前回はシモのデータを扱ったので、今回はよりライトな恋愛分野の最新研究を7つほど一気にダダーっとお届けします。
近年の出会いの場としてのマッチングアプリの台頭はご存じの通りで、日本でも「結婚したカップルの出会ったきっかけの一位がマッチングアプリだった!」みたいな統計があるのは以前もお伝えした通り(マッチングアプリでよい出会いを見つける方法については過去にまとめてるので、ご興味があればそちらも参照ください (1, 2, 3))。
で、マッチングアプリがパートナー探しの主流になりつつある中、最近の研究では「オンラインでの出会いって長期的に見た時にどうなの?」ってなところが調べられておりました。マッチングアプリで出会ったカップルの方が結婚満足度が高く、離婚しにくい!みたいな話を聞いたことがある人もおられるかもしれませんが、それって大体交際(結婚)初期のデータであって、長期的な影響については案外謎だったりするんですよね。
そこで最近Computers in Human Behavior誌に掲載されてた研究では、オンラインでの出会ったカップルの離婚状況、満足度等について長期的な観察を行っていて、なかなか参考になりました。
これは米国の既婚成人923人を対象に行われたアリゾナ州立大学の研究で、参加者の半数がオンラインでパートナーと知り合った人を選んだらしい。でもって、「結婚生活にどのくらい満足しているか?」「周りの人が自分たちの出会いをどのように受け止めていると思うか?」「どのくらい親密な情報を共有しているか?」「最初に出会った時に地理的な距離はどのくらいあったか?」などを尋ねまくったところ、以下のような傾向が確認されました。
ということで、オンラインでの出会いは出会いの機会を拡大し、より多様な結婚を後押しする一方で、長期的な関係においては独自の課題があるのかもねーって感じっすね。地理的な距離に関しては、以前「Love Miles Apart: 遠距離恋愛を乗り越え一層幸せになる6つのコツ」というタイトルでまとめた内容と近しいところがありそうな印象。
まあそうはいっても、オンラインで出会ったカップルも結婚生活の満足度と安定性の点で10点満点中6点以上の評価をしていて、当人たちにとってはポジティブに捉えられているっぽい。となるとやっぱり重要なのは「カップルを取り巻くスティグマ」ってのが大きな課題なんかなーって気がしますけど、この点についてはマッチングアプリが一層一般的な手段となれば、オフラインで出会った場合とそこまで差はなくなるのかなーとかおもいましたね(ただ、「時間がたつほど『使い捨て』の感覚が強くなるのでは?」など別の説明も考えられていて一概には言えませんけども)。
「異なる年齢層の女性が求める理想のパートナー像を徹底的に調べたぞ!」という論文がHuman Nature誌に掲載されておりました。
こちらは異性愛者だけでなく、バイセクシャル、レズビアンの女性も含め、幅広い性的指向を持つ独身女性を対象に行われたもの。対象者は147か国から集められており、年齢層は18歳から67歳、合計17.254人分のデータが採用されております。調査も10か国語で行われていて、参加者のみんなには優しさ、身体的魅力、経済力、学歴、自信、子育ての意向など様々な角度から理想のパートナーの特性について回答してもらったんだそうな。
その結果をざっくりまとめてみると、
だったそうです。個人的には「子供が欲しいか」「親になりたいか」って点がちょっと意外でしたね。この点の重要性は40歳くらいまで高いのかなーってイメージだったので。
まあこの研究はあくまでも横断的なサンプルだし、「年齢」というよりも「生まれた時期」も重要そうって点には注意しておいた方がよいでしょう。また、もちろん個々人で重視する点は全く違ってきますんで、あくまで参考程度にってことで。
「同年代の彼氏を持つ女性と年下の彼氏を持つ女性」を比較した研究が出ておりました。上述の研究では「年齢が高くなるほど年下の彼氏を受け入れやすくなる」みたいな結果になっていましたが、近年ではより若年層でも女性の地位や収入が上がるのに対応するように、女性の方が年上、という異性カップルが増えているんだそうな。
