ここ最近ではAIの最新研究がよく目につきますね。しかし実際には、(当然ですが、)医学、心理学、栄養学等、あらゆる分野で日々新しい発見が生まれています。
そこには、今の私たちの生き方を見つめ直したり、ちょっと前向きになれたりするヒントがたくさん隠れている。ってことで今回は、普段とは少し趣向を変えて、直近で出た複数分野の論文をまとめてご紹介してみることにします。
普段はXのほうで面白かった論文をぽつぽつ共有しておりますが、今回はその中でも特に印象に残ったもの、あるいはこれからの私たちの「澪標」になりそうだと思ったものを厳選しています。もちろん、私個人の関心の範囲内ではありますが、比較的幅広い分野からピックアップしたので、目次の中から興味のあるところだけでも、ぜひのぞいていってください!
【アスパルテームで動脈硬化】アスパルテームは血中インスリンレベルを上昇させ、インスリンにより血管内皮細胞のCX3CL1が増加。単球やMΦをリクルートし炎症を促進、動脈硬化を悪化させる。Cell Metabolism→ https://t.co/am7Z9w2uK6(ゼロカロリーとはいえ血管には大きな負担をかけているのねぇ..) pic.twitter.com/mhhuoQw0Cv— おくさん/OKUSUN🇯🇵🇨🇳 (@Astella6174) March 20, 2025
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おくさん/OKUSUN🇯🇵🇨🇳 @Astella6174
本ニュースレターでは、徹底的に調べあげたエビデンスをベースに「より信頼でき、真に価値ある情報」をレポートし、ゴミがあふれるネット上においてキラリと光る質の高いコンテンツをお届けすることを目指しています。あなたの人生を彩るヒントとしてご活用いただければ幸いです。
■ 概要サマリー
4月3日にAI Futures Projectから発表された「AI 2027」レポートは、DanielKokotajlo、Scott Alexander、Thomas Larsen、Eli Lifland、Romeo Deanらによる結構衝撃的な未来予測。このレポートは2027年までにAIが産業革命を超える影響力を持ち、超知性レベルに到達する可能性を詳細なシナリオとして描いています。著者らはAIの進化が単なる誇大広告ではなく、これから数年で「超知性AI」が出現する可能性が極めて高いと警告しています。
■ 研究の詳細
Source: AI Futures Project, April 3rd 2025 on AI-2027.com; 各セクションの時点での世界状況
■ 日常生活にどう生かせるか
これは世界がものすごいスピードで変わっていくという予測で、正直不安になる人も少なくないはず。それでも前向きに、今から私たちができることを模索していくのが重要かと。
まず、AIとの共存スキルを今から磨くべきだってのは間違いないでしょう。2027年っていったら、あと2年しかないわけで、このレポートが当たってるなら、普通のプログラマーとかは完全に仕事を失うかもしれない。だからこそ、ただコードを書くだけじゃなくて、AIチームを管理したり、AIの出力をチェックする能力を身につけるのが超重要になってくる。
私が特に気になったのは、AIの超加速が人間の意思決定力を弱めるかもしれないという点。人間の判断よりAIの判断を信頼するようになったら、自分で考える筋肉が衰えちゃうんじゃないか、と。だから「このレポートは信頼できるのか?」「本当にそんなに早くAIが発達するのか?」といった具合に自分で考える訓練をしておくべきだと思ったりしましたね(実際、AIの使用でクリティカルシンキングが衰えるってのはすでに示されてますし)
とはいえ、個人的には、このレポートを絶対的な予言として受け取るんじゃなく、可能性のある未来として考えるのがいいんじゃないかなーと思いましたね。確かにAIの発展は加速しているけど、技術的な課題や社会的な抵抗もあるでしょうからね。
とりあえず、このままのペースでAIが発展したら、人間としての創造性や批判的思考能力がますます価値を持つようになるはず。そういう能力を今から鍛えておくことが、超知性AIの時代にも役立つ「澪標」になるんじゃないでしょうか。
■ 概要サマリー
3月29日、医学雑誌ランセットに掲載された研究レビューによると、定期的な運動、高い心肺持久力(CRF)、またはその両方が認知機能低下を軽減し、認知症リスクを減少させることが明らかになりました。ノルウェー科学技術大学とオーストラリア・クイーンズランド大学の研究チームは、持久力運動が脳の健康を維持する神経保護メカニズムを解明し、CRFの重要性を強調しています。
Source: Lancet. 2025 Mar 29, 405 (8) 1093–1118; 運動が認知機能の維持にどう影響するか
■ 研究の詳細
■ 日常生活にどう生かせるか
正直そこまで目新しい内容ではなく、この研究結果を見ても「やっぱりね〜」という感想の方が多いでしょう。運動が脳にいいなんてのは当たり前のように言われてますが、それでも今回のレビューでは「なぜ」いいのかが科学的にバッチリ整理されてるのがうれしいところかと。
