自分に自信を持てれば！」とか「感情をコントロールできるようになれば！」とか「開放性を高めれば！」みたいな主張をする人がいるけどそれよりかは、パートナーに対して抱く嫉妬心やパートナーの他の恋人との関係性など、自分一人では完結しない問題なんだぞーってとこですね。

もちろん、これはそんなに一般的な感情ではないでしょうが、「そんな考え方は変だ！」とか条件反射ではねつける前に「なんでそう思うの？」ってのをロジカルにブレイクダウンしていくと、納得できるところも見えますよねぇ。こういう考え方のアプローチはコンパージョンとか以外にも共通するところがあるんじゃないかなー、多様性をうたう社会ではこういう考え方もだいじなんじゃないかなーと思ったりなど。

さいごに

日々健康、心理分野などの最新学術論文を発信をしているので、ぜひフォローお願いいたします。

	おくさん🇯🇵🇨🇳
	@Astella6174

規則的な睡眠習慣で成績アップ！https://t.co/cnQ2WNwUGn
実は睡眠が学生の学業成績に及ぼす影響については明確な結論が出ていないらしく、実際睡眠時間が短い学生の方が成績が良かった！なんて研究もあったりするんだとか。…

— おくさん🇯🇵🇨🇳 (@Astella6174) June 2, 2024

次回は真面目にエロのお話をする予定です。おしまい。