👴スーパーエイジャー:死ぬまで25歳の脳力を保つ秘訣
海辺のネテロさんに取材してもらった私の失敗談などに関するインタビュー記事が公開されてます!
「科学ってこんなに面白いんだよ!」「人生を豊かにする強力な味方になってくれるはず!」など、私が情報を発信する上で意識していることを念頭にインタビューを受けました!!
ってことで、今回は、「スーパーエイジャー」のお話。「スーパーエイジャー」ってのは、ただ単に長生きをしている人のことではなくて、年をとってもシャープな脳機能を維持している人のこと。
特徴的な研究で言えば、マサチューセッツ総合病院(MGH)の研究が有名。ここでは平均67歳の高齢者の脳活動をfMRIで調べたところ、スーパーエイジャーたちの記憶能力は25歳の若者たちと区別がつかず、脳の視覚野は若々しい活動パターンを維持していたことがわかったんだそうな。ざっくり言えば、スーパーエイジャーたちは歳をとっても新しい情報を学習して思い出すことができ、彼らの脳の構造や結合性は20代の若者とかなり近かったぞ!というわけっすね。
他の研究を見ていても、80、90代でも20~30代と同程度(またはそれ以上)の脳機能を維持している人が一定数存在しているぞ!ってことが報告されていたりするんですよ。もしかしたら皆様の中でも身近で思い当たる人がいる方もおられるんじゃないでしょうか。社会学とかの分野を覗いてみても、年を取ることに対してネガティブなイメージを抱く人も少なくない中でこういった人の存在はかなり重要なんじゃないすか?って主張は近年ますます見かけるようになってたりもしますね。
ってことで、今回は、「一体、スーパーエイジャーは一般ピープルと何が違うのか?」について現時点でわかっていることをまとめてみます。そのうえで私たちがいつまでも脳の健康を維持するために何ができるのか?その秘訣を考えてみます。
まー確かに、遺伝的な要因等今から修正できない点もある程度あるんですけど、近年の研究では、生活習慣の改善によって、私たちもスーパーエイジャーに「近づける」可能性は結構あるんじゃない?ってのがわかってきてるんで、悲観する必要は決してないでしょう。
健康長寿は多くの人の願いでしょうが、実際にそのためにどんな行動に移してるか?と聞かれれば自信をもって回答できる人は少数派(本ニュースレターを読んでいるようなマニアを除く)。早めに始めれば始めるほどスーパーエイジャーになれる確率は確実に上がりますんで(ついでに早死にリスクは下がる)、できるところから手を付けていただければよろしいのではないかと。みなさま人生90年、100年生きる方も多いと思いますが、脳をどれだけシャープに保てるか?によっていつまで人生を最大限楽しめるか、大きく左右されるでしょうからねー。
本ニュースレターでは、徹底的に調べあげたエビデンスをベースに「より信頼でき、真に価値ある情報」をレポートし、ゴミがあふれるネット上においてキラリと光る質の高いコンテンツを目指しています。あなたの人生を彩るヒントとしてご活用いただければ幸いです。
目次
- 見た目は大して変わらない?
- スーパーエイジャーの脳の構造
- スーパーエイジャーの白質微細構造
- Be a Superager 1: 音楽
- Be a Superager 2: 人間関係
- Be a Superager 3: レジリエンスとストレス管理
- Be a Superager 4: 食事と運動
病理は大して変わらない?