ついでに、週に30分の高強度運動だけでもかなりの効果があるってことが示されているのも、改めて自信をもって運動を続ける励みになりましょう。「ちょっとキツいな」と感じるレベルの運動を週に合計30分やるだけで、脳の老化を防ぎ、認知症リスクを大幅に下げられる可能性はかなり高そうってことですね。これなら60代、70代になっても全然間に合う、と。
それと、この研究でもう一つ面白いと思ったのが「エクセルカイン」の存在。名前自体を聞いたことがある方もおられるかもしれませんが、実際にかなり信ぴょう性が増してきているようなんですな。筋肉や肝臓から分泌される化学物質が血液を通じて脳に届き、様々な好影響を与えているんだ、と。まるで体が自分自身にサプリを処方しているかのようっすね。
あなたの脳を守るための最良の投資は、実はスニーカーを履いて外に出ることかもしれませんよってとこで。
■ 概要サマリー
「Psychological Reports」2025年3月号に掲載された研究によると、リーダーシップと美徳がストレスを軽減することで人生満足度を高めるという関係性が明らかになりました。テキサス大学リオグランデバレー校とトルコのハラン大学のCahit Kaya博士の研究チームは、235名のトルコ人大学生を対象に、美徳(リーダーシップ、知恵、人間性、活力)、ストレス、人生満足度の関係を検証しました。
■ 研究の詳細
Source: Psychological Reports 2025, Vol. 128(3) 1613–1627; リーダーシップ、人間性、知恵、活力の4つの美徳とストレス、人生満足度の関係性
■ 日常生活にどう生かせるか
ただ「美徳は良いもの」というお説教じゃなくて、実際に「どの美徳が」「どのように」幸福感に影響するかを科学的に示している点が興味深い。特に、リーダーシップと知恵がストレス軽減を通じて人生満足度を高めるという発見は、私たちの生き方に大きなヒントを与えてくれるんじゃないでしょうか。
まず、リーダーシップについて考えてみましょう。「リーダーシップ?でも私はリーダータイプじゃないし...」と思った方もおられるでしょう。しかし、ここで言うリーダーシップは必ずしも「集団を引っ張る能力」だけにあらず。自分が何者で、何ができるか、どこに向かいたいかを知り、自分の行動や感情、コミュニケーションスタイルをコントロールする能力も含まれます。つまり、自分自身のリーダーになる力も「リーダーシップ」の一部というわけですね。
例えば、「今日は勉強する」と決めたら、SNSの誘惑に負けず実行する。ストレスを感じたときに、「これは一時的なものだ」と冷静に判断できる。こういった自己管理能力もリーダーシップの一部です。この研究によれば、そういうセルフリーダーシップを高めることで、ストレスが減り、結果的に人生満足度が上がることがわかったわけです。
🫡リーダーシップの再定義:野心よりも大切な9つの資質 |
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次に知恵について。これは単なる知識量じゃなくて、物事を様々な視点から見る能力のこと。何か問題が起きても、「なんでこんなことに...」と感情的に反応するのではなく、「これにはどんな側面があるのか」「違う見方はできないか」と多角的に考える力です。認知行動療法の基本的なアプローチにも通じますな。
一例をあげると、職場の人間関係でモヤモヤすることがあったときに、「この人は意地悪なんだ」と決めつけるのではなく、「もしかしたら何か事情があるのかも」「私の受け取り方に問題はないか」と考えることができる人が「知恵」のある人。このような態度をとれると、不思議とストレスが軽減されるわけです。
面白いのは、人間性や活力の美徳は、直接的には人生満足度と関係がなかった点。人に優しくすること(人間性)や情熱を持って行動すること(活力)は素晴らしいことですが、それだけでは幸福感に直結しないのかもしれません。
では、この研究をどう生活に活かせるのか。個人的には、リーダーシップスキルの向上と知恵を深める習慣を意識的に取り入れることが有効かと。例えば、
こういった実践が、ストレスを軽減し、結果的に人生満足度を高めることにつながるんじゃないでしょうか。
(👇ストレスについては過去にがっつりまとめているので、こちらもご参考までに)
■ 概要サマリー
スイス・チューリッヒ大学のカタリナ・ベルネッカー博士らが3月24日に「Social Psychological and Personality Science」誌に発表した研究によると、自己コントロール能力の高い人は快楽を避けているのではなく、意味のある活動を好む傾向があることが明らかになりました。3つの研究で、高い自己コントロール特性を持つ人は活動の快楽的側面(楽しさ)よりも活動の意義的側面(意味深さ)を重視することが示されました。一方で、快楽享受能力の高い人はその逆のパターンを示しました。
■ 研究の詳細
Source: Social Psychological and Personality Science (2025) 1-9; 自己コントロール特性と快楽享受能力特性が活動選択とその体験に与える影響
■ 日常生活にどう生かせるか