これはSexual and Relationship Therapy誌に掲載された研究で、自身より年齢が若い彼氏を持つ女性17人と同い年の彼氏を持つ7人の女性が対象(参加者の年齢は25~57歳)。で、みんなに性的自己効力感、感情的知性、主観的幸福感を評価してもらったらしい。
結果を見る前にそれぞれの指標が何を表しているか簡単に確認しておくと、
って感じで、どれも恋愛関係の充実に寄与する要素っすね。
それで、分析の結果どんなことが分かったかといえば、
ってことで、「同い年より年下彼氏の方がグレートな恋愛関係を築けるのでは?」と思わせるような結果ですね。研究チーム曰く、
"クーガー"(年下の男性と交際している女性)は、同い年の男性と付き合っている同年齢の女性よりも、これらの評価項目の得点が高いことがわかった。性的自己効力感、情緒的知性、主観的幸福感は、充実した親密な関係に関連しているので、この研究は、年下の男性と交際している女性は、充実感が劣るという先入観に疑問を投げかけるものである
とのこと。もちろんサンプルはかなり小さいし、一般化するには尚早でしょうけど、年下彼氏が一般的になってきているのはシンプルにその方がより良好な関係性を築けるからってのは分かりやすい話かもしれないですねー。さらにこの点も上記と同様に、「周りからどう見えるか」ってスティグマが変われば差は一層広がるのかなーと思ったりしましたね。
「デートの誘いを断ることにそんなに罪悪感を感じなくていいぞ!」みたいな実験が面白いです。相手からの誘いを断っても誘った側はそこまで気にしてないんだからもっと気軽に断ってもいいんだぞ!みたいな話っすね。
これはJournal of Personality and Social Psychology誌に掲載された研究で、複数の文脈における「断るダメージの過大評価」を調べております。その中で恋愛の文脈での実験を一つ紹介するとこんな感じ。
みたいになってます。そのうえで、両者には、「どのくらい傷ついたか」「パートナーがどのくらい傷つくと思うか」といった質問に回答してもらって、そのギャップを測定したらしい。
その結果、
というわけで、断られた側は「そっかー。残念だなー。また今度誘おうー」くらいにしか思ってないけど、断った側はそのダメージを重く見積もりすぎてしまうぞ!と。しかも「相手のことをより深く知っている」と思われがちな長期のカップルですらその傾向は変わらないというのは面白いですねぇ。
「そうはいっても断りづらい!」って声もありましょうが、そこで使えるのが、「自分が断られたらどう思うか?」と想像すること。たったこれだけでも「別にそこまで傷つかないのでは?」って気づけるんで、「YESマン」の方はお試しあれ―。
前回「『不本意なシングル』に共通する要素ってなに?」ってトピックを取り上げましたが、「意図的に恋人を作らない」という人が多数いるのも事実。そこでStudia Psychologica: Theoria et praxis誌に掲載された研究では、そこらへんの理由を探ってくれておりました。研究者の問題意識はこんな感じ。
私は進化心理学者で、人間の交配を研究している。親密なパートナーを持つことは、進化上最も重要なことである。
したがって、親密なパートナーを持たず、持ちたがりすらしないという「自発的な独身主義」の増加は、少なくとも進化論的には不可解である。
普通に考えてパートナーを作らないってのは異常事態なのにそれが現代ではかなりの割合で発生しているのは何事か!と。一体何が「パートナーを作る」という意思を損なわせているのだろうか、ってわけですね。
これは377人の女性と252人の男性(平均年齢は36歳)を対象にした研究で、まずはみんなに過去、及び現在の恋愛関係について尋ね、その後人生の優先順位などを含め、「独身を好む」という回答をした人をサブカテゴリーに分類したらしい。
その結果がどうだったかといいますと、