まずは現時点までに分かってるスーパーエイジャーに関する証拠からチェックしてみましょう。「何をすればいいかだけ知りたい!」って方は後半から読んでいただければと(個人的には何を目指すか?を先にクリアにしておきたい人間なので、まずはスーパーエイジャーの脳の特徴などをまとめます)。
一つ目に紹介したいのは、「スーパーエイジャーの脳の病理はアルツハイマー病患者と同等である」ってデータ。こちらは米国の研究グループが、90歳以上の高齢者1,600人以上を対象とした行った大規模な縦断的研究で、結果は『Journal of Alzheimer's Disease』誌に発表されてます。
結論、何が分かったかといえば、平均年齢97.6歳で亡くなったスーパーエイジャーは、死亡の2~12ヵ月前に行われた認知機能テストで高いスコアを示していたものの、剖検の結果、彼らの脳内にはアルツハイマー病患者に匹敵する病理学的変化が確認されたんだそう。具体的には、アルツハイマー病に関連した血管の変化などが数多く観察されていたらしい(ただ、レビー小体病のような他の神経変性疾患の変化は少なかった)。
ちなみに、同様の結果はほかの研究でも示されているところで、最近では、スーパーエイジャーといえど加齢に伴って発生するダメージは確実に蓄積している、だけど強力な「抵抗力」をもってして高い認知機能を維持しているんじゃないか?って考えられるようになってきているんですよ。「じゃあその抵抗力ってなんだ!」ってのはまだまだ謎が深い領域ですが、少しでも抵抗力を高められそうな生活習慣等は後述をご確認くださいませ。
スーパーエイジャーの脳の構造
ただ、脳の「構造」においてはスーパーエイジャーとそうでない高齢者とで明らかに違いがある!って報告があって、こちらも軽く触れておきましょう。
例えば、The Lancet Healthy Longevity誌に掲載された2023年の研究では、スーパーエイジャーには以下のような特徴が確認されたんだそう(ここでは、「スーパーエイジャー」とは、80歳以上でありながら、20~30歳若い健常者と同等のエピソード記憶力を持つ人々と定義されている)。
- スーパーエイジャーの海馬体積は通常の高齢者よりも大きい
- 前帯状皮質がぶ厚い
- 皮質の萎縮も少ない(通常の半分以下、というケースも)
※前帯状皮質:意欲、意思決定、学習などの認知プロセスに関与する脳の一部
専門的に言えば、スーパーエイジャーの脳は、記憶関連領域やコリン作動性前脳基底核における灰白質がより強固に維持されていたぞ!ってのが分かったらしい。要するに、通常の加齢に伴う記憶力低下に対する抵抗性が脳構造から読み取れた、というわけですね。マー言われてみれば当然でしょうが、脳構造が違う!と言われればそりゃあ「スーパーエイジャー」になるうえでいかに長期的な習慣が重要なのかがお判りいただけるのではないでしょうか。
ちなみに神経科学の分野では「use it or lose it(使うか失うか)」って言葉があったりして、年を取ってからようやく脳をシャープに保つための努力を始めた場合と若いうちから継続した場合とではかなり大きな違いがあるんですよね(若い読者が多い本ニュースレターでこの記事を書いている理由でもある)。。。
スーパーエイジャーの白質微細構造
他にスーパーエイジャーの脳の違いを挙げるとすれば、「白質」が特徴的。
例えばジャーナル・オブ・ニューロサイエンス誌に掲載された最近(2024年)の研究では、スーパーエイジャーの白質を5年間にわたって分析し、典型的な高齢者と比較しています(研究は、スペインのマドリッドに住む1,213人の白人成人を対象とした縦断研究であるVallecas Projectコホートから、64人のスーパーエイジャーと55人の典型的な高齢者を選んで行われた)。
MRIデータを用いて脳の白質の健康状態と微細構造を評価し、白質体積、病変体積、白質濃度(認知機能低下と関連する)に重点を置いたFazekasスケールでの解析を行ったところ、
- 白質の全体的な健康状態には両群間で目立った違いはなく、両群とも白質病変の有病率が高く、重症度も同程度だった
- しかし、白質微細構造の詳細な分析から、スーパーエイジャーは特定の脳領域、特に前頭部において優れた微細構造を示すことが明らかになった
だったそう。詳しく言えば、スーパーエイジャーは、脳の衰えに関連する2つの指標である分画異方性(FA)が高く、平均拡散率(MD)が低くて、スーパーエイジャーの白質微細構造は歳をとっても健康的に維持されていたんだ、と。白質微細構造は若年層でも情動行動と関連している、って研究もあったりするんで、言われてみれば納得感はかなり高いですね。"The devil is in the details"って感じですな。