「自己コントロールが高い人は我慢強い」というイメージを持つ方は多いでしょう。しかし実際には、自己コントロールの高い人は、単に快楽を我慢しているわけではなく、そもそも「意味のある体験」を「楽しい体験」より好むのかもしれないってのはあまり意識されていない点かもしれないっすね。
例えば、私の友人に自己コントロールの高いAさんがいます。彼女はいつも計画通りに行動し、目標達成率が高いのですが、決して苦行僧のような生活をしているわけではありません。ある日、突然の休みが取れたとき、彼女は「せっかくだから語学の勉強をする」と言いました。ほかの人なら映画を見たり、のんびり過ごしたりするのに、と思いましたが、彼女にとっては語学学習が「意味があって価値のある」時間の使い方だったわけです。そして重要なのは、彼女がその勉強時間を本当に楽しんでいたということ。これはまさに、この研究が示す「意味を重視する傾向」の好例かもしれないっすね。
この研究結果をどう活かせるか?を考えてみましょう
まず、目標達成に悩んでいる方へ。単に「楽しいことを我慢する」という視点ではなく、「意味のある体験を見つける」という視点に切り替えてみてはどうでしょうか。ダイエットなら「我慢の連続」と考えるのではなく、「健康的な身体づくりという意義ある取り組み」と捉え直すことで、より取り組みやすくなるかもしれません。
また、子どもや部下の自己コントロールを育てたい方へ。「これをしたら罰がある」「あれをしたら褒美がある」という外発的動機付けだけでなく、「この活動にはこんな意味や価値がある」と伝える教育や指導が有効かもしれません。活動自体から意義や価値を見出せるようになれば、外からの強制がなくても続けられるようになるでしょう。
まあこの論文を見ていると、結局のところ「快楽か意義か」という二項対立ではなく、両方を取り入れるバランスが大事なんだろうなーとも思わされますね。実際、研究1bでは、自己コントロールの高い人も快楽享受能力の高い人も、どちらも自分の時間の使い方に満足してたんですよね。理想的なのは、意義ある活動から楽しさも見出せるようになること、あるいは楽しい活動に意義を見出せるようになることかもしれませんな。
▼テコンドーで感情コントロール
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おくさん/OKUSUN🇯🇵🇨🇳 @Astella6174
・1回45分、週2回テコンドーのレッスンに参加した子供は、注意力が向上し、問題行動が減少
・さらにセルフコントロール能力の向上は学校での成績向上とも関連していた
子供からの評価も高かったらしく、体育の授業の一環として武道をもっと取り入れてみてもいいのかも— おくさん/OKUSUN🇯🇵🇨🇳 (@Astella6174) January 20, 2022
■ 概要サマリー
3月28日にPsychological Reports誌に掲載されたオーストラリアのサザンクロス大学の研究によれば、絵文字の背景色は感情の認識速度と正確さに大きく影響することが判明しました。研究者たちは43人の参加者に、赤、緑、青、灰色、無色の背景で表示された絵文字を「ポジティブ」か「ネガティブ」に分類するタスクを課しました。その結果、ネガティブな絵文字は赤い背景で表示された場合、緑や青の背景よりも有意に速く認識され、ポジティブな絵文字は緑や青の背景で表示された場合により高速に認識されることが明らかになりました。
■ 研究の詳細
Source: Psychological Reports, 2025, Vol. 0(0) 1–20; 実験のイメージ
Source: Psychological Reports, 2025, Vol. 0(0) 1–20; ポジティブ、ネガティブ、中立、曖昧な感情価を持つ絵文字の平均反応時間
■ 日常生活にどう生かせるか
本ニュースレターを読んでいる皆様なら意識的に絵文字を使っている方も多いのではないかと推察しておりますが、毎日膨大な絵文字をやり取りする現代社会において、この知見は絵文字の使用についていろいろとヒントをくれるはず。私自身もここ1か月程度はちょっと絵文字についての意識を変えてみていたりしてます。
というのも、私の場合、この研究を読んだ後から、絵文字の見え方や伝わり方が背景によって変わっている可能性を意識するようになりましたね。SNSのダークモードとライトモードによって、同じ絵文字でも印象が変わるかもしれない、と。
また、中立的または曖昧な絵文字(たとえば「😐」や「😏」)が背景色によって解釈が大きく変わるという点も気を付けるようになったりとか。オンラインコミュニケーションでは非言語的な手がかりが限られているため、このような微妙な要素が誤解を生む可能性も思ってる以上にありますからねぇ。
🫰恋愛科学最前線2025#2 |
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■ 概要サマリー
(こちらは他の論文に比べると「最近」ってほどではないですが)1月5日にComputers in Human Behavior Reports誌に掲載されたアムステルダム大学の研究によると、マッチングアプリにおける成功要因として「外見の魅力」が圧倒的に重要であることが明らかになりました。445人のマッチングアプリユーザーによる5,340の「スワイプ」を分析した結果、外見の魅力が標準偏差1上がると選択確率が約20%上昇するのに対し、知性が同じく標準偏差1上がっても選択確率はわずか2%しか上昇しないことが判明しました。また、異性間で重視する特性に大きな違いはなく、従来の進化心理学的仮説に反する結果も得られました。