みたいな感じです。「仕事に集中したいから」といったまあしゃあないかーって理由を除くと、「過去の恋愛のトラウマ」が「パートナーを作らない」という選択に重要な影響を与えているのかもしれないというわけですね。
研究チーム曰く、
我々の研究は約5人に1人が自ら独身を選択しており、うち4人に1人が過去の恋愛に失望したためにこのグループにいることを示した。
さらに、過去の恋愛経験を調べたところ、ネガティブな経験をしたと答えた人は、ポジティブな経験をしたと答えた人よりも、現在独身である可能性が高いことがわかった。つまり、恋愛関係でネガティブな経験をすると、新しい恋愛をする気がなくなり、独身を好むようになる可能性があるということだ。
とのこと。ただし研究チームも「トラウマが交配ゲームから永久に身を引かせることになるのか、それとも数ヶ月~数年間しか続かないのかはわからない」と認めているように、その影響がどこまで大きいのかは謎ってところは気を付けたいですね。
とはいえ恋愛の機会が増えれば当然傷つく機会も増えちゃいますんで、この点上述の通り、気軽に恋愛を始められちゃうマッチングアプリなども近年の「独身志向」に一役買ってたりするのかなーとか考えさせられましたねぇ。
ちなみに、「なんで恋愛って必要なんだろう?」って点については、最近「感情的な側面と実際的な側面の両方から大事なんじゃないの?」みたいな研究が出ておりましたので、こちらもご興味があればご参照くださいませ。
「『ビューティープレミアム』は固定されたものではなく、新たな情報によって変わりうるぞ!」というデータがEuropean Journal of Social Psychology誌に掲載されておりました。顔がいいと性格等もよさそうに見える!という「ハロー効果」が知られてるけど、あとから性格の印象は悪くなることもあるしその逆もしかりというわけですな。
この研究では合計3つの実験が行われてまして、それぞれ概観してみるとこんな感じです。
だったそう。要するに、美男美女の顔を見ると「きっと性格もいい人なんだろうな!」って思いやすいんだけど、「実はこの人は見栄っ張りだし引っ込み思案なんだよー」って事前に知らされていると、加工を外した顔、またはあんまキマってない顔を見た時に「性格もいまいちそうだな」って認識に代わりうるってわけですね。
わかりやすい例を挙げるとすると、
みたいな感じ。第一印象の見た目のインパクトが大きいのは間違いないですけども、その後の行動や態度によって印象は大きく変わる、逆転することすらあるのだ!と。言われてみれば当たり前でしょうが、第一印象を磨くと同時にその後の態度も意識すべきことがよくわかりますなぁ。
「男らしい顔はモテないけど笑顔で相殺できるぞ!」という面白い研究が出ておりました。
これはEvolutionary Human Sciences誌に掲載されたポルト大学の研究で、男らしい顔の特徴、表情、魅力の関係について調べるために3つの実験を行っております。詳細を省いてポイントだけまとめてみると、
だったそう。言い換えれば、中性的または女性的な顔の男の方が女性にモテるんだけど、男っぽい顔でも微笑んでいるなど幸せそうな印象を持てれば、男らしさに魅力を感じるかもしれないよー、って感じですな。
研究チーム曰く、
私たちの知る限り、本研究は、男性の顔の性的二型(男らしさ、女らしさ)に対する女性の選好と感情的表情の知覚との関係を探求した初めての研究だ。3つの実験から、感情表現は女性の男性らしさに対する選好に影響を与えるという結論に達した。
とのこと。
「男らしい顔」を客観的に定義するのは難しいんで(一般的には「顎の角度」とかが挙げられることが多め)自分の顔の男らしさ度合いを正確に測るのは難しいですが、まあとにかく「男らしい顔だねぇ」と言われがちな方は、真顔だと攻撃性、敵意などの印象を与え、モテの観点では不利に働いてしまう可能性がありますんで、日ごろから笑顔を心がけておくのがよろしいかと。
今週は以上。なにかしら参考になる情報が見つかっていれば幸いです。ではまた―。