その他にもスーパーエイジャーの脳には特徴的な部分はいろいろあって、
- スーパーエイジャーの脳細胞を顕微鏡で観察したところ、社会的感情機能や社会的人間関係に関連する「フォン・エコノモ・ニューロン」の密度が異常に高かった!(R)
など、面白いデータは大量にあるんですが、いったんこの辺にとどめておいて、続いては「じゃあどうやればスーパーエイジャーになれるんすか?」を見てみることにしましょう。
Be a Superager 1: 音楽
まあ運動しろ!とかいいもん食え!ってのは言わずもがなだし、いつもお伝えしているポイントと大きく変わらないんで、ちょっと意外なところをチェックしてみましょう。
中でも最近注目されているのが、「音楽」だったりします。
※ちなみに、運動・食事に関して軽く触れておくと、スーパーエイジャーは運動能力が高く、ブドウ糖障害や高血圧の問題が少ないことが複数の研究で示されている(例えば(R))。とりあえずは、いつも申し上げてる通り、「〇〇ダイエット」とかよりも「カロリーの質」が高い食事と週に150分~の中強度の有酸素運動をしておけば大きな問題はないと思われる。
音楽のメリットは実際に研究でも証明されていて、64人のスーパーエイジャー(平均年齢81.9歳)と55人の年齢相応の記憶機能を有する典型的な高齢者対照群(平均年齢82.4歳)を比較したところ、
- 両群間で非家族性アルツハイマー病の遺伝的リスク因子や認知症の血中バイオマーカーに差はなかった
- 一方で、身体活動、学歴、社会経済的地位などのライフスタイル因子がスーパーエイジングの表現型と密接に関連していた
- 音楽的なバックグラウンドを持つことがスーパーエイジャーの特徴だった
だったそうで、音楽を習っていた!とかバンドを組んでた!みたいな人の方がスーパーエイジャーになりやすい傾向が見られたらしい。詳細なメカニズムは不明なものの、「外部の情報(音)に反応して体を動かさなければならない」「新たな曲を練習することで、脳機能が減弱するよりもはやい速度で成長する・またはそれを補う進化をする」みたいな概念的な説明がされてたりします。ただ、歌より楽器の方が効果が大きく、割と長期で本格的に取り組んでいる方がベターっぽいので、何らか興味のある楽器に手を付けてみるってのはスーパーエイジャーを目指すうえでありかもしれません。スポーツに比べると年をとっても続けやすい趣味だったりしますしねー。
とはいっても、「音楽はちょっと、、」って方もいらっしゃるでしょう。そのような方は「言語」「コーディング」「写真編集ソフト」等、自身のコンフォートゾーンを押し広げるような活動、スキルの習得なら大差ないのでは?って主張もあったりします。大事な要件は「習得するまではややつらいし上限が見えないんだけど、やりがいを感じられて継続できるものであること」なんじゃないかの?という考え方ですね。この点音楽は新しい曲の習得などで、これらのポイントを継続的にカバーできるのがうれしいわけですが、別に上記のポイントさえ押さえられるように工夫しておけば音楽に限らずでもよろしいかもしれません。
Be a Superager 2: 人間関係
「いい人間関係がいい人生には不可欠!」ってのは言わずもがなですが、スーパーエイジャーを目指すうえでも重要なポイント。実際、認知機能が平均的な80代、90代の成人と比べて、スーパーエイジャーはより温かく、より信頼できる、より質の高い人間関係を築いているんだそうな。
ノースウェスタン大学ファインバーグ医学部の認知神経学・アルツハイマー病センター(CNADC)の研究チームは、スーパーエイジャーの社会的側面に注目して研究を行ってくれています。これはPLOS ONE誌に発表された研究で、スーパーエイジャーが認知的に平均的な同年齢の人と比べて、より満足度の高い、質の高い人間関係を築いていたんだとか。
研究では、研究参加者は、心理的幸福度を測るRyff心理的幸福尺度と呼ばれる42項目のアンケートに回答。この尺度は、自律性、他者とのポジティブな関係、環境への適応、個人的成長、生きがい、自己受容の6つの側面が含まれていて、スーパーエイジャーは、他者とのポジティブな人間関係の総合得点の中央値が対照群より高い傾向にあったらしい。
実際、他の研究では、アルツハイマー病や軽度認知障害(MCI)の人の社会的ネットワークが低下していることが報告されていたりして、高齢期の人間関係上の幸福感がアルツハイマー型認知症の発症リスク低下と関連しているのでは?って主張もあったりするんですよね。