■ 研究の詳細
Source: Computers in Human Behavior Reports 17 (2025) 100579; 結局は見た目の大勝利
■ 日常生活にどう生かせるか
シンプルに、もしあなたがマッチングアプリを使っているなら、プロフィール写真に最も時間と労力を投資すべきってのがこの研究の大きなmessageでしょうね。この研究をそのまま素直に受け取れば、写真の質や魅力度を上げることは、知性や職業などの他の特性を向上させるよりも10倍以上も効果的なんで。
個人的には、男女間で特性の重視度に大きな違いがなかった点も面白かったっすね。「男性は外見を重視し、女性は社会的地位を重視する」という従来の進化心理学的な通説が、実際の行動データではそれほど顕著ではないのかもなー、と。
あとは毎度のことですが、人が「重視する」と言っていることと、実際に「選択する」行動には違いがあるってのも再認識。「自分は相手の知性や人格を重視している」と言いますが、実際の行動ではやっぱり外見に大きく影響されてしまう性ってことでしょうかね。
将来的には、AIによるマッチングアルゴリズムが外見以外の特性をより効果的に活用できるようになれば、オンラインデーティングの景色も変わってくるかもしれません。が、とりあえず現時点では、初期の選択において「見た目」が圧倒的に重要であるという事実を受け入れ、戦略を練るのがよろしいでしょう。
(👇そのほかのマッチングアプリに関する攻略知見は以下。人によってマッチングアプリの成果はかなり差異がでかいことが分かっていますが、どうせ課金するなら数打つ前に戦略を検討しておくのがよろしいかと)
😍【初回デート攻略】30,000人以上の研究データが示す成功の方程式 |
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■ 概要サマリー
3月24日、Social Psychological and Personality Science誌に発表されたティルブルグ大学とアムステルダム大学の研究チームによる研究によると、強い物欲や所有欲を持つ「強欲傾向(dispositional greed)」の高い人は、友人を「道具」として客体化する傾向が強く、より孤独を感じていることが明らかになりました。オランダの大規模代表サンプル(約2300〜4900人)、学生サンプル(約200人)、米国オンラインサンプル(約500人)という多様な集団で一貫した結果が得られており、欲深い人の社会的関係の質に光を当てた研究です。なお、友人の数や接触頻度に関しては明確な関連が見られなかったものの、欲深い人は自分の社会的関係への満足度が低く、友人との心理的距離も遠いという結果も一部の調査で示されました。
■ 研究の詳細
■ 日常生活にどう生かせるか
よく「友情は金で買えない」なんて言いますが、そもそも「買おう」とする発想自体が友情を遠ざけるってことかもしれませんな。
まず面白いのは、欲深さという特性が「物質的な欲求」だけでなく、「人間関係に対する姿勢」にも現れる点。この研究が示すのは、「もっと欲しい」という際限のない欲求は、人間関係においても「友達が何人いるか」「その友達からどれだけ得られるか」という功利的な見方につながるということ。
でも皮肉なのは、そうやって人間関係を「獲得すべき資源」と見なす人ほど、実は孤独を感じているという点でしょう。なぜなら、真の友情や親密さは「互恵的な関係」から生まれるもので、一方的に「得る」ことだけを考えていると、深いつながりは育ちにくいわけです。これはある意味、現代社会の縮図にも思えますね。SNSでの「友達数」競争、ネットワーキングイベントでの名刺交換、LinkedInでのコネクション数...。こうした「量」を重視する友情観が、実は私たちを孤独にしているのかもしれません。
ただ、欲深い人の「戦略的な友人選択」が必ずしも悪いとは言えない面もあるのがまた悩ましいところ。古くから霊長類などの動物は、戦略的に味方を選び「アライアンス」を結んできました。ある意味、欲深い人の友人選択は「合理的」なのかもしれません。しかし、その「合理性」とひきかえに失うものもある。それが「心理的なつながり」であり、結果的に「孤独感」として表れるわけです。
この研究で最も覚えておくべきは、「物質的豊かさと心理的豊かさのトレードオフ」という視点かもしれません。欲深い人は物質的な成功を収めやすいかもしれませんが、その見返りとして心理的なつながりを犠牲にしている可能性がある。一方、欲深くない人は、物質的な成功よりも人間関係の質を重視し、結果的に心理的な豊かさを得ているというわけです。
もちろん、これは二項対立的な単純化かもしれません。現実には、物質的にも心理的にも豊かな人も存在するでしょう。でも、少なくともこの研究は、物質至上主義的な価値観に警鐘を鳴らしているように思えましたね。
自分自身の「欲深さ」と「孤独感」について考えてみると...正直、ちょっとドキッとしました。あなたはいかがでしょうか?
【失われた友情】断絶した世界でつながりを再発見する13の手法|恋愛にも応用可 |
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■ 概要サマリー
3月31日にPsychological Reports誌に掲載されたサウスアラバマ大学のMatt C. Howard氏によるレビューでは、「ホーム(居場所)」の概念を心理学的視点から再構築しています。著者は「自己決定理論」の一部である「基本的心理欲求理論」を用いて、単なる「住居」が「ホーム」に変わるプロセスを説明。物理的欲求を満たす「住居」に対し、「ホーム」は自律性・有能感・関係性という3つの基本的心理欲求を満たす場所であると提案しています。欲求の強さによって「ホーム」の意味は個人によって異なり、これらの欲求が満たされなくなると「ホーム」感覚が失われることも論じています。
■ 研究の詳細
Source: Psychological Reports, 2025, Vol. 0(0) 1–44; 「ホーム」とは何か?
■ 日常生活にどう生かせるか
この研究は、より満足度の高い生活環境を作るための洞察を提供してくれているといえるでしょう。特に、家にいても「ホーム」の感覚が薄く落ち着かない感覚がある方は以下のようなステップを踏むのがよさげ
■ 概要サマリー:
3月28日、Frontiers in Computer Scienceに掲載された研究によると、スマホを手の届かない場所に置くと、確かにスマホの使用時間は半減するものの、ユーザーは代わりにパソコンで非業務関連の活動(息抜き・遊び)に費やす時間が増えることが明らかになりました。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのMaxi Heitmayer氏による実験は、仕事中のデバイス接近性が活動パターンにどう影響するかを調査しました。
■ 研究の詳細:
Source: Frontiers in Computer Science. 2025 Mar 28; DOI: 10.3389/fcomp.2025.1422244; 実験の2つの条件(アクセス可能条件と非アクセス可能条件)のレイアウト
■ 日常生活にどう生かせるか:
「スマホを置く場所を変えるだけで集中力アップ!」みたいなアドバイスはよく聞きますが、そんな単純な話ではないってことがよく分かりましたね。結局「人間の注意散漫は形を変えて現れる」ってことっすね。
面白いのは、私たちの気晴らし活動ってのは根本的にはデバイスに依存してないってこと。スマホが遠くにあれば、PCでSNSを見たり、オンラインショッピングをしたりと、別の形で気晴らしを見つけてくるわけです。つまり、気晴らしをする総量はほぼ一定で、使うツールが変わるだけなんだ、と。
この研究からの重要なメッセージは、「スマホ依存症」や「スマホの使いすぎ」が仕事の生産性低下の主原因だとする単純な見方に疑問を投げかけていること。実は問題なのはデバイス自体ではなく、私たちの自己調整能力や集中力の管理なんですな。
興味深いのは、最初にスマホを遠くに置く経験をした人は、後日スマホが手元にあっても使用頻度が低かったという発見。これは、一度「距離を置く」体験をすることで、自分のスマホ使用習慣に対する意識が高まる効果があるのかもしれません。私も時々「デジタルデトックス」をすると、その後しばらくは無意識的なスマホチェックが減る感覚がありますね。まあ、現代においてスマホとの付き合い方はかなり真剣に考える価値があるトピックかと思いますので、何らかご参考になれば。
■ 概要サマリー
4月7日、韓国梨花女子大学薬学部のChoungwon Jung氏らが「Scientific Reports」に発表した研究では、糖尿病患者における血清ビタミンA、E、葉酸レベルと非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)の関連性が調査されました。韓国の全国健康栄養調査(2016-2018年)のデータを用いた横断研究で、血清ビタミンEレベルがNAFLD患者で有意に高く、血清ビタミンAレベルもCNS(comprehensive NAFLD score)診断基準では高値を示しました。さらに、多変量解析後もビタミンAとEの高値がNAFLDリスク増加と関連していることが明らかになりました。
■ 研究の詳細