ただ、面白いことに、「別居または離婚している高齢者の方が、同居、結婚している高齢者よりもスーパーエイジャーである確率が高い」って研究結果もあったりするんですよ。研究チームは、自立や他人の世話をする必要がないといった点も重要なんじゃない?って考察していて、「困っているときには助け合える」人間関係を構築しておくことは大事だけども、別にそこまで強く依存するような関係性は逆効果かもよーってことで(なかなか難しい気もしますが)。
Be a Superager 3: レジリエンスとストレス管理
スーパーエイジャーのもう一つの特徴として、「メンタルヘルス」がかなり良好ってのが挙げられます。実際、最近の研究では、スーパーエイジャーは不安状態、不安特性、老年期抑うつ尺度に関する質問票において、対照群と比較してより良好なメンタル状態を示したぞーってことが報告されていたりしますね。
ストレス対策については過去に色々まとめているので、ご興味あればこのあたりをご覧いただければと思いますが、とりあえず若いうちから「より多くのストレス解消法を装備しておく」ってのは意識しておくとよろしいかと思います。「ストレス解消法の手札が多いほどストレスに強い」なんてことも研究でわかっておりますので。
あともう一つ特筆すべきは「レジリエンス(回復力)」でしょう。ある研究では、ホロコーストの生存者や、一人で子供を育てるのに苦労したシングルマザーの方が年をとってもシャープな認知機能を保ちがちだった!みたいな話になってたりするんですよ。つまり、スーパーエイジャーは困難な状況に直面しても、それを乗り越える強さを備えている、鍛えてきた、可能性が高い、と。
レジリエンスの強化は一朝一夕にはいきませんからこちらも早めに意識的に取り組みを始めたほうがいいでしょう。ただ、別に熱血っぽく「いっぱい挑戦して失敗して挫折しまくれ!」みたいなことをいうつもりはなくて、近年では「畏敬の念を感じることでレジリエンス高まるのでは?」といった研究もあるんで、そのあたりもうまく利用しつつ、鍛えていっていただければ良いのではないかと(ご要望あればレジリエンス強化法などもそのうちまとめてみます)。
Be a Superager 4: 食事と運動
念のため、復習がてら、最後に食事と運動についても基本だけさらっておきましょう。
まずは運動から。
- スーパーエイジャーは、20歳以上若い人たちと同等の有酸素運動能力を持ち合わせているケースが多い
- 具体的なトレーニングメニュー例としては、
- 最大心拍数の60~70%で1日20~45分間運動する
- 高強度インターバルトレーニングを取り入れる
- スピード、敏捷性、バランスを向上させる活動をバランスよく行う
- 早足で歩く習慣を身に着けておくだけでも効果がある(かも)
続いて食事。
- 基本的には「アルツハイマーリスクと関連する食事」を減らすといった方針がスーパーエイジャーを目指すうえでも同様に推奨されている
- 具体的には、レッドミート、精製糖、不健康な脂肪を制限しながら、野菜、全粒穀物、魚、ベリー類を多めに食べるパターンを意識する
- 指標として、血圧と血糖をコントロールすることも大事
この辺りを人生の早めの段階から意識して一日一日過ごしていれば、スーパーエイジャーになれる可能性はちょっとずつ高まっていくのではないでしょうか。
ご質問などあればコメント・DMまでどうぞ。ではまたー。
さいごに
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Nature Neuroscience (2024)
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おくさん🇯🇵🇨🇳 @Astella6174
自閉症と統合失調症に関連する遺伝子発現の3つの空間パターン/ Cortical gene expression architecture links healthy neurodevelopment to the imaging, transcriptomics and genetics of autism and schizophreniahttps://t.co/yNjymhxARI— おくさん🇯🇵🇨🇳 (@Astella6174) June 10, 2024
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