Source: Scientific Reports (2025) 15:11844; 糖尿病患者589名の血清ビタミンレベルとNAFLDの関連性
■ 日常生活にどう生かせるか
この研究結果は、結構意外じゃないでしょうか?これまで一般的に「抗酸化ビタミンは肝臓に良い」という認識があったのに、この研究では逆に「血中ビタミンA・Eが高いと脂肪肝リスクが上がる」という結果が出たわけです。特に糖尿病患者さんにとっては大きな意味がある発見かもしれませんな。
とはいえ、当然、慌てて「ビタミンA・Eのサプリを止めるべき!」とはならないのでご安心を。まず、この研究の対象者は、ほとんどがビタミン欠乏ではなく正常範囲内の人たちだったことは重要でしょうね。研究者たちも「ビタミン欠乏症の影響ではなく、比較的高い・低いというレベルでの研究」と明記してたりしますし。
まあ考えてみるとこの結果も理にかなっていたりします。ビタミンAは主に肝臓の肝星細胞に貯蔵されています。肝臓が傷害を受けると、これらの細胞が活性化して貯蔵していたビタミンAを血液中に放出します。つまり、「血中ビタミンA高値=肝臓が問題を抱えている可能性」という図式が成り立つわけです。
ビタミンEに関しても同様の理屈が考えられます。血清α-トコフェロール(ビタミンE)レベルは、血清コレステロールや中性脂肪濃度と正の相関があることが知られています。この研究の対象者の約40%は脂質異常症を持っていましたから、高濃度の循環脂質がα-トコフェロールの分解を遅らせ、結果として血漿α-トコフェロールレベルの上昇につながった可能性があるわけですね。
一方、葉酸に関しては、全体的に有意な関連は見られませんでしたが、FSI診断による肥満グループでのみNAFLD群で低値を示していました。これは過去の研究結果とも一致。葉酸不足は一炭素代謝に影響を与え、最終的に肝臓への脂肪蓄積を促進する可能性があるからっすね。
では、私たちはこの研究結果をどう生活に活かすべきでしょうか?
まあ冷静に考えれば当然にも聞こえますが、「ビタミンならたくさん摂ったほうが良い」という単純な考え方には注意で、栄養素は「足りなさすぎても、多すぎても問題がある」ってことで。
■ 概要サマリー
2025年3月24日、Nature Medicine誌に発表されたハーバード大学の研究チームによる大規模研究では、中年期の食習慣が70歳以降の「健康長寿(healthy aging)」に与える影響が明らかにされました。アメリカの看護師健康調査(Nurses' Health Study)と医療従事者追跡調査(Health Professionals Follow-Up Study)から得られた約10万5千人のデータを30年間追跡した結果、野菜、果物、全粒穀物、不飽和脂肪酸、ナッツ、豆類を多く摂り、トランス脂肪酸、ナトリウム、砂糖入り飲料、赤身肉や加工肉の摂取を控えた食事パターンが、認知機能、身体機能、精神健康の維持と慢性疾患の予防につながることがわかりました。特に「代替健康食インデックス(AHEI)」に従った食事は、健康長寿達成率が最も高く、最低グループと比較して86%も高いという結果に。
■ 研究の詳細
Source: Nature Medicine. 2025; 10.1038/s41591-025-03570-5; 健康長寿に寄与する食材
■ 日常生活にどう生かせるか
これだけ見て、上記のすべての知見に従えれば「ピンピンコロリ」を実現できる可能性は上がりましょうが、「じゃあ明日から完璧な食事を始めるぞ!」と息巻いても三日坊主で終わってしまうのがオチ。てことで、実践的なポイントとして、無理なく日常に上記の食事パターンを取り入れるコツをまとめておきます。
1. 「完璧」より「バランス」を目指す
研究で最も効果的だったAHEIスコアは、植物性食品を多く取りつつも、「健康的な動物性食品を適度に」という点がポイント。完全なヴィーガンになる必要はありません。肉や魚を楽しみつつ、野菜や果物の比率を上げていけばよし。例えば、「肉を禁止」とは言わず、「一食の半分は野菜にする」というルールが有効だったり。
2. 超加工食品を減らすシンプル戦略
超加工食品(UPF)の摂取量が健康長寿と強い負の関連を示したのもポイント。しかし「すべての加工食品を排除する」なんてのも実際問題現実的ではありません。私が結構気に入って実践しているのは「買い物カゴの3分の2ルール」。買い物をするとき、カゴの3分の2は野菜、果物、ナッツ、豆、全粒穀物などの非加工・最小限加工食品にする、というシンプルなルールです。残りの3分の1は多少の妥協もOK。これなら精神的にも続けやすいんじゃないかと。
3. 「禁止」より「追加」の発想
「〇〇を食べるな」ではなく「〇〇を食べよう」という発想の転換が重要。例えば、
このポジティブな置き換えが、長続きのコツ。
4. 「最高スコア層」の具体的な食事内容に従ってみる
研究中で健康長寿達成率の最も高かったグループ(AHEIスコア最高層)の特徴を見ると、エネルギー調整スコアの平均は68.6でした。具体的には、果物、野菜、全粒穀物をしっかり摂取し、赤身肉や加工肉を控え、魚やナッツ、豆類をバランスよく取り入れていました。このバランスを参考に、自分の食事を少しずつ調整していくのが現実的なアプローチ。
5. 中年期の食習慣が重要
この研究で興味深いのは、中年期(平均53歳)の食習慣が、その後20〜30年後の健康状態に大きく影響するという点。「もう遅い」なんてことはありません。今から食習慣を変えることで、将来の健康長寿につながるはず。
🥑健康長寿のために押さえておきたい最新データ10選【2024年8月編】 |
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👴スーパーエイジャー:死ぬまで25歳の脳力を保つ秘訣 |
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■ 概要サマリー
4月10日付けでJournal of Sleep Researchに発表されたセメルワイス大学(ハンガリー)の研究によると、夜型の偏頭痛患者は朝型の偏頭痛患者と比較して、身体的・精神的健康状態が悪く、頭痛による日常生活への支障も大きいことが明らかになりました。36万人以上という過去最大規模のデータを用いたこの研究では、偏頭痛患者の中でも夜型の人は、うつ症状、ストレス、神経症傾向(情緒不安定性)といった精神面の問題に加え、体脂肪率の高さや主観的健康感の低さなど、身体面でも不利な状況に置かれていることが判明。一方で、朝型・夜型によって偏頭痛の症状プロファイルそのものには大きな違いがないことも示されています。
■ 研究の詳細
■ 日常生活にどう生かせるか
この研究の面白いところは、朝型か夜型かによって偏頭痛の「痛み方」自体はそんなに変わらないのに、夜型の人のほうが明らかに「生活への支障度」が高いという点。これは単に「偏頭痛だから大変」というだけでなく、「社会の仕組みと自分の体内時計のズレ」という別の要因も関わっている可能性を示唆しているような印象を受けましたね
私の周りにも「夜になると活発になるけど、朝は本当に弱い」という典型的な夜型の友人が何人かいますが、彼らはみんな「社会に合わせるために無理して早起きしている」と言います。その無理が、偏頭痛というもともとの問題をさらに悪化させている可能性があるわけです。
この研究結果を踏まえて、偏頭痛持ちの人、特に自分が「夜型だな」と感じている方への実践的なアドバイスとしては以下。
結局のところ、「朝型か夜型か」という生まれ持った特性によって偏頭痛の苦しみが変わってくるのではなく、その特性と「社会の仕組み」とのミスマッチが問題を複雑化させている可能性が高いんですね。すごく身につまされるなぁ…。
■ 概要サマリー
3月24日、『The Journal of Sex Research』に掲載されたメタ分析は、一夫一婦制と非一夫一婦制の関係満足度と性的満足度に差がないことを明らかにしました。オーストラリアのラ・トローブ大学を中心とする研究チームが24,489人分のデータを分析した結果、関係の形態よりも関係の質そのものが重要であることが示されました。
■ 研究の詳細:
Source: The Journal of Sex Research. 2025 Mar 24; DOI: 10.1080/00224499.2025.2462988; 関係の形態による関係満足度の違い
ややわかりにくいので言い換えておくと、このメタ分析では、「モノガミッシュ」(基本的に一夫一婦制だが特定の状況で例外を認める関係)の人々が一夫一婦制の人々よりも関係満足度が高い傾向が見られたそう。また、ポリアモラスやスウィンガーの人々は、一夫一婦制の人々より性的満足度が高い傾向もあったとか。特に興味深いのは、非一夫一婦制の人々が「信頼」という関係満足度の側面で一夫一婦制の人々より高いスコアを示したことかと。
■ 日常生活にどう生かせるか:
社会的には「一対一の関係以外ありえない!」みたいな価値観がゴリゴリ押し付けられているわけですが、実際のところ、「関係の形」より「関係の質」が大事ってのはこれまでもお伝えしてきた通りでしょう。
私が思うに、社会が非一夫一婦制を「劣っている」と見なす理由の一つは、単純に「理解できないものは怖い」というバイアスなんじゃないかな、と。多くの人が「非一夫一婦制=浮気OK」と誤解していますが、実際は非一夫一婦制の関係では「コミュニケーション」や「同意」が超重視されるわけですからね。
この研究で特に興味深かったのは、非一夫一婦制のカップルが「信頼」の項目で高いスコアを示したこと。言われてみれば納得で、複数の関係を維持するためには、より頻繁に、より深く、より正直にコミュニケーションを取る必要があるわけで。嫉妬や不安も直接的に話し合わないと関係が続かない。そういう意味では、一般的な一夫一婦制の関係でもこういった「オープンなコミュニケーション」から学ぶことがたくさんあるなーと思ったり。
私の友人にもポリアモリーのカップルがいますが、彼らを見てると「恋愛のあり方にはいろんな形があっていい」と強く思いますね。彼らの関係は一見複雑に見えますが、実は徹底的な「正直さ」と「尊重」で成り立っていて、むしろ学ぶべきことも多いなーと思うこともしばしば。
結局のところ、大事なのは「社会の期待に応えること」じゃなくて「自分たちにとって何が一番幸せかを探求すること」なんじゃないでしょうか。一夫一婦制が合う人もいれば、そうでない人もいる。どちらが「正しい」とか「優れている」という話じゃないんですな。「普通」や「正常」という概念にとらわれず、自分たちにとっての「幸せ」を真剣に考える。それが結局は満足度の高い関係につながるんじゃないでしょうかねぇ。
■ 概要サマリー
イタリア・ミラノのカトリカ・デル・サクロ・クオーレ大学が、4月18日、「Psychological Reports」に発表した研究によると、女性の月経に対する態度は身体的・精神的幸福感に直結しています。研究者たちは18〜53歳の女性452名を対象に調査を実施し、月経に対する態度が自尊心や身体の肯定感、感情制御能力と密接に関連していることを明らかにしました。特に科学的な情報源から月経について学んだ女性は、より肯定的な態度を持ち、年齢を重ねるにつれて月経へのポジティブな見方が増える傾向も見られました。
■ 研究の詳細
Source: Psychological Reports. 2025, Vol. 0(0) 1–33; 縦軸は各態度次元の因子得点の平均値を表しており、「予測可能な厄介事」グループは月経を厄介で不自然なものと捉え、「予測可能な自然現象」グループは月経を自然で煩わしくないものと捉えていることがわかります。一方、「予測不能で否認的」グループは月経の症状を否認し、予測が難しいと感じています。
■ 日常生活にどう生かせるか
この研究が私たちに突きつけてるのは、「月経との関係性が心の健康に影響する」という意外とシンプルな真実。
また、この研究が教えてくれる一番のポイントは、情報源の選び方でしょう。SNSやネット情報に頼りがちな現代ですが、月経について学ぶなら科学的な情報源を意識的に選んだほうがいいってことが明確になったといえるのではないでしょうか。TikTokやInstagramの#生理ハックとかよりも、ちゃんとした本や専門家のワークショップで学んだ女性のほうが、月経に対してポジティブな効果があるってわけですね。
ちゃんと勉強してみると、「生理=厄介なもの」って刷り込まれていた部分が、「あ、これって自分の体のリズムなんだな」って感覚が芽生えてくるケースも多いですからね。月経を単なる「耐えるべき不快な出来事」ではなく、「自分の体の健康サイン」として捉え直せるかどうかが大きな分かれ道なんじゃないかと。
また、この研究の一番おもしろいところは、月経への態度が単なる「考え方」の問題ではなく、実際の幸福感や自尊心、身体肯定感に直結しているという点でしょう。つまり、月経をどう捉えるかは、ただの価値観の問題じゃなくて、実際の精神的健康にガチで影響するということなんですな。要するに、月経に対する考え方を少し変えるだけで、あなたの幸福感が変わる可能性があるってことっすね。結局のところ、自分の体とどう向き合うかが、自分自身をどう受け入れるかにつながっているのかもしれませんな(もちろんこれは生理にとじた議論ではないですが)
直近1ヶ月の重要論文の解説は以上になります!